25 / 40
25【試験に向けて&忘れていた誕生日】
しおりを挟む
「そうだわ、フィーちゃんには魔法の勉強以外も学べるよう家庭教師をつけようと思っているんだけどどうかしら?」
と、セレスさん。
「それがいいと思いますわ。年齢が上がれば学園に通うようになるのでしょう? 今から勉強しておけば試験も問題ありませんもの」
次はアリシティアさん。
「それがいいだろうね。この子には魔法の才能があるからね。出来る限りのことはしてあげたい」
これはヴィンセントさん。
「それがいいですね。貴族としてのマナーも学べますし、私も家庭教師はつけた方がいいと思います」
最後にグレイシアさん。
あれ、私の知らないところで話が進んでいる?
家庭教師? 学園? 試験?
誰にどの教科を頼もうか、という話にまで進んでいた。
「あの、私は学園に通うことができるのですか……?」
「あら、もちろんよ。誰でもシヴェイアン王立学園に通うことができるの。もちろん試験に合格しないといけないけどね。あなたには推薦状もあるわ。もちろんウィスタリア公爵家からね」
お、王立学園? なんだかすごいところに通わせようとしていらっしゃる……?
「普通の学校とかはないんでしょうか? 一般のみなさんが通うような……」
「もちろんあるわ。でも、あなたは魔力が高いから王立学園でちゃんと学んだ方がいいわ。それに、王立学園ならグレイシアもいるし、アリシティアも通うのよ。フィーちゃんもみんなと一緒の方が安心でしょう?」
「たしかに安心ですが……貴族でもないのに私が通っても大丈夫なんでしょうか?」
「貴族とか平民とか、あの学園にそういった心配はないわ。王立学園は実力主義ですもの。魔力が高かったり、何かに秀でた才能がある平民の子も多く通っているわ。その子たちは特待生だから学園で必要な経費の心配もいらないの。ただ、差別をする貴族が一定数いることはたしかね」
優秀な生徒が多いということよね?
そんな子たちに混ざって試験を受けて、合格できるのかな。それに、貴族じゃないっていじめられたらどうしよう!? 今からすでに不安だ。
「いじめられたらどうしよう……」
小さく、何気なく呟いただけなのにみんなには聞こえていたようだ。
「あら、そんな人がいたら私が氷漬けにしてあげますわ。ふふ、だから心配しないでね」
「あぁ、そうだな」
アリシティアさんもグレイシアさんも味方になってくれるみたいで嬉しい。
「では、さっそく来週からお勉強を始めましょうね」
セレスさんはにっこりと言った。ら、来週?
試験に合格できるよう、みんなの期待を裏切らないように頑張らないと。
この後も他愛ない会話が続き、グレイシアさんとアリシティアさんとも普通に話せるようになった。
この場を設けてくれたヴィンセントさんたちに感謝しないと。そしてグレイシアさんとアリシティアさんにも。
きっと心の中では思っていることもあるはずなのに、それでも顔に出さずに私と普通に接してくれたんだと思う。
まだ双子のことがあるけど、少し前に進めた気がする。
◆◆◆
それから一週間後に家庭教師の方による勉強が始まった。
最初は少しずつ始まったが、今はなんとかついていけている状態だった。これから科目が増えていくのにこんなことで大丈夫だろうかと不安だ。
覚えることが多過ぎて両立できないため、魔法の授業は一ヶ月後からになった。残念だったけれど、仕方がない。
ただ、魔力の扱い方を忘れないように毎日ペンダントへ魔力を流していると、おかけでいつの間にか聖の魔力だけでなく他の魔力も簡単に扱えるようになっていた。
そしてすっかり忘れていたけれど、私の誕生日の日になっていた。
みんながお祝いをしてくれてプレゼントも貰ってしまった。私でさえ忘れていたのに、誕生日を覚えていてくれたことがとても嬉しかった。
ヴィンセントさんとセレスさんから魔石のついたブレスレットをもらった。保護の魔石がついていて、セレスさん自ら魔力を込めてくれたそうだ。
これはこの屋敷から出て外出するときに使わせてもらおう。
グレイシアさんとアリシティアさんからはハンカチをもらった。とても触り心地のいいなめらかな生地に、とても繊細な刺繍がされていた。
ハンカチを選んだのはグレイシアさんで、刺繍をしてくれたのはアリシティアさんだ。
ハンナさんとティアナさんには可愛らしい髪飾りを、ルドルフさんにはこれまた可愛らしいポシェットを貰った。
「みなさん、本当にありがとうございます。とても嬉しいです! 使うのがもったいないくらい」
「喜んでもらえてよかったわ」
「ルドルフ、それは君が選んだのかい?」
「えぇ、私が直接店へ行き選びましたとも」
こんなに可愛いポシェットをルドルフさんが選んでいるところを想像して微笑ましくなって笑ってしまった。
セレスさんに「私たちだけでごめんなさいね」と言われてしまったが、きっと双子たちがここに来なかったことを言っているのだろう。
私はここにいない双子が今どんな気持ちで過ごしているのか……そちらの方が心配だ。
でも、記憶にない私にとっては初めての誕生日のようなもの。こんなにも誕生日を祝ってもらえて、思い出に残る誕生日となりただ嬉しかった。
と、セレスさん。
「それがいいと思いますわ。年齢が上がれば学園に通うようになるのでしょう? 今から勉強しておけば試験も問題ありませんもの」
次はアリシティアさん。
「それがいいだろうね。この子には魔法の才能があるからね。出来る限りのことはしてあげたい」
これはヴィンセントさん。
「それがいいですね。貴族としてのマナーも学べますし、私も家庭教師はつけた方がいいと思います」
最後にグレイシアさん。
あれ、私の知らないところで話が進んでいる?
家庭教師? 学園? 試験?
誰にどの教科を頼もうか、という話にまで進んでいた。
「あの、私は学園に通うことができるのですか……?」
「あら、もちろんよ。誰でもシヴェイアン王立学園に通うことができるの。もちろん試験に合格しないといけないけどね。あなたには推薦状もあるわ。もちろんウィスタリア公爵家からね」
お、王立学園? なんだかすごいところに通わせようとしていらっしゃる……?
「普通の学校とかはないんでしょうか? 一般のみなさんが通うような……」
「もちろんあるわ。でも、あなたは魔力が高いから王立学園でちゃんと学んだ方がいいわ。それに、王立学園ならグレイシアもいるし、アリシティアも通うのよ。フィーちゃんもみんなと一緒の方が安心でしょう?」
「たしかに安心ですが……貴族でもないのに私が通っても大丈夫なんでしょうか?」
「貴族とか平民とか、あの学園にそういった心配はないわ。王立学園は実力主義ですもの。魔力が高かったり、何かに秀でた才能がある平民の子も多く通っているわ。その子たちは特待生だから学園で必要な経費の心配もいらないの。ただ、差別をする貴族が一定数いることはたしかね」
優秀な生徒が多いということよね?
そんな子たちに混ざって試験を受けて、合格できるのかな。それに、貴族じゃないっていじめられたらどうしよう!? 今からすでに不安だ。
「いじめられたらどうしよう……」
小さく、何気なく呟いただけなのにみんなには聞こえていたようだ。
「あら、そんな人がいたら私が氷漬けにしてあげますわ。ふふ、だから心配しないでね」
「あぁ、そうだな」
アリシティアさんもグレイシアさんも味方になってくれるみたいで嬉しい。
「では、さっそく来週からお勉強を始めましょうね」
セレスさんはにっこりと言った。ら、来週?
試験に合格できるよう、みんなの期待を裏切らないように頑張らないと。
この後も他愛ない会話が続き、グレイシアさんとアリシティアさんとも普通に話せるようになった。
この場を設けてくれたヴィンセントさんたちに感謝しないと。そしてグレイシアさんとアリシティアさんにも。
きっと心の中では思っていることもあるはずなのに、それでも顔に出さずに私と普通に接してくれたんだと思う。
まだ双子のことがあるけど、少し前に進めた気がする。
◆◆◆
それから一週間後に家庭教師の方による勉強が始まった。
最初は少しずつ始まったが、今はなんとかついていけている状態だった。これから科目が増えていくのにこんなことで大丈夫だろうかと不安だ。
覚えることが多過ぎて両立できないため、魔法の授業は一ヶ月後からになった。残念だったけれど、仕方がない。
ただ、魔力の扱い方を忘れないように毎日ペンダントへ魔力を流していると、おかけでいつの間にか聖の魔力だけでなく他の魔力も簡単に扱えるようになっていた。
そしてすっかり忘れていたけれど、私の誕生日の日になっていた。
みんながお祝いをしてくれてプレゼントも貰ってしまった。私でさえ忘れていたのに、誕生日を覚えていてくれたことがとても嬉しかった。
ヴィンセントさんとセレスさんから魔石のついたブレスレットをもらった。保護の魔石がついていて、セレスさん自ら魔力を込めてくれたそうだ。
これはこの屋敷から出て外出するときに使わせてもらおう。
グレイシアさんとアリシティアさんからはハンカチをもらった。とても触り心地のいいなめらかな生地に、とても繊細な刺繍がされていた。
ハンカチを選んだのはグレイシアさんで、刺繍をしてくれたのはアリシティアさんだ。
ハンナさんとティアナさんには可愛らしい髪飾りを、ルドルフさんにはこれまた可愛らしいポシェットを貰った。
「みなさん、本当にありがとうございます。とても嬉しいです! 使うのがもったいないくらい」
「喜んでもらえてよかったわ」
「ルドルフ、それは君が選んだのかい?」
「えぇ、私が直接店へ行き選びましたとも」
こんなに可愛いポシェットをルドルフさんが選んでいるところを想像して微笑ましくなって笑ってしまった。
セレスさんに「私たちだけでごめんなさいね」と言われてしまったが、きっと双子たちがここに来なかったことを言っているのだろう。
私はここにいない双子が今どんな気持ちで過ごしているのか……そちらの方が心配だ。
でも、記憶にない私にとっては初めての誕生日のようなもの。こんなにも誕生日を祝ってもらえて、思い出に残る誕生日となりただ嬉しかった。
238
お気に入りに追加
1,362
あなたにおすすめの小説
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる