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21【ペンダントの中、そして王都へ】
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ということで、部屋へとやってきたヴィンセントさんにさっそく話をしてみた。
「たしかにフィーはもう魔力の扱い方は大丈夫そうだね。正直、こんなに早く扱えるとは思わなかったよ」
「ふふ、嬉しいです! あの、このペンダントに魔力を流してもいいですか?」
「あぁ、いいよ。ただ何かあるかもしれないからセレスも呼んでこよう」
ヴィンセントさんがセレスさんを呼んできてくれて、二人に見守られながら魔力を流すことになった。
「では始めます……」
緊張と期待で少しそわそわしながらもペンダントに魔力を少しずつ流していく。一番適性のあった聖の魔力を込めながら。
体の中が温かく感じ、手に持つペンダントも心なしか熱をおびた気がする。
さて、どうかな——?
魔力を流し終わってペンダントを見てみるが……見た目は何も変わっていない。
あれ、魔力が足りなかったのか? それとも魔力の属性が違ったとか……。
ロケットペンダントのはずだから開けてみようと触ったところ、カチャリと開いた。
「あ、開きました!」
開いたペンダントの中を見てみると、そこには金の鉱石に花の紋様が綺麗に彫られており、その下には小さな水色の石もはめ込まれていた。
ペンダントの外側は薄い黄色だけれど、まさか中が金だとは思わなかった。なんか、高そう……。
ヴィンセントさんたちにペンダントの中を見せる。
「私たちが見てもいいのかい?」
「はい、ぜひ見てください。私にはこれが何かわからないので……ヴィンセントさんはこれが何か知っていますか?」
ヴィンセントは受け取ったペンダントをじっくりとよく見た。
私はこの花の名前は知らないし、水色の石もただの石なのかそれとも魔石なのか。
「すまない、フィー。花の紋様に見覚えはないな。この石は魔石……だとは思うが、どのような魔力が込められているかも見当もつかない」
「そうですか……」
「魔石の欠片だろうか。セレスは見たことあるかい?」
「私もわからないですね……この花の花びらは特徴がありますね」
セレスさんの言うとおり、花びらは先端がくるりとなっていて可愛らしいものだった。ただ、金に彫刻されているので色は付いていない。
試しに水色の魔石にも魔力を流してみたけれど、特に何も起こらなかった。
残念だったけれど、何も入っていなかったわけでもないのでそれはよかったかな。
これは自分のことがわかる唯一の手がかりになるかもしれない。
「フィーさえよければ、王都に戻ったら知り合いの薬学魔導士にその花のことを聞いてみるよ。もちろん他言無用でね」
「ありがとうございます! ぜひお願いします」
王都の薬学魔導士、なんか凄そうな響きだ。
その人なら何か知っているかな。
それから同じような日々を過ごし、あっという間にウィスタリア公爵家が王都へ戻る日がやってきた。
◆◆◆
王都へと戻る日、公爵家は朝から忙しそうにしていた。けれど私は部屋で待っているだけでいいらしく、特にすることがないのでこうして大人しくしている。
昨日の夜、ヴィンセントさんから私に関する手続きは問題なく通ったということを教えてもらい、一つ不安がなくなり安心した。
捜索願が出ていないかも調べてくれていたみたいだけど、私に合う条件の子ではなかったそうだ。
そして、私に関する情報も特にわからなかったと。
捜索願については残念なような安心したような、微妙な思いだ。
正直、まだこの世界に関する記憶が戻っていないのに、いきなり"あなたの家族です~!"と言われても困惑していたと思う。
私を心配して必死に探してくれている誰かがいるかもしれないし、反対に傷付けよう、利用しようと探している人がいるかもしれない。
