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第一章

第一章6「西の町 デンテイルズ」

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 町が見え、テンションが上がるリアを保護者のように見ているのはセイナである。

「おい、ほんとに16歳っていう自覚あるのか?」

「ん?―――いろんなことを楽しむのが私のモットーみたいなものだよ。」

 自慢気にモットーらしきものを話しているが、前の世界では完全にラノベしか楽しむことがなかったと思うんだが。この世界に来て全てを切り替えたと捉えたほうが良いかなと思い、

「今少し間があったな。今考えたのか?」

「その通り。間だけで当ててくるの気持ち悪すぎるけどね。―――、見て!あの時よりもデカい入口だよ!」

「確かに大きいな。あの町、インティウムより栄えているっていうことか。」

 入口に着き、中を見渡す限り、祭りの屋台のようなもので埋め尽くされている。
 門の前に立っていると、

「こんにちは。デンテイルズにようこそ。この町は商業が盛んな街で、町の8割ほどの人が商人です。あなたたちも商人ですかね?」

「いえ。私たちは冒険者です。適当に冒険していたらここに着きました。」

「おお、冒険者でしたか。それなら買い物を楽しんでくださいね!」

 そう言い、門番の人は中へ通してくれた。
 インティウムは外に人たちを警戒しすぎじゃないか。戦争とかがない限りあんなに警戒しないんじゃないか。もしかしたら本当に戦争が起きているのではないか。
 そうだとしたらこの西の町、デンテイルズだっけか。ここは戦争に参加していないと読める。そもそも商人がほとんどの町が戦争できると思わないが。

「セイナ!杖売ってるよ!」

「杖?魔法は撃てるぞ?」

「すみませんー!この杖ってどんな効果があるんですか?」

 そうリアが質問すると商人のおじいさんは驚いたような顔で、

「杖はな、魔法の威力、範囲を強化し、あと、あれ、―――そう、マナ消費量を抑えてくれるんじゃ。」

「なるほど!――え!そんなの買うに決まってるじゃないですか!二つください!」

「まいど。」

「おい、勝手に買うなよ!今回は使えるものだったが次は俺に許可を得てから買えよ。」

「何それわたし子供みたい。」

 前科ありだからしかたない。楽しんでもらいたいという気持ちはあるが無駄遣いはなるべくしたくない。

「はい。杖。」

 明らかに態度が冷たくなった。
 この小さい木の杖に本当にそんな能力があるのだろうか。

「もう町出るぞー。」

「もう出るの?!」

「ほかに何を買うっていうんだ。もう大体店は回っただろ?しかもまだ太陽が出てる。ここで寝る可能性もあるがその可能性は低い。」

「はーい。」

 さっきの門番の人が「もう出るの!?」みたいな目をしていたがそれを無視して進む。
 さて、どこに行こうか。東に進んでもまたあの町に行くだけだし、それだと北、南、西だが、

「おいリア、北、南、西。どれがいい?」

「それ結構大事な選択じゃない?わたしでいいの?」

「問題ない。俺は大事だと思わないからな。」

「じゃあ北東にいこう。」

「選択肢外を選ぶな、でもその視点はなかった。北東に行くか。」

「ほんとに大事だと思ってないんだね!」

 北東ならインティウムにはぶつからないだろう。縦長の町だったが。
 北寄りに進むか。

「そういやあいつは?名前なんだっけ。あのスライム。」

「ベスね!ベスなら私の背中にずっといるよ?」

 そう言いリアは半回転する。
 スライムのベスが重力に逆らいながら背中にくっついていた。
 なぜ、重力に逆らっているのか。とても気になるが。




 1時間ほど無心でモンスターを倒しながら北東に進んでいたら、明らかに強そうな気配のやつらがうっすら見えた。おそらく3人。3体というほうが正確か。

 小声で話しかける。

「おいリア。多分やばい奴らが来てるぞ。早めに西に逸れよう。東はたぶんまずい。」

「あー。あいつらか。確かにやばそう。逸れるの賛成です。」

「物分かりがよくて助かる。」

 幸い、あいつらは俺らを視認していないようだ。少し安堵し、西に向かう。

 急にリアが目をまん丸に開けて、

「セイナ!西にも3人いるよ!セイナ!!」

「聞こえてるよ!うるさいな。それにしてもかなりまずい。多分バレてる。」

「バレてるってあいつらに?それマジでヤバいね。」

 リアの語彙力がなくなった。こいつじゃ冷静な判断ができない。俺が頑張るしかないのか。
 流石に南、すなわち後ろにあいつらの仲間がいたら詰むなと思いながら、後ろを見ると――。

「よかった。流石に後ろはいない。リア戻るぞ。」

「そうだね。そうだね。」

「落ち着いてくれ。」

 リアはもう無理だ。

「走れるか?」

「うん。走れるよ。うん。」

 ここまでで1時間ちょっとかかったから走って戻るとすると、40分くらいか?
 追いつかれそうだな。
 ここまでの道はずっと草原だからあれが使えるかもしれない。
 それはまだ緊急時に使うことにしよう。

「いくぞ!」

 走り出した途端。後ろから叫び声、いやカラスの鳴き声のようなものが聞こえてくる。
 仲間を呼んでいたとしたらマズイ。

 杖を構え、
「イプ・グラシエス!!」

 途端、氷の道が前方約1キロほど生成される。

 もう一度、
「グラシエス!」

 二人の靴の底に、小さい氷の柱が生まれる。

「リア!スケートできるか?」

「できないけど、頑張ります。」

 二人はオリンピックのスピードスケートに出場できるほどの速さを出し、1分ほどで一キロを進む。
 これが火事場の馬鹿力というやつか。
 氷の道を再生成するために、

「イプ・グラシエス!!!――はぁ。杖があっても疲労がすごいな。でもここで止まるわけには!」

 そう言い、自分を鼓舞する。
 一瞬で後ろを確認する。
 最初に見えた時より近くなっている気がする。バレているのは確実だ。
 足の氷は無事かどうか確認する。少し削れているが無事らしい。

「もう一回行くぞ!」

 進む先には―――。
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