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27【アルヴァートとリティシア②】
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私は部屋へと戻り、ベッドへと倒れ込んだ。
リティシアから話が聞けてよかった。
でもまさかアルヴァートが嫉妬をしているとは思わなかった。けれど、ここで過ごした日々を思い返してみると、思い当たる節はあった。
ヴィンセントさんもセレスさんも、よく部屋に顔を出しに来てくれる。
グレイシアさんとアリシティアさんもだ。
私の誕生日にはみんなが部屋へ来て祝ってくれた。プレゼントももらった。
その間、双子はどんな思いで過ごしていたのか? きっと寂しかったに違いない。
まだたった七歳だ。
それなのに、両親はどこの誰かも分からない子どもを気にかけている。
家族で過ごす時間が私のせいで減ってしまっていたのかもしれない。
また後になって気付くとは……。
セレスさんたちに、あまり部屋へ来ない方がいいと伝えた方がいいんだろうか。
ただ、それだとアルヴァートやリティシアの思いを私が勝手に話すことになってしまう。
「はぁ……うぅ」
つい、ため息が出てしまう。
リティシアは待って欲しいと言ってくれた。それなら双子を気にしつつ、落ち着くまでそっとしておこうと心に決めた。
そう思っていたのに、次の日から私はアルヴァートの行動に困惑することになる。
いつものように外で過ごしていると少し離れたところからまたこちらを見ていることに気が付いた。
うーん、どうしたものかな?
待つと決めたのでしばらくそのままでいたけれど、そろそろ移動しよう数メートルほど歩いたところで急に足元がぐらりと傾いた。
「うぇ!?」
私はそのまま地面に躓いて転んでしまった。
驚いて足元を見ると地面が盛り上がっていた。
「え、なにこれ……」
笑い声が聞こえてそちらを見るとアルヴァートだった。リティシアは困ったように見ている。
そのままアルヴァートは走り去ってしまい、その後をリティシアが追いかけていく。
え、まさかこれアルヴァートが……?
たしかアルヴァートは土魔法が得意だと聞いている。
いたずらに魔法を使って困っているとも。
でも、このいたずらは危ないのでは……。
さすがにヴィンセントさんに伝えた方がいいかもしれないと思ったが、できればあの子たちともめたくないし自分でなんとかしたい。
それに告げ口のようなこともしたくない。
このことをヴィンセントさんに言ってしまえば、きっとアルヴァートは叱られるだろう。そんなことになれば余計に心が離れてしまう。
教育上よくないことだとわかっているので、これ以上ひどくなる場合は私から注意しよう。
そしてこの日からアルヴァートのいたずらが始まった。
最初は転ばす程度だったが、だんだんとひどくなっていた。
今日なんて顔をめがけて泥団子が飛んできた。
なんとか避けれたが、次に飛んできた泥団子は避けることができなくてお腹に直撃した。
「いった……」
私はそのまま倒れてしまった。アルヴァートは満足そうにしている。リティシアもさすがにだめだとアルヴァートに怒るが、聞く耳を持たないようだ。
さすがにこれはね? ちょっとひどくない!?
今まで我慢していたがさすがに注意した方がいいだろう。本当によくない。
立ち上がって声をかける。
「ねぇ、アルヴァートくん。これはさすがに危ないから人に向けてやってはいけないよ。私が怪我をしてもいいということなの?」
アルヴァートは一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべたが、謝ることなくそのまま逃げてしまった。
「ごめんなさい、とめられなくて……でもどうしてアルヴァートのことを父さまと母さまに言わないの……?」
リティシアが代わりに謝ってくれる。
「ヴィンセントさんたちに言うと余計に怒らせてしまうでしょう? だから自分でなんとしようとしたんだけど……。アルヴァートくんだって、私に怪我をさせるつもりはないよね? だからもう少し我慢してみるよ」
「そうだとは思うんだけど……でも、危ないよ」
「大丈夫! 私けっこう頑丈だから」
「う、ん……じゃぁ、いくね」
さて、この泥だらけの服をどうしようか。
離れの前でティアナさんに遭遇してしまい、遊びに夢中で転んでしまったと言った。
ティアナさんはすぐにタオルを持ってきてくれて、部屋で新しい服に着替えた。
水魔法と風魔法を覚えたら、こういう汚れも綺麗にできるのかな? いや、乾かすことも含めると火魔法も……?