そういう不安はあるが、手続きも無事に終わっているということでヴィンセントさんが「何かあっても手出しはできないし、させないよ」と言ってくれて非常に心強い。
結局今日まで子どもたちとの接触は一切なかった。
ただ、王都の本邸に戻ったら長男のグレイシアさんと長女のアリシティアさんを紹介したいと言ってくれた。
この二人のことは安心して頼っていいと言っていたので少しだけ会うことが楽しみだ。
私はヴィンセントさんと一番最後に戻ることになっている。
セレスさんと子どもたち四人は今日の午後、先に王都へと戻るそうだ。
ヴィンセントさんは領地のことなど全ての確認をして何も問題がなければ明日、私と一緒に王都へ戻ることになる。
外の様子が気になってしまい、窓からこっそりセレスさんたちの姿を眺めていた。
接触してはいけないと思ったので本当にこっそりと。
窓から見た外には四人の子どもたちもいた。
見覚えのある双子の男の子と女の子。双子は嬉しそうにセレスさんに抱きついている。
あんなに笑顔の可愛い子どもたちなのに、私のせいで傷付けてしまった。
あの時の二人の表情を思い出すと胸の奥が痛む。
そして長男と長女と思われる、私より年上の子がいた。
うわぁ、二人ともすごく綺麗な顔立ちだ。
子どもたち四人とも、髪は金色系統で本当にそっくりだった。
あまりの美しさに"とても絵になる家族だなぁ"なんて呑気に考えていたら長男がこちらに振り返った。
「!?」
私はとっさにカーテンに隠れた。覗き見をしていたことにきっと気付かれてしまっただろう。
あぁ、どうしよう!?
なんで覗き見なんてしちゃったんだろう!
また印象を悪くするようなことをしてしまい、盛大なため息をついてベッドへもそもそと潜った。
仲良くなって欲しいと願っているヴィンセントさんたちには申し訳ないけれど、最後の最後で印象を悪くしてしまったと謝罪しておこう……。
次の日、ヴィンセントさんに覗き見したことを謝罪すると「楽しかったかい?」とただ笑っていた。
楽しかったですけど笑いごとではないんですよ! 私にとっては死活問題なんです!
自分の考えなしの行動に反省しながら、本邸へ行ったらちゃんと気を付けよう——そう心に誓った。
「たしかにフィーはもう魔力の扱い方は大丈夫そうだね。正直、こんなに早く扱えるとは思わなかったよ」
「ふふ、嬉しいです! あの、このペンダントに魔力を流してもいいですか?」
「あぁ、いいよ。ただ何かあるかもしれないからセレスも呼んでこよう」
ヴィンセントさんがセレスさんを呼んできてくれて、二人に見守られながら魔力を流すことになった。
「では始めます……」
緊張と期待で少しそわそわしながらもペンダントに魔力を少しずつ流していく。一番適性のあった聖の魔力を込めながら。
体の中が温かく感じ、手に持つペンダントも心なしか熱をおびた気がする。
さて、どうかな——?
魔力を流し終わってペンダントを見てみるが……見た目は何も変わっていない。
あれ、魔力が足りなかったのか? それとも魔力の属性が違ったとか……。
ロケットペンダントのはずだから開けてみようと触ったところ、カチャリと開いた。
「あ、開きました!」
開いたペンダントの中を見てみると、そこには金の鉱石に花の紋様が綺麗に彫られており、その下には小さな水色の石もはめ込まれていた。
ペンダントの外側は薄い黄色だけれど、まさか中が金だとは思わなかった。なんか、高そう……。
ヴィンセントさんたちにペンダントの中を見せる。
「私たちが見てもいいのかい?」
「はい、ぜひ見てください。私にはこれが何かわからないので……ヴィンセントさんはこれが何か知っていますか?」
ヴィンセントは受け取ったペンダントをじっくりとよく見た。
私はこの花の名前は知らないし、水色の石もただの石なのかそれとも魔石なのか。
「すまない、フィー。花の紋様に見覚えはないな。この石は魔石……だとは思うが、どのような魔力が込められているかも見当もつかない」
「そうですか……」
「魔石の欠片だろうか。セレスは見たことあるかい?」
「私もわからないですね……この花の花びらは特徴がありますね」
セレスさんの言うとおり、花びらは先端がくるりとなっていて可愛らしいものだった。ただ、金に彫刻されているので色は付いていない。
試しに水色の魔石にも魔力を流してみたけれど、特に何も起こらなかった。
残念だったけれど、何も入っていなかったわけでもないのでそれはよかったかな。
これは自分のことがわかる唯一の手がかりになるかもしれない。
「フィーさえよければ、王都に戻ったら知り合いの薬学魔導士にその花のことを聞いてみるよ。もちろん他言無用でね」
「ありがとうございます! ぜひお願いします」
王都の薬学魔導士、なんか凄そうな響きだ。
その人なら何か知っているかな。
それから同じような日々を過ごし、あっという間にウィスタリア公爵家が王都へ戻る日がやってきた。
◆◆◆
王都へと戻る日、公爵家は朝から忙しそうにしていた。けれど私は部屋で待っているだけでいいらしく、特にすることがないのでこうして大人しくしている。
昨日の夜、ヴィンセントさんから私に関する手続きは問題なく通ったということを教えてもらい、一つ不安がなくなり安心した。
捜索願が出ていないかも調べてくれていたみたいだけど、私に合う条件の子ではなかったそうだ。
そして、私に関する情報も特にわからなかったと。
捜索願については残念なような安心したような、微妙な思いだ。
正直、まだこの世界に関する記憶が戻っていないのに、いきなり"あなたの家族です~!"と言われても困惑していたと思う。
私を心配して必死に探してくれている誰かがいるかもしれないし、反対に傷付けよう、利用しようと探している人がいるかもしれない。
そういう不安はあるが、手続きも無事に終わっているということでヴィンセントさんが「何かあっても手出しはできないし、させないよ」と言ってくれて非常に心強い。
結局今日まで子どもたちとの接触は一切なかった。
ただ、王都の本邸に戻ったら長男のグレイシアさんと長女のアリシティアさんを紹介したいと言ってくれた。
この二人のことは安心して頼っていいと言っていたので少しだけ会うことが楽しみだ。
私はヴィンセントさんと一番最後に戻ることになっている。
セレスさんと子どもたち四人は今日の午後、先に王都へと戻るそうだ。
ヴィンセントさんは領地のことなど全ての確認をして何も問題がなければ明日、私と一緒に王都へ戻ることになる。
外の様子が気になってしまい、窓からこっそりセレスさんたちの姿を眺めていた。
接触してはいけないと思ったので本当にこっそりと。
窓から見た外には四人の子どもたちもいた。
見覚えのある双子の男の子と女の子。双子は嬉しそうにセレスさんに抱きついている。
あんなに笑顔の可愛い子どもたちなのに、私のせいで傷付けてしまった。
あの時の二人の表情を思い出すと胸の奥が痛む。
そして長男と長女と思われる、私より年上の子がいた。
うわぁ、二人ともすごく綺麗な顔立ちだ。
子どもたち四人とも、髪は金色系統で本当にそっくりだった。
あまりの美しさに"とても絵になる家族だなぁ"なんて呑気に考えていたら長男がこちらに振り返った。
「!?」
私はとっさにカーテンに隠れた。覗き見をしていたことにきっと気付かれてしまっただろう。
あぁ、どうしよう!?
なんで覗き見なんてしちゃったんだろう!
また印象を悪くするようなことをしてしまい、盛大なため息をついてベッドへもそもそと潜った。
仲良くなって欲しいと願っているヴィンセントさんたちには申し訳ないけれど、最後の最後で印象を悪くしてしまったと謝罪しておこう……。
次の日、ヴィンセントさんに覗き見したことを謝罪すると「楽しかったかい?」とただ笑っていた。
楽しかったですけど笑いごとではないんですよ! 私にとっては死活問題なんです!
自分の考えなしの行動に反省しながら、本邸へ行ったらちゃんと気を付けよう——そう心に誓った。
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