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31【アルヴァートとの攻防戦②】
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そこにはセレスさんがいて、私たちを見てひどく驚いていた。ヴィンセントさんは仕事のため今日は家にいない。
「何があったの!?」
グレイシアさんにお姫様抱っこされている私を見て問題が起きたのだとすぐにわかったようで、表情が青ざめている。
私たちの後ろでリティシアは気まずそうにしているのだろう。
「アルヴァートは一緒ではないの……?」
「後でお話ししますので先に手当てをして下さい。足が折れているかもしれません」
「まぁ、大変!」
近くのソファーに座らせてもらい、足を見る。真っ青に腫れていて、どうみてもこれは折れている。
「そんな、ひどいわ……でも大丈夫よ」
そうしてセレスさんは私の足に手をかざしながら魔力を込めてくれた。
セレスさんの光魔法だろう。あっという間に足の腫れと痛みはなくなった。
擦り剥けて血が出ていた手のひらも治してくれた。魔法って本当にすごい。
「セレスさん、ありがとうございます」
「いいのよ、まだ無理はしないでね。治ってはいるけどすぐには動かさない方がいいわ」
「はい、わかりました」
「フィーちゃん、あなたたち、何があったのか話してくれる?」
どうしよう、なんだか大事みたいになってしまった。アルヴァートのことが心配だ。
セレスさんを前にしてリティシアは気まずそうなままだ。
アルヴァートのことを話す?
でもそれだと今までのいたずらの事も話さなければならない。
止めなかった私も悪い。
「あの、ただ遊んでいただけなんです。私がうっかり穴に落ちてしまって……」
私のその言葉にリティシアは「え?」とこちらを見た。
「フィーちゃん、何があったのか本当のことを話した方がいいわ。リティシア、お母様にお話しして」
アリシティアさんがリティシアに話をするよう促す。そのお顔はちょっと怖い。
「母さま、その……アルヴァートが……」
「アルヴァートが、どうかしたの?」
「アルヴァートが落とし穴を作ってフィー姉さんを落としたの」
「な、なにを……」
セレスさんは信じられないのか、信じたくないのか言葉に詰まってしまっている。
「最初はちょっとした嫌がらせだけだったの。でもフィー姉さんは全然どうじていなくて、それでアルヴァートがむきになっちゃって」
はぁ、とセレスさんはため息をつく。
「それで?」
「それで、今日、アルヴァートが落とし穴を作っていたからそれはだめだよって言ったの。でも私の話を聞いてくれなかったんです。だから、急いで兄さまと姉さまを呼んできたの。でも間に合わなかった……」
「なんてことを」
セレスさんはアルヴァートのしたことに言葉が出てこないようだ。
でも私もわかっていてアルヴァートについて行った。
それに、アルヴァートがむきになってしまったのも私が大人気なかったせいだ。
「すみません、セレスさん。私がアルヴァートを焚きつけるようなことをしてしまったんです。それに、わかっていてついて行きました。落とし穴も深くなかったし、私が上手く受け身を取れなくて——」
「フィーちゃん、怪我をさせてしまってごめんなさい。でも、あの子を庇うようなことはしなくていいのよ。それはあの子のためにならないことだもの」
「あ——」
そうだ、私が何か言ったところでアルヴァートが人に怪我をさせてしまった事実は変わらない。
悪いことは悪いと教えないといけなかった。その機会を私は奪ってしまったのかもしれない。
「リティシア、アルヴァートがわざわざ離れまで行っていたのはフィーちゃんに嫌がらせをするためだったの?」
「うん、ごめんなさい……」
「フィーちゃん、本当にごめんなさい。よく我慢していたわね」
「あの、本当にそれは大丈夫なんです。最初は驚きましたけど慣れてしまって。それに私もいけなかったんです。アルヴァートの行動が可愛く思えてしまってちゃんと怒らなかったから」
「その行動のどこが可愛いと思うんだ……?」
それまで黙って話を聞いていたグレイシアさんが口を開いた。
「え? 威嚇してくる仔犬みたいで……」
「そういうものなのか? 俺にはわからない」
「フィーちゃん、慣れるようなことじゃないのよ。お願いだから、これからは何かあったらすぐに話してちょうだい」
「はい、すみません。あの、それでアルヴァートを探しに行きたいんですけど……」
「そうね、あの子と話をしてあなたに謝らせないといけないわ。でもフィーちゃんはまだ安静にしていて。私たちで探してくるわ」
みんながアルヴァートを探しに行こうとしたその時、部屋のドアが開いてアルヴァートが入ってきた。
私にはアルヴァートの表情がとても落ち込んでいるように見えた。
「アルヴァート」
リティシアがアルヴァートにかけよる。
アルヴァートは私の方を見て、何かを言いたそうに口を開いた。
「あの、僕ね……」
もしかして謝ろうとしてくれてる?
「アルヴァート、こちらに来なさい。まずはフィーちゃんに怪我をさせてしまったことをちゃんと謝りなさい。骨が折れてしまっていたのよ!?」
セレスさんのその声からとても怒っていることがわかる。
「やっぱりなんでもない!」
そのまま部屋から出て行ってしまった。
アルヴァート、今謝ろうとしてくれたんじゃないの?
なんであんなに頑固なの!?
そしてなんでいつも逃げられるの!?
私ももう、遠慮なんかしないわ。
私は全速力でアルヴァートの後を追いかけた。
「え、フィーちゃん!?」
後ろから呼び止める声が聞こえるけど、アルヴァートをここで逃したらいけない気がする。だから私は止まることなくアルヴァートを追いかけた。
セレスさんが治してくれたおかけで走っても足は痛くなかった。
アルヴァートは屋敷から出て止まることなく走っていく。この前と違ってなかなか追いつけない。
少し開けたところに出たため、私は強硬手段に出ることにした。
風を使ってアルヴァートの動きを遅めた。
「わっ!?」
急な向かい風に足が進まなくなったアルヴァートの腕を私は掴んだ。
さぁ、捕まえたぞ。
「何があったの!?」
グレイシアさんにお姫様抱っこされている私を見て問題が起きたのだとすぐにわかったようで、表情が青ざめている。
私たちの後ろでリティシアは気まずそうにしているのだろう。
「アルヴァートは一緒ではないの……?」
「後でお話ししますので先に手当てをして下さい。足が折れているかもしれません」
「まぁ、大変!」
近くのソファーに座らせてもらい、足を見る。真っ青に腫れていて、どうみてもこれは折れている。
「そんな、ひどいわ……でも大丈夫よ」
そうしてセレスさんは私の足に手をかざしながら魔力を込めてくれた。
セレスさんの光魔法だろう。あっという間に足の腫れと痛みはなくなった。
擦り剥けて血が出ていた手のひらも治してくれた。魔法って本当にすごい。
「セレスさん、ありがとうございます」
「いいのよ、まだ無理はしないでね。治ってはいるけどすぐには動かさない方がいいわ」
「はい、わかりました」
「フィーちゃん、あなたたち、何があったのか話してくれる?」
どうしよう、なんだか大事みたいになってしまった。アルヴァートのことが心配だ。
セレスさんを前にしてリティシアは気まずそうなままだ。
アルヴァートのことを話す?
でもそれだと今までのいたずらの事も話さなければならない。
止めなかった私も悪い。
「あの、ただ遊んでいただけなんです。私がうっかり穴に落ちてしまって……」
私のその言葉にリティシアは「え?」とこちらを見た。
「フィーちゃん、何があったのか本当のことを話した方がいいわ。リティシア、お母様にお話しして」
アリシティアさんがリティシアに話をするよう促す。そのお顔はちょっと怖い。
「母さま、その……アルヴァートが……」
「アルヴァートが、どうかしたの?」
「アルヴァートが落とし穴を作ってフィー姉さんを落としたの」
「な、なにを……」
セレスさんは信じられないのか、信じたくないのか言葉に詰まってしまっている。
「最初はちょっとした嫌がらせだけだったの。でもフィー姉さんは全然どうじていなくて、それでアルヴァートがむきになっちゃって」
はぁ、とセレスさんはため息をつく。
「それで?」
「それで、今日、アルヴァートが落とし穴を作っていたからそれはだめだよって言ったの。でも私の話を聞いてくれなかったんです。だから、急いで兄さまと姉さまを呼んできたの。でも間に合わなかった……」
「なんてことを」
セレスさんはアルヴァートのしたことに言葉が出てこないようだ。
でも私もわかっていてアルヴァートについて行った。
それに、アルヴァートがむきになってしまったのも私が大人気なかったせいだ。
「すみません、セレスさん。私がアルヴァートを焚きつけるようなことをしてしまったんです。それに、わかっていてついて行きました。落とし穴も深くなかったし、私が上手く受け身を取れなくて——」
「フィーちゃん、怪我をさせてしまってごめんなさい。でも、あの子を庇うようなことはしなくていいのよ。それはあの子のためにならないことだもの」
「あ——」
そうだ、私が何か言ったところでアルヴァートが人に怪我をさせてしまった事実は変わらない。
悪いことは悪いと教えないといけなかった。その機会を私は奪ってしまったのかもしれない。
「リティシア、アルヴァートがわざわざ離れまで行っていたのはフィーちゃんに嫌がらせをするためだったの?」
「うん、ごめんなさい……」
「フィーちゃん、本当にごめんなさい。よく我慢していたわね」
「あの、本当にそれは大丈夫なんです。最初は驚きましたけど慣れてしまって。それに私もいけなかったんです。アルヴァートの行動が可愛く思えてしまってちゃんと怒らなかったから」
「その行動のどこが可愛いと思うんだ……?」
それまで黙って話を聞いていたグレイシアさんが口を開いた。
「え? 威嚇してくる仔犬みたいで……」
「そういうものなのか? 俺にはわからない」
「フィーちゃん、慣れるようなことじゃないのよ。お願いだから、これからは何かあったらすぐに話してちょうだい」
「はい、すみません。あの、それでアルヴァートを探しに行きたいんですけど……」
「そうね、あの子と話をしてあなたに謝らせないといけないわ。でもフィーちゃんはまだ安静にしていて。私たちで探してくるわ」
みんながアルヴァートを探しに行こうとしたその時、部屋のドアが開いてアルヴァートが入ってきた。
私にはアルヴァートの表情がとても落ち込んでいるように見えた。
「アルヴァート」
リティシアがアルヴァートにかけよる。
アルヴァートは私の方を見て、何かを言いたそうに口を開いた。
「あの、僕ね……」
もしかして謝ろうとしてくれてる?
「アルヴァート、こちらに来なさい。まずはフィーちゃんに怪我をさせてしまったことをちゃんと謝りなさい。骨が折れてしまっていたのよ!?」
セレスさんのその声からとても怒っていることがわかる。
「やっぱりなんでもない!」
そのまま部屋から出て行ってしまった。
アルヴァート、今謝ろうとしてくれたんじゃないの?
なんであんなに頑固なの!?
そしてなんでいつも逃げられるの!?
私ももう、遠慮なんかしないわ。
私は全速力でアルヴァートの後を追いかけた。
「え、フィーちゃん!?」
後ろから呼び止める声が聞こえるけど、アルヴァートをここで逃したらいけない気がする。だから私は止まることなくアルヴァートを追いかけた。
セレスさんが治してくれたおかけで走っても足は痛くなかった。
アルヴァートは屋敷から出て止まることなく走っていく。この前と違ってなかなか追いつけない。
少し開けたところに出たため、私は強硬手段に出ることにした。
風を使ってアルヴァートの動きを遅めた。
「わっ!?」
急な向かい風に足が進まなくなったアルヴァートの腕を私は掴んだ。
さぁ、捕まえたぞ。
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