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第2章 〜 蕩(とろ)ける女教師 〜
第 2 章 〜 蕩ける女教師 1 〜
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「まさか、仕事で八重樫の学校に呼ばれると思わなかったよ」
「私も、先月の同窓会で話を聞いて思い出さなかったら、こうして戸塚くんを呼んでないわ」
隼人と並んで歩いてる八重樫清美は微笑する。
切れ長の目に黒縁の丸眼鏡がマッチして、美形というより愛らしい魅力をもった顔立ちであった。
ロングヘアを束ねてアップした髪型が艶っぽく、スレンダーながらメリハリの良い体型をダークグレイのスーツが強調している。清美に見とれていた隼人は、廊下の角を曲がるように促す彼女に我に返り、慌ててあとに続く。
訪問の一週間前。
かおりとの情事を終えて帰社した隼人は、同僚から小見山高校の先生から連絡があったと伝言を受け取った。
学校の飲料の仕入れについて相談があるとのことで、翌朝、清美に連絡してみると、学校生活に影響のありそうな話なのが、彼女の暗い声色でわかった。
聞けば、今まで飲料を仕入れていた会社から突然、『業績不振のあおりで商品を一斉に値上げする』と言われたそうで、予備に持っていた学校予算を大幅に超える額だという。新しく仕入れるしかなくなり、隼人に相談を持ちかけたのだ。確か、今までの仕入先は隼人の会社のライバル会社だったはずだ。
「あ、キィ先生っ、お疲れ様!!! その人が新しい旦那さん候補?」
隼人たちの前から大きな声で呼びかける茶髪の女子生徒が見えた。制服のリボンを崩してワイシャツの袖をまくり上げた、いかにも『元気印』といった感じの生徒だ。
苦笑した清美は、女子生徒に向けて、ゆっくり『違う違う』と手をふる。
「朝日オアシスの戸塚さんよ。購買部の件で来ていただいたの」
(そうか、八重樫って何年か前に離婚したんだよな……同窓会でかおりちゃんが教えてくれたっけ)
清美を呼び止めた生徒が二人に近づく。隼人をしげしげと眺めてニヤニヤ笑う。タレ目の瞳は品定めするようで、少しも笑っていない。隼人は女子生徒の視線でいたたまれない気分になって、手に下げていたカバンを胸元に引き寄せた。ここまで居心地の悪い訪問は久しぶりだ。品定めされるくらいなら、謝罪訪問の方がまだマシだ。
「へー、近くで見ると、結構イケメンじゃん。キィ先生、気をつけてね」
「典子ちゃん、やめなさい。購買部の件で来ていただいているんだから」
「はーい」
典子と呼ばれた女子生徒は清美に手を振ると、小走りに廊下を走り去った。隼人に振り向いた彼女はうつむきながら、廊下を進むよう促しながら話し始めた。
「あの娘、風間典子ちゃんは、購買部の仕事を手伝ってくれるのよ。あんな感じな子だけど、私にはもったいないくらい優秀よ」
「へぇ……ああいう呼び方するんだから、八重樫を慕ってるんだろうな」
「あの娘、ご家庭が複雑なのよ。いつも学校に一人で遅くまでいてね……」
部活に入っているわけでもないのに、遅くまで学校にいる生徒であった。だからといって、つるむ友達が多いわけでもない。
ある時は教室から窓の外をずっと眺めていたり、ある時は自販機周辺で時間をつぶしていることが少なくなかったとようだ。離婚したばかりの清美は、典子の様子が他人事と思えなくて、ある時、思い切って話を聞いたのだ。
少し話かけたあと、清美がそばに座り辛抱強く彼女の言葉をまった。
そして長い沈黙の末、典子はポツリと「家に居場所がない」と呟いたという。
「……私もバツイチでしょ。寂しい気持ちはわかるつもり。だから、渋る校長先生を説得して、『購買部の店員』として一通りの事を手伝ってもらうことにしたの。『店長』の私は、あんまりテキパキ出来る方じゃないからね」
「そうか……」
『購買部』と書かれたプレートが貼られた部屋の前で清美は立ち止まった。鍵を開けて、隼人を招き入れる。
生徒たちに品物を販売するレジカウンターの後ろにテーブルとイスが設置されている。品物の出し入れや検品などの作業用だろう。
清美はジャケットを脱いで、カウンターにそっと置いた。
薄手のワイシャツからキャミソールがはっきりと透けて見え、くびれた腰が艶めかしい。
「最初はおぼつかなかったけど、今じゃ立派な戦力よ。他の生徒とも上手くやってるみたいだし」
典子のことを話す清美も、深い寂しさと悲しみを背負っているのは同じなのだ。
慕われるのもわかる気がする。そんなことを思うと、隼人は言葉が続かなくなってしまった。
「……ごめんなさい、忙しいのに時間作って来てもらってるのに。仕入れの話よね」
「……ああ、見積だったよな。事情が事情だったから、特別価格で社内調整したよ」
カバンから見積を取り出して、テーブルに差し出す。清美はチラリと隼人を見たが、視線はすぐテーブルの上の見積に移ってしまった。
(なんか、俺と視線を合わせてくれないな)
自分になにか落ち度があっただろうか。たしか、同窓会の時も目線を合わせて話した記憶がない。
しかし、いくら気になるからといって、清美をジロジロと見続けるわけにもいかない。
「……ありがとう。この値段なら予算でなんとかやりくりできそう」
清美の感謝の言葉にひとまず安堵する。の隼人が部屋に視線を巡らせると、奥に倉庫らしきスペースがあるのに気がついた。
「そういや、この奥は倉庫になってるの?」
「そうなのよ。ちょうど良かった。物流のプロに見てもらいたいの。ド素人じゃ限度があって……」
立ち上がった清美は、怪訝な顔をする隼人を手招きして、購買部室の奥にある倉庫に入っていった。
隼人が恐る恐る入ると、照明が点灯し、清美が鍵をカチャリと閉めた。
「一応、売るものを置いているからね。施錠するのがルールなの。ちゃんと棚卸しもしてるのよ」
うず高く積まれた段ボールをひと目見て、隼人は眉間に縦じわを寄せた。
「これ、棚卸しとか品出しにすごく時間かかってない? あと、欠品も多いと思うけど」
「よくわかったね……そうなのよ」
清美は目を見開いて、隼人の顔を見た。初めてまともに顔を見られた気がする。
若手の時に倉庫整理は散々やっている。厳しい先輩に保管のノウハウを叩き込まれた。納品物を効率良く倉庫に保管して導線の無駄を減らすことで、仕事全体の効率も上がるし、在庫ロスも減る。
清美と典子でそれなりに考えたのだろうが、この倉庫は売れ筋も死に筋もごっちゃりとした積み方をしていて、ただでさえ狭い倉庫がより狭く、導線も考えられてないと思えた。いずれ何か事故が起きるだろう。
隼人はジャケットを脱いで、手近な段ボールをおろし始めた。配置を変更すれば、事故も防げるし、清美も典子も多少は作業がラクになるだろう。
「ちょっと配置を変えよう。そんなに手間かからないから」
「あ、私も手伝う……きゃっ!!」
清美が隼人の置いた段ボールに足を引っ掛けてバランスを崩した。積まれた段ボールに倒れ込もうとしている。思わず隼人が清美の手を掴んで引き寄せた。アップしたロングヘアがぱさっ、とほどけた。
ポフッと音を立てて、隼人の胸に清美が飛び込む。抱き寄せる体勢になってしまった。
「あ、す、すまん」
あわてて体を離そうとする隼人のワイシャツを、清美がギュッと握りしめた。目を閉じて、隼人の胸に頬を寄せる。
「ああ……男の人の匂い……ごめんなさい。少しだけでいいの。このままでいさせて……」
ぎこちないながらも、黙って隼人は清美を抱きしめた。柔らかい胸の感触を感じる。
この細い体で、どれだけの苦しみや悲しみを背負ってきたのだろう。隼人が味わった苦しみなど、清美には到底及ばない。
