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18【これからについて①】
しおりを挟むヴィンセントは先程フィーと話した内容をセレスとグレイシアに伝えた。
「フィーちゃんも、またあとで話をしないといけないわね。アルヴァートたちはあなたと話をする間、部屋で待っていると言ってくれたわ。あの子たちも、あの子たちなりに気を遣ってくれたのよね……」
「そうか……子どもたちに悪いことをしてしまったな……」
ヴィンセントもセレスも、自分たちの行動でまだ幼いのに子どもたちを傷付けてしまったことを後悔していた。
そんな重たい空気の中、グレイシアは口を開いた。
「あの、父様、母様。まずはあの女の子についてわかったことを私にも教えてもらえませんか?」
「あぁ、そうだね」
ヴィンセントはグレイシアにフィーを見つけたときの状況から今までに起きたことなど、わかっていることを全て話した。
ロケットペンダントのことも、教会で見たステータスについても隠さず教えた。
「何か問題を抱えているような感じがするのですが気のせいでしょうか?」
話を聞いたグレイシアはまずそのことが頭に浮かんだ。
「気のせいではないだろうね。私も気になっていることがあってね」
そう、それは魔法防壁のトラブルのことだ。
ヴィンセントがずっと仮説として考えていたことがあった。それをセレスとグレイシアに話すことにした。
「あの日、魔法防壁に問題があったことは話しただろう? 捜索をしても何も見つけることはできなかったから特に気に留めていなかったんだ。でも今日、教会でフィーが不法入国だったらどうしよう、って言ってね。それが妙に引っかかったんだ」
「あぁ、言ってましたわ。あなた、そのとき何かを考え込んでいましたね」
「父様、もしかしてあの子は手続きをせずにこの国へ来たと考えているのですか?」
「あぁ、そうだ。魔法防壁に何かしら問題があったのは確かだからね。我が騎士団の検知機が感知したのだから、間違いだったなんてことはないはずだ。その問題というのが、魔法防壁に衝撃が加えられたことかもしれない」
「ですが、魔法防壁を破るなんて……」
セレスは魔法防壁を破るために必要な魔力量を考えて、不可能なのではと思った。そもそも魔法防壁はこの国を守るためにあるものなのだから、そんな簡単に破られていいものではない。
「あぁ、普通は無理だろうね。だが、あの大嵐の日に膨大な魔力を使えば子ども一人が通れるぐらいの穴は開いてしまう可能性は捨てきれない」
「ですが、相当な量の魔力が必要になりますよね? 私も聖の魔力を少しは扱えますが、とても一人二人でできることではありませんわ」
「セレス、フィーにかけられていた魔法陣を覚えているかい? あれを施した者なら? その者とあと数人、上級魔導士がいれば可能ではないか?」
セレスもその可能性に気が付いた。
「父様、それほど高位な魔法陣だったのですか?」
「あぁ、そうだ。あれほどのものはそうお目にかかれるものではない。この国の魔導士にだって解読できるかどうか……」
グレイシアは魔法陣を見ていないが、ヴィンセントとセレスは直接見ている。あの魔法陣はとても細かく描かれていた。
どの魔力を、どのように効率化しているのか。
「あなた、たしかにその可能性は高いのでは?」
「ですが父様、何のためにそんなことをしたのでしょうか?」
「そうだな——」
ヴィンセントは考えた。
なぜそこまでしてフィーをここへと連れて来たのか。なぜこの国へ?
ステータスでは秘匿されていた名前、出身地。
フィーが何か問題を抱えていることは見ればわかることだが、理由がわからない。
どんな事情があり危険を侵してまでこの国へ逃れてきたのか。
「フィーちゃんは貴族の可能性が高い――、ですよね」
セレスは心配そうに小さく呟いた。
「夢に出てきたという男の子も同じ金の髪色をしていたと言うし、秘匿されたステータスからしても間違いなくそうだろう。あの子がどこまで理解したかはわからないが、正直なところ魔法の適性も私たちよりあるだろうな」
この世界の人は誰でも少なからず魔力を持っている。貴族は平民より魔力が高く、貴族の位が高くなるほどその魔力値の平均は大きくなる。
そして金色系統の髪色を持つ貴族は多くはない。ウィスタリア公爵家もみな金色系で、一目で魔力を多く持つということがわかる。
本人の意思とは関係なく金色の髪というだけで特別な意味を持ってしまうため、教会へ行った時は念のためにフィーにショールをかぶらせていた。
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