48 / 88
二章 二度目の人生
48【毒について】
しおりを挟む
新しく雇用された使用人は全部で十人しかいなかった。お兄様はかなり厳しくしたみたいだ。
お兄様を信頼していないわけではないけれど、少し不安になりながら使用人の顔を確認してみたけれど誰も見覚えはなかった。
みんな仕事も真面目にしてくれるし、接し方もとても丁寧だった。
とりあえずは安心したけれど、だからといって信用してはいけない。
執事長のセバスティンに確認をしたところ、これ以上雇う予定は今のところないらしい。
どうやら使用人の件でお兄様の機嫌が悪いとのこと。何かあったのかな。
「お嬢様、大丈夫でしたか?」
リリーが心配そうに聞いてくる。
「うん、今のところ問題ないよ。ところでリリー。ちょっと気になったことがあるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「リリーは今までどこで毒見をしていたの?」
私がそう質問をするとリリーの表情があからさまに変わった。あたふたと答えにくいといった感じだ。
「えぇ!? えーっと、その……」
「大丈夫よ、怒らないから」
「その、メインキッチンで……お持ちする前に……」
え、メインキッチンで? それだと他の人もいるのに、毒見なんてしていたら目立つのでは。
もしかして——。
「キッチンにいる人たちは知っていたの? まさか、みんなで毒見なんてしてるんじゃないわよね!?」
「申し訳ございません! あ、でも! 他の人たちにもしてはいけないと伝えましたから! それに、知らない人はただの味見だと思っていますので!」
「はぁ……みんなで何をしてるのよ……」
「その、シェフとキッチンメイドのプライドと私たちの忠誠心が……と、言いますか……」
リリーの声がだんだんと小さく、しょぼんとしていく。
「自分たちの命を危険にさらすようなことはもうしないでね? それに侯爵家で毒を盛る人なんていな……いるけれど、大丈夫だから絶対にしないで。もしお父様に知られたら解雇されてしまうわ」
「え! はい……。みんなにもう一度ちゃんと言っておきます!」
本当に大丈夫かな……。今いる使用人のみんなにそんな理由で辞めてほしくない。侯爵家に必要な貴重な人材だもの。
「ねぇ、リリー。サラは何か言っていた……?」
「いいえ、特に何も言われてないですね。気になるようなことも今のところないですし……」
「そっか……。ねぇ、サラもキッチンに出入りしているよね?」
「はい、もちろんです。ただ、メインキッチンは広いですし、正直死角もございます。人の少ない時間もありますし……」
「そう……」
「みんなとにかく忙しいので他の人たちの行動までは……。なので毒見をしていたというか、なんというか……」
「……だめ、だからね?」
「うぅ、はい。わかっております……」
時間が遡ってからはリリーに食事を運んでもらったり飲み物を全て任せているため、サラがおかしいと思わないか心配だった。
毒は毎日ではなく、定期的に飲まされていたのではと考えている。
だからそろそろサラが焦り始めているかもしれない。
「お嬢様、サラはどこでその、毒を入れていたんでしょうか……?」
「そうね——。私は飲み物だと思ってるの」
「飲み物ですか? メインキッチンにもサブキッチンにも怪しい物はなかったですし……。保管している茶葉や食材、食器類も問題なかったですが……」
サブキッチンは飲み物やお菓子などの軽食を用意するためのところだ。お父様やお兄様専用など、本邸だけでも何箇所もある。
もちろん私専用のサブキッチンもある。
ちなみに別棟のサブキッチンは食事も用意できるよう少し広めだ。
「うーん、まさか持ち歩いてるとかないですよねぇ?」
リリーは「まさかですよね!」と言っているが、もしかするとその可能性もあるかもしれない。さすがにそんなものを持ち歩いているとは思いたくないけれど……。
「さすがに毎日は持ち歩いてないと思う。入れる日だけの可能性なら高いかも。保管場所は簡単に見つかるようなところではないだろうし……」
「お嬢様、ということは現場を押さえるしかないですね」
「そう、ね」
サラのことをどうするか。
このままにはしておけないから。
毒を入れているところを押さえるしか方法はない。それからサラにそんなことをしていた理由を聞いて——。
どんな理由だったとしても許されることではないけれど、ちゃんとサラの口から話を聞きたい。
優しくしてくれたサラの気持ちは嘘ではないと思うから。
お兄様を信頼していないわけではないけれど、少し不安になりながら使用人の顔を確認してみたけれど誰も見覚えはなかった。
みんな仕事も真面目にしてくれるし、接し方もとても丁寧だった。
とりあえずは安心したけれど、だからといって信用してはいけない。
執事長のセバスティンに確認をしたところ、これ以上雇う予定は今のところないらしい。
どうやら使用人の件でお兄様の機嫌が悪いとのこと。何かあったのかな。
「お嬢様、大丈夫でしたか?」
リリーが心配そうに聞いてくる。
「うん、今のところ問題ないよ。ところでリリー。ちょっと気になったことがあるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「リリーは今までどこで毒見をしていたの?」
私がそう質問をするとリリーの表情があからさまに変わった。あたふたと答えにくいといった感じだ。
「えぇ!? えーっと、その……」
「大丈夫よ、怒らないから」
「その、メインキッチンで……お持ちする前に……」
え、メインキッチンで? それだと他の人もいるのに、毒見なんてしていたら目立つのでは。
もしかして——。
「キッチンにいる人たちは知っていたの? まさか、みんなで毒見なんてしてるんじゃないわよね!?」
「申し訳ございません! あ、でも! 他の人たちにもしてはいけないと伝えましたから! それに、知らない人はただの味見だと思っていますので!」
「はぁ……みんなで何をしてるのよ……」
「その、シェフとキッチンメイドのプライドと私たちの忠誠心が……と、言いますか……」
リリーの声がだんだんと小さく、しょぼんとしていく。
「自分たちの命を危険にさらすようなことはもうしないでね? それに侯爵家で毒を盛る人なんていな……いるけれど、大丈夫だから絶対にしないで。もしお父様に知られたら解雇されてしまうわ」
「え! はい……。みんなにもう一度ちゃんと言っておきます!」
本当に大丈夫かな……。今いる使用人のみんなにそんな理由で辞めてほしくない。侯爵家に必要な貴重な人材だもの。
「ねぇ、リリー。サラは何か言っていた……?」
「いいえ、特に何も言われてないですね。気になるようなことも今のところないですし……」
「そっか……。ねぇ、サラもキッチンに出入りしているよね?」
「はい、もちろんです。ただ、メインキッチンは広いですし、正直死角もございます。人の少ない時間もありますし……」
「そう……」
「みんなとにかく忙しいので他の人たちの行動までは……。なので毒見をしていたというか、なんというか……」
「……だめ、だからね?」
「うぅ、はい。わかっております……」
時間が遡ってからはリリーに食事を運んでもらったり飲み物を全て任せているため、サラがおかしいと思わないか心配だった。
毒は毎日ではなく、定期的に飲まされていたのではと考えている。
だからそろそろサラが焦り始めているかもしれない。
「お嬢様、サラはどこでその、毒を入れていたんでしょうか……?」
「そうね——。私は飲み物だと思ってるの」
「飲み物ですか? メインキッチンにもサブキッチンにも怪しい物はなかったですし……。保管している茶葉や食材、食器類も問題なかったですが……」
サブキッチンは飲み物やお菓子などの軽食を用意するためのところだ。お父様やお兄様専用など、本邸だけでも何箇所もある。
もちろん私専用のサブキッチンもある。
ちなみに別棟のサブキッチンは食事も用意できるよう少し広めだ。
「うーん、まさか持ち歩いてるとかないですよねぇ?」
リリーは「まさかですよね!」と言っているが、もしかするとその可能性もあるかもしれない。さすがにそんなものを持ち歩いているとは思いたくないけれど……。
「さすがに毎日は持ち歩いてないと思う。入れる日だけの可能性なら高いかも。保管場所は簡単に見つかるようなところではないだろうし……」
「お嬢様、ということは現場を押さえるしかないですね」
「そう、ね」
サラのことをどうするか。
このままにはしておけないから。
毒を入れているところを押さえるしか方法はない。それからサラにそんなことをしていた理由を聞いて——。
どんな理由だったとしても許されることではないけれど、ちゃんとサラの口から話を聞きたい。
優しくしてくれたサラの気持ちは嘘ではないと思うから。
107
お気に入りに追加
1,946
あなたにおすすめの小説

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる