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第一話 レモンイエローの車
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助手席に座る市川良治の視線は、見慣れない街並みを追っている。
カーナビのガイドに、時に従い、時に逆らって、道をスイスイ走るのは車の持ち主である、平井ゆりえだ。
ニットのタートルネックにダークブラウンのタイトスラックスというシンプルな服装。手慣れた様子で運転している。
デコルテにかかるくらいの長さだろうか。ゆるくウェーブのかかったダークブラウンの髪から、ほのかに柑橘系の香水の匂いが漂う。
乗っているのはレモンイエローの小ぶりな軽自動車。ルームミラーから下がっているモンテスラの芳香剤と交通安全のお守り、小さなドライブレコーダー以外、飾り付けられていないシンプルな車内であった。
「雲が浦でしたっけ、あの湖。平井さんは良く行くんですか?」
『ホームセンター カバの大工さん』と書かれた看板が流れていく。ゆりえはウィンカーを出して、小気味よくハンドルを回して左折した。車は3車線の大通りから、1車線の少し細い横道に入っていった。
赤いキャンディ塗装のSUVとすれ違う。良治の質問に、ゆりえの回答はない。
運転用のサングラスで表情がイマイチ読み取れず、彼女の気持ちを推し量ることが出来なかった。
いたたまれなくなり、行きがけに買ったペットボトルのコーヒーを一口含んで飲み込んだ。ブラックコーヒーがいつになく苦い。
(悪かったのは俺だけど、そんなにスネなくてもいいのになぁ……)
『マリッジネットワーク』という結婚相談所でゆりえを紹介されて数ヶ月経つ。
社会に出てから不景気続き。さっぱり先が見えない世の中で、なんとか就職できたIT企業。システム運用のエンジニアとして、自分なりに仕事を懸命にやってきた。休みの日は気が向いた時に一眼レフで風景写真を撮って、投稿サイトに出品することくらいが趣味らしい趣味の男であった。
会社で気になる人もいたし、モーションかけてくれた人もいたけど、社内恋愛はお互い面倒になるだろう、と何もしないで来てしまった。合コンにも誘われて、たまにいい感じになることもあったが、一夜の恋人以上になったことがない。
結局なんだかんだで出会いもないままに過ごしてきた結果、気がつけば30も半ばで、アラフォーに手が届きそうな歳になっている。友達のSNSのタイムラインに子供の七五三やら入学式の写真が目につくことも多くなった。
ある日、いつものようにアパートのリビングで、コンビニ弁当をビールと一緒につまんでいた時であった。テレビで流れていた単身赴任の男性が帰宅するまでの過程を特集した番組。男性が自宅の扉を開けた瞬間、飛びつく子供と奥さん。後からペットのトイプードルも加わってもみくちゃにされる様子を見て、何となく、自分も家庭が欲しいなぁ、誰かそばにいてほしいな、と思ったのである。
ものは試し、と結婚相談所に申し込んでみて、数カ月後の今、ゆりえの隣で『激安スーパー アライ』とか『ペルシャン 自動車販売』などのロードサイドの店舗を眺めているのである。
「……平井さん……変なこと聞いちゃいました?」
ゆりえは「いえ」と首を振りながら、適度な車間距離で直線道路を流している。
シートベルトがニットで強調されたバストをさらに魅惑的に浮き立たせていた。ジロジロ見るのもどうかと思うのだが、右折や左折の時に顔を向けると、自然と胸に目が行ってしまう。
周囲からはマッチングサービスを使えばいいのに、と言われたが、あえて結婚相談所にしたのは、取引先のグループ企業が運営しているので、少し利用料を安くしてもらえるのと、もう、一夜限りの恋人を求めるような気分でもなかったからである。
相談してから数週間後、物流会社で総務の仕事をしているゆりえを紹介された。
特別美形でないけど、優しげで少し陰のありそうな彼女の雰囲気に惹かれて、良治から交際を依頼したのであった。
手芸と絵画、ドライブが趣味である彼女とデートは数回。定番な「映画に一緒に行くこと」から始まって、それなりのレストランで食事したり、ゆりえの好きな画家の絵が展示されている美術館に行ったり。
最初のデートの後で、IDを交換したばかりのメッセージアプリに、ゆりえのお礼の言葉と「また、誘ってくださいね」という一言を見た時の高揚感は記憶に新しい。
会話をしていても、妙に男に媚びるわけでもないし、警戒するわけでもない。相手の趣味を理解しようとする。ちゃんと自分なりの価値観を持っている人なんだな、と良治は好意を感じ、時間を見つけてデートを重ねた。
ただ、昨年のクリスマス、アクシデントが起こった。
一緒に食事する約束を、ドタキャンするハメになったからである。
良治が担当していた顧客のシステムで大トラブルが発生したのであった。
きっかけは、良治の後輩のオペミスである。定例でない、四半期に一度の手作業が必要な対応だったことがトラブルに拍車をかけた。良治の事情を後輩が知っていたことも、トラブルを大きくしてしまった要因だ。
「良治さんは楽しんできてください」と、まだ力不足にもかかわらず、一人で作業担当を買って出たのは良いが、ミスに気づいた後輩が慌てて対応したため、ミスがミスを呼んで、良治でないと対処出来ない状態となってしまった。
後輩から泣き声混じりの状況報告を受けたのは、ゆりえが待っているレストランの手前であった。
とりあえず、彼女に事情をメッセージし「埋め合わせは必ずする」と付け加えて、舌打ちして会社に引き返したのであった。それ以来、死んだように落ち込んだ後輩を鼓舞しながら、年末までトラブルの修復と後始末に追われ、元日の初売りで賑わう街を横目にヨレヨレとした状態で帰宅した。
ドタキャンについて、ゆりえから『仕方ないです。私もこの歳なので、大変なのは想像つきますから』という返信があったものの、それ以降の良治のメッセージは既読スルーであった。
諦め気味の良治にゆりえからメッセージが来たのは、前年末のトラブルのフォローに追われている、仕事初めから数日たった昼休みであった。「クリスