上 下
12 / 40

12【夢とペンダント③】

しおりを挟む

 あ、そういえば。

「あの、実はお話ししたいことがあるんです」

「あら、どうしたの?」

「眠っている時に夢を見たんです。その夢の内容なんですけど、私と同じ髪色をした男の子がいて……それで、私のことフィーって呼んだんです。もしかしたら、フィーって私の名前なんじゃないかと思って」

「フィー……?」

 セレスさんは、そう口にした後なんだか悲しそうな顔をした。少しだけ動揺したのがわかった。

 けれどそれも一瞬のことで。

「フィー、ね。あなたにとても似合う可愛らしい名前だわ。これからあなたのことをフィーちゃんって呼ばせてもらってもいいかしら?」

「はい……」

 今見たセレスさんの悲しそうな表情はなんだったのだろうか。ヴィンセントさんもセレさんのことを心配そうに見ている。

「私もフィーと呼ばせてもらって大丈夫かな?」

「はい、ぜひ」

 私がそう言うとヴィンセントさんは小さく微笑んだ。

「あの、それともう一つありまして」

 私は手に持っていたペンダントを二人に見せた。これが何なのかわかるといいんだけれど。

「ペンダント?」

「これはフィーちゃんの……?」

 二人とも頭の上に疑問符が浮かんでいるようだ。まさか私がペンダントを持っていたとは思わなかったのだろう。何も持っていなかったはずなのだから。

「このペンダント、持っていなかったはずなのに急に私の首元に現れたんです」

「なんだって?」

 二人とも目を見開いて驚いた。セレスさんは開いた口に手を当てている。

 そうだよね、私だってかなりびっくりしたもの。

「夢の中でその男の子がペンダントって言ったんです。それで、起きてなんとなく首元に手をやったらそこにペンダントがありました。これは一体どういうことなんでしょうか……?」

「そのペンダント、ちょっと見せてもらってもいいかい?」

 どうぞ、と言ってペンダントをヴィンセントさんに渡した。

「これは……魔力が込められているね。持ち主にしか所持できない魔導具だろう。魔導具というのはそのままの意味で、魔力がこもった物のことを言うんだよ。このペンダントがどういう仕組みなのかは……」

 ヴィンセントさんは不思議そうにペンダントを見ている。

「魔導具、ですか。これ、ロケットペンダントでしょうか? ここが開けられそうな気がするんですけど、何をしても開かないんです」

「あぁ、たしかにロケットペンダントだね。これは魔導具だから、持ち主である君の魔力を流せばいいと思うんだけど……。魔力の流し方はわからないよね? 魔力の扱い方に慣れるまではまだやらない方がいいだろう。危ないからね」

「そうですか。魔力の扱い方に慣れたらやってみてもいいですか?」

「そうだね。明日教会で魔力適性も確認できるから、一番適性のある魔力の扱い方から練習しよう」

 いっそう明日が楽しみになってきた。

 早く魔力の扱いに慣れて、このペンダントの中を見てみたい。何か入っているかな?

「あの……」

「なぁに、フィーちゃん」

「夢に出てきた男の子なんですけど……もしかして私の家族かな、って思ったんです。この髪色と同じだったから……。でも、金色の髪色ってそんなに珍しくはないんでしょうか?」

 私はそう言いながらヴィンセントさんたちの髪を見た。ヴィンセントさんもセレスさんも綺麗な金色の髪をしているからだ。

「あ……」

 セレスさんは何かを言いにくそうにしていた。ヴィンセントさんが代わりに話をしてくれる。

「金色の髪は魔力の高さを表しているんだよ。私たち公爵家の者は全員金色系統の髪色なんだよ。金色の髪は珍しい、とは言えるかな」

「それなら私も魔力が高いんでしょうか?」
 
「間違いなくそうだろうね。金色は魔力の高さだけでなく、適性魔力が多いことも理由なんだよ。あと、金色じゃないからと言って魔力が高くないということでもないんだよ」

「そうなんですね」

「例えば火の魔力が強い人は髪が赤色をしていたり、瞳が赤いとかね。セレスの髪色も薄い黄色よりの金色をしているだろう? それは光の魔力が強いからなんだ。もちろん家系で色持ちということもあるんだけどね。こういう話も、今後知っていくといいよ」
 
「わぁ、楽しみです」

 セレスさんとヴィンセントさんは違う系統の金色だ。私とも違う。魔力や適性で髪色や瞳の色が違うだなんて、本当に不思議だ。

「フィーちゃん、さっきは黙ってしまってごめんね。あなたに家族の話をして大丈夫か迷ってしまったの」

 セレスさんは申し訳なさそうに目尻を下げた。

「その男の子なんだけれど、あなたの言ったとおりフィーちゃんの家族の可能性が高いわ。金色は珍しいと言ったでしょう? 同じ色ならなおさら血縁関係がある可能性が高いの」

「そう、ですか……血縁関係……」

 もしかして私にお兄ちゃんとかいるのかな。優しく私の名前を呼んだ男の子。いつか会うことができるかな?

「会いたいな……」

 ぽつりと呟いた私の言葉にヴィンセントさんたちは困ったような表情をした。

「あ、いえ、なんでもないです」

「そう……? それじゃぁフィーちゃん。また明日朝食を食べ終わった頃にまた来るわね。それまでゆっくり休んでね」

「はい、わかりました。ありがとうございます」
 
 そうして私は明日を楽しみにしながら今日もまたぐっすりと眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

転生後モブ令嬢になりました、もう一度やり直したいです

月兎
恋愛
次こそ上手く逃げ切ろう 思い出したのは転生前の日本人として、呑気に適当に過ごしていた自分 そして今いる世界はゲームの中の、攻略対象レオンの婚約者イリアーナ 悪役令嬢?いいえ ヒロインが攻略対象を決める前に亡くなって、その後シナリオが進んでいく悪役令嬢どころか噛ませ役にもなれてないじゃん… というモブ令嬢になってました それでも何とかこの状況から逃れたいです タイトルかませ役からモブ令嬢に変更いたしました ******************************** 初めて投稿いたします 内容はありきたりで、ご都合主義な所、文が稚拙な所多々あると思います それでも呼んでくださる方がいたら嬉しいなと思います 最後まで書き終えれるよう頑張ります よろしくお願いします。 念のためR18にしておりましたが、R15でも大丈夫かなと思い変更いたしました R18はまだ別で指定して書こうかなと思います

殿下の婚約者は、記憶喪失です。

有沢真尋
恋愛
 王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。  王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。  たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。  彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。 ※ざまあ要素はありません。 ※表紙はかんたん表紙メーカーさま

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

私がいなければ。

月見 初音
恋愛
大国クラッサ王国のアルバト国王の妾腹の子として生まれたアグネスに、婚約話がもちかけられる。 しかし相手は、大陸一の美青年と名高い敵国のステア・アイザイン公爵であった。 公爵から明らかな憎悪を向けられ、周りからは2人の不釣り合いさを笑われるが、アグネスは彼と結婚する。 結婚生活の中でアグネスはステアの誠実さや優しさを知り彼を愛し始める。 しかしある日、ステアがアグネスを憎む理由を知ってしまい罪悪感から彼女は自死を決意する。 毒を飲んだが死にきれず、目が覚めたとき彼女の記憶はなくなっていた。 そして彼女の目の前には、今にも泣き出しそうな顔のステアがいた。 𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷 初投稿作品なので温かい目で見てくださると幸いです。 コメントくださるととっても嬉しいです! 誤字脱字報告してくださると助かります。 不定期更新です。 表紙のお借り元▼ https://www.pixiv.net/users/3524455 𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷⢄⡱𖧷

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

処理中です...