そうすればどれだけ泥団子をぶつけられても大丈夫だろうと、変な方向へ意気込んでしまった。
◆◆◆
ここへ来てから三ヶ月ほど経った。
アルヴァートとの奇妙な攻防戦は今も続いていた。
私もだいぶ慣れてしまって、ささいないたずらとしか思わなくなっていた。
もちろん他の人にしたら危ないことだとはわかっているけれど、泥団子をぶつけられたこと以上のことはされていないので、アルヴァートの中では一線を守っているようだ。
リティシアはこちらから話しかければ普通に話してくれるようになっていたし、アルヴァートがいない時は離れにも来るようになっていた。
わざわざ離れまで来て私の部屋とは別の部屋や、玄関ホールの階段に座ってお菓子を一人で食べていた。
リティシアが好意的に近くに来てくれるようになっただけでも、なかなかの進歩なのではと嬉しくなっていた。
だけどアルヴァートとの距離が縮んでいる感じはしない。
それを知ってか知らずなのか、セレスさんは私たちを引き合わせるようになっていた。
もう数ヶ月経つから、そろそろ少しずつ慣れてくれれば——、と思っているのかもしれない。
リティシアから話が聞けてよかった。
でもまさかアルヴァートが嫉妬をしているとは思わなかった。けれど、ここで過ごした日々を思い返してみると、思い当たる節はあった。
ヴィンセントさんもセレスさんも、よく部屋に顔を出しに来てくれる。
グレイシアさんとアリシティアさんもだ。
私の誕生日にはみんなが部屋へ来て祝ってくれた。プレゼントももらった。
その間、双子はどんな思いで過ごしていたのか? きっと寂しかったに違いない。
まだたった七歳だ。
それなのに、両親はどこの誰かも分からない子どもを気にかけている。
家族で過ごす時間が私のせいで減ってしまっていたのかもしれない。
また後になって気付くとは……。
セレスさんたちに、あまり部屋へ来ない方がいいと伝えた方がいいんだろうか。
ただ、それだとアルヴァートやリティシアの思いを私が勝手に話すことになってしまう。
「はぁ……うぅ」
つい、ため息が出てしまう。
リティシアは待って欲しいと言ってくれた。それなら双子を気にしつつ、落ち着くまでそっとしておこうと心に決めた。
そう思っていたのに、次の日から私はアルヴァートの行動に困惑することになる。
いつものように外で過ごしていると少し離れたところからまたこちらを見ていることに気が付いた。
うーん、どうしたものかな?
待つと決めたのでしばらくそのままでいたけれど、そろそろ移動しよう数メートルほど歩いたところで急に足元がぐらりと傾いた。
「うぇ!?」
私はそのまま地面に躓いて転んでしまった。
驚いて足元を見ると地面が盛り上がっていた。
「え、なにこれ……」
笑い声が聞こえてそちらを見るとアルヴァートだった。リティシアは困ったように見ている。
そのままアルヴァートは走り去ってしまい、その後をリティシアが追いかけていく。
え、まさかこれアルヴァートが……?
たしかアルヴァートは土魔法が得意だと聞いている。
いたずらに魔法を使って困っているとも。
でも、このいたずらは危ないのでは……。
さすがにヴィンセントさんに伝えた方がいいかもしれないと思ったが、できればあの子たちともめたくないし自分でなんとかしたい。
それに告げ口のようなこともしたくない。
このことをヴィンセントさんに言ってしまえば、きっとアルヴァートは叱られるだろう。そんなことになれば余計に心が離れてしまう。
教育上よくないことだとわかっているので、これ以上ひどくなる場合は私から注意しよう。
そしてこの日からアルヴァートのいたずらが始まった。
最初は転ばす程度だったが、だんだんとひどくなっていた。
今日なんて顔をめがけて泥団子が飛んできた。
なんとか避けれたが、次に飛んできた泥団子は避けることができなくてお腹に直撃した。
「いった……」
私はそのまま倒れてしまった。アルヴァートは満足そうにしている。リティシアもさすがにだめだとアルヴァートに怒るが、聞く耳を持たないようだ。
さすがにこれはね? ちょっとひどくない!?
今まで我慢していたがさすがに注意した方がいいだろう。本当によくない。
立ち上がって声をかける。
「ねぇ、アルヴァートくん。これはさすがに危ないから人に向けてやってはいけないよ。私が怪我をしてもいいということなの?」
アルヴァートは一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべたが、謝ることなくそのまま逃げてしまった。
「ごめんなさい、とめられなくて……でもどうしてアルヴァートのことを父さまと母さまに言わないの……?」
リティシアが代わりに謝ってくれる。
「ヴィンセントさんたちに言うと余計に怒らせてしまうでしょう? だから自分でなんとしようとしたんだけど……。アルヴァートくんだって、私に怪我をさせるつもりはないよね? だからもう少し我慢してみるよ」
「そうだとは思うんだけど……でも、危ないよ」
「大丈夫! 私けっこう頑丈だから」
「う、ん……じゃぁ、いくね」
さて、この泥だらけの服をどうしようか。
離れの前でティアナさんに遭遇してしまい、遊びに夢中で転んでしまったと言った。
ティアナさんはすぐにタオルを持ってきてくれて、部屋で新しい服に着替えた。
水魔法と風魔法を覚えたら、こういう汚れも綺麗にできるのかな? いや、乾かすことも含めると火魔法も……?
そうすればどれだけ泥団子をぶつけられても大丈夫だろうと、変な方向へ意気込んでしまった。
◆◆◆
ここへ来てから三ヶ月ほど経った。
アルヴァートとの奇妙な攻防戦は今も続いていた。
私もだいぶ慣れてしまって、ささいないたずらとしか思わなくなっていた。
もちろん他の人にしたら危ないことだとはわかっているけれど、泥団子をぶつけられたこと以上のことはされていないので、アルヴァートの中では一線を守っているようだ。
リティシアはこちらから話しかければ普通に話してくれるようになっていたし、アルヴァートがいない時は離れにも来るようになっていた。
わざわざ離れまで来て私の部屋とは別の部屋や、玄関ホールの階段に座ってお菓子を一人で食べていた。
リティシアが好意的に近くに来てくれるようになっただけでも、なかなかの進歩なのではと嬉しくなっていた。
だけどアルヴァートとの距離が縮んでいる感じはしない。
それを知ってか知らずなのか、セレスさんは私たちを引き合わせるようになっていた。
もう数ヶ月経つから、そろそろ少しずつ慣れてくれれば——、と思っているのかもしれない。
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