思わず、抱きしめる腕に力がこもる。
「ん……んん……あふぅ……きつい……戸塚くん、もう少し力を抜いて……」
「わ、ごめん。八重樫のことを思うと、つい……」
「ダメ教師と思ったでしょ。学校内でこんなこと……」
黙って隼人は清美を抱き続けた。合わせた胸から、お互いの鼓動を感じる。隼人は彼女の髪に顔を埋めた。ほのかなシャンプーと香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
「いろいろ我慢してたんだよな、八重樫。尊敬するよ」
「う、嘘よ……慰めはやめてよ」
「いや、本当さ。自信をもってくれよ……」
耳元で隼人の本音を清美にささやくと、彼女はびくっと体を震わせて、コクンとうなずいた。離婚して大きな傷を負い、独り身で生徒たちに向き合ってきた。誰かに頼りたくても誰もいなかったのだ。せめて今だけでも支えてあげたい。
たしか、さっき清美が倉庫に鍵をかけたはずだ。急にだれか来ても、慌てなくて済む。
「で、でも、私なんか……うむ……うん」
何か言おうとする清美の唇に、隼人は自分の唇を重ねた。そのまま、舌で清美の上唇を優しく撫で、ついばむようにキスをする。ワイシャツを掴んでいた清美の腕が、隼人の背中に回ってゆっくりと撫で回し始めた。
再び唇を合わせて、清美のぷりぷりとした下唇を吸い上げると、閉じていた口が緩んできた。
ちゅっ、れろっ、ちゅぱっ、ちゅちゅっ。
「んんッ……うん……ん、ん」
次第に清美の息が荒くなり、瞳が潤んできた。久しぶりのキスの陶酔感がたまらないのだろう。隼人は緩んだ清美の口に舌を侵入させ、絡め取って吸い上げた。
ぴくんぴくんと体を震わせながら、清美も隼人の舌を絡め取り、ディープキスで唾液を交換する。
濃厚なキスを浴びせながら、隼人は清美のワイシャツのボタンを上から外していく。少し抵抗する素振りを見せた彼女だったが、キスをする度に力が抜け、ついには隼人にもたれかかって来た。
倉庫には二人の荒い息とちゅぱちゅぱというキスの音が響き渡った。
「私も、先月の同窓会で話を聞いて思い出さなかったら、こうして戸塚くんを呼んでないわ」
隼人と並んで歩いてる八重樫清美は微笑する。
切れ長の目に黒縁の丸眼鏡がマッチして、美形というより愛らしい魅力をもった顔立ちであった。
ロングヘアを束ねてアップした髪型が艶っぽく、スレンダーながらメリハリの良い体型をダークグレイのスーツが強調している。清美に見とれていた隼人は、廊下の角を曲がるように促す彼女に我に返り、慌ててあとに続く。
訪問の一週間前。
かおりとの情事を終えて帰社した隼人は、同僚から小見山高校の先生から連絡があったと伝言を受け取った。
学校の飲料の仕入れについて相談があるとのことで、翌朝、清美に連絡してみると、学校生活に影響のありそうな話なのが、彼女の暗い声色でわかった。
聞けば、今まで飲料を仕入れていた会社から突然、『業績不振のあおりで商品を一斉に値上げする』と言われたそうで、予備に持っていた学校予算を大幅に超える額だという。新しく仕入れるしかなくなり、隼人に相談を持ちかけたのだ。確か、今までの仕入先は隼人の会社のライバル会社だったはずだ。
「あ、キィ先生っ、お疲れ様!!! その人が新しい旦那さん候補?」
隼人たちの前から大きな声で呼びかける茶髪の女子生徒が見えた。制服のリボンを崩してワイシャツの袖をまくり上げた、いかにも『元気印』といった感じの生徒だ。
苦笑した清美は、女子生徒に向けて、ゆっくり『違う違う』と手をふる。
「朝日オアシスの戸塚さんよ。購買部の件で来ていただいたの」
(そうか、八重樫って何年か前に離婚したんだよな……同窓会でかおりちゃんが教えてくれたっけ)
清美を呼び止めた生徒が二人に近づく。隼人をしげしげと眺めてニヤニヤ笑う。タレ目の瞳は品定めするようで、少しも笑っていない。隼人は女子生徒の視線でいたたまれない気分になって、手に下げていたカバンを胸元に引き寄せた。ここまで居心地の悪い訪問は久しぶりだ。品定めされるくらいなら、謝罪訪問の方がまだマシだ。
「へー、近くで見ると、結構イケメンじゃん。キィ先生、気をつけてね」
「典子ちゃん、やめなさい。購買部の件で来ていただいているんだから」
「はーい」
典子と呼ばれた女子生徒は清美に手を振ると、小走りに廊下を走り去った。隼人に振り向いた彼女はうつむきながら、廊下を進むよう促しながら話し始めた。
「あの娘、風間典子ちゃんは、購買部の仕事を手伝ってくれるのよ。あんな感じな子だけど、私にはもったいないくらい優秀よ」
「へぇ……ああいう呼び方するんだから、八重樫を慕ってるんだろうな」
「あの娘、ご家庭が複雑なのよ。いつも学校に一人で遅くまでいてね……」
部活に入っているわけでもないのに、遅くまで学校にいる生徒であった。だからといって、つるむ友達が多いわけでもない。
ある時は教室から窓の外をずっと眺めていたり、ある時は自販機周辺で時間をつぶしていることが少なくなかったとようだ。離婚したばかりの清美は、典子の様子が他人事と思えなくて、ある時、思い切って話を聞いたのだ。
少し話かけたあと、清美がそばに座り辛抱強く彼女の言葉をまった。
そして長い沈黙の末、典子はポツリと「家に居場所がない」と呟いたという。
「……私もバツイチでしょ。寂しい気持ちはわかるつもり。だから、渋る校長先生を説得して、『購買部の店員』として一通りの事を手伝ってもらうことにしたの。『店長』の私は、あんまりテキパキ出来る方じゃないからね」
「そうか……」
『購買部』と書かれたプレートが貼られた部屋の前で清美は立ち止まった。鍵を開けて、隼人を招き入れる。
生徒たちに品物を販売するレジカウンターの後ろにテーブルとイスが設置されている。品物の出し入れや検品などの作業用だろう。
清美はジャケットを脱いで、カウンターにそっと置いた。
薄手のワイシャツからキャミソールがはっきりと透けて見え、くびれた腰が艶めかしい。
「最初はおぼつかなかったけど、今じゃ立派な戦力よ。他の生徒とも上手くやってるみたいだし」
典子のことを話す清美も、深い寂しさと悲しみを背負っているのは同じなのだ。
慕われるのもわかる気がする。そんなことを思うと、隼人は言葉が続かなくなってしまった。
「……ごめんなさい、忙しいのに時間作って来てもらってるのに。仕入れの話よね」
「……ああ、見積だったよな。事情が事情だったから、特別価格で社内調整したよ」
カバンから見積を取り出して、テーブルに差し出す。清美はチラリと隼人を見たが、視線はすぐテーブルの上の見積に移ってしまった。
(なんか、俺と視線を合わせてくれないな)
自分になにか落ち度があっただろうか。たしか、同窓会の時も目線を合わせて話した記憶がない。
しかし、いくら気になるからといって、清美をジロジロと見続けるわけにもいかない。
「……ありがとう。この値段なら予算でなんとかやりくりできそう」
清美の感謝の言葉にひとまず安堵する。の隼人が部屋に視線を巡らせると、奥に倉庫らしきスペースがあるのに気がついた。
「そういや、この奥は倉庫になってるの?」
「そうなのよ。ちょうど良かった。物流のプロに見てもらいたいの。ド素人じゃ限度があって……」
立ち上がった清美は、怪訝な顔をする隼人を手招きして、購買部室の奥にある倉庫に入っていった。
隼人が恐る恐る入ると、照明が点灯し、清美が鍵をカチャリと閉めた。
「一応、売るものを置いているからね。施錠するのがルールなの。ちゃんと棚卸しもしてるのよ」
うず高く積まれた段ボールをひと目見て、隼人は眉間に縦じわを寄せた。
「これ、棚卸しとか品出しにすごく時間かかってない? あと、欠品も多いと思うけど」
「よくわかったね……そうなのよ」
清美は目を見開いて、隼人の顔を見た。初めてまともに顔を見られた気がする。
若手の時に倉庫整理は散々やっている。厳しい先輩に保管のノウハウを叩き込まれた。納品物を効率良く倉庫に保管して導線の無駄を減らすことで、仕事全体の効率も上がるし、在庫ロスも減る。
清美と典子でそれなりに考えたのだろうが、この倉庫は売れ筋も死に筋もごっちゃりとした積み方をしていて、ただでさえ狭い倉庫がより狭く、導線も考えられてないと思えた。いずれ何か事故が起きるだろう。
隼人はジャケットを脱いで、手近な段ボールをおろし始めた。配置を変更すれば、事故も防げるし、清美も典子も多少は作業がラクになるだろう。
「ちょっと配置を変えよう。そんなに手間かからないから」
「あ、私も手伝う……きゃっ!!」
清美が隼人の置いた段ボールに足を引っ掛けてバランスを崩した。積まれた段ボールに倒れ込もうとしている。思わず隼人が清美の手を掴んで引き寄せた。アップしたロングヘアがぱさっ、とほどけた。
ポフッと音を立てて、隼人の胸に清美が飛び込む。抱き寄せる体勢になってしまった。
「あ、す、すまん」
あわてて体を離そうとする隼人のワイシャツを、清美がギュッと握りしめた。目を閉じて、隼人の胸に頬を寄せる。
「ああ……男の人の匂い……ごめんなさい。少しだけでいいの。このままでいさせて……」
ぎこちないながらも、黙って隼人は清美を抱きしめた。柔らかい胸の感触を感じる。
この細い体で、どれだけの苦しみや悲しみを背負ってきたのだろう。隼人が味わった苦しみなど、清美には到底及ばない。
思わず、抱きしめる腕に力がこもる。
「ん……んん……あふぅ……きつい……戸塚くん、もう少し力を抜いて……」
「わ、ごめん。八重樫のことを思うと、つい……」
「ダメ教師と思ったでしょ。学校内でこんなこと……」
黙って隼人は清美を抱き続けた。合わせた胸から、お互いの鼓動を感じる。隼人は彼女の髪に顔を埋めた。ほのかなシャンプーと香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
「いろいろ我慢してたんだよな、八重樫。尊敬するよ」
「う、嘘よ……慰めはやめてよ」
「いや、本当さ。自信をもってくれよ……」
耳元で隼人の本音を清美にささやくと、彼女はびくっと体を震わせて、コクンとうなずいた。離婚して大きな傷を負い、独り身で生徒たちに向き合ってきた。誰かに頼りたくても誰もいなかったのだ。せめて今だけでも支えてあげたい。
たしか、さっき清美が倉庫に鍵をかけたはずだ。急にだれか来ても、慌てなくて済む。
「で、でも、私なんか……うむ……うん」
何か言おうとする清美の唇に、隼人は自分の唇を重ねた。そのまま、舌で清美の上唇を優しく撫で、ついばむようにキスをする。ワイシャツを掴んでいた清美の腕が、隼人の背中に回ってゆっくりと撫で回し始めた。
再び唇を合わせて、清美のぷりぷりとした下唇を吸い上げると、閉じていた口が緩んできた。
ちゅっ、れろっ、ちゅぱっ、ちゅちゅっ。
「んんッ……うん……ん、ん」
次第に清美の息が荒くなり、瞳が潤んできた。久しぶりのキスの陶酔感がたまらないのだろう。隼人は緩んだ清美の口に舌を侵入させ、絡め取って吸い上げた。
ぴくんぴくんと体を震わせながら、清美も隼人の舌を絡め取り、ディープキスで唾液を交換する。
濃厚なキスを浴びせながら、隼人は清美のワイシャツのボタンを上から外していく。少し抵抗する素振りを見せた彼女だったが、キスをする度に力が抜け、ついには隼人にもたれかかって来た。
倉庫には二人の荒い息とちゅぱちゅぱというキスの音が響き渡った。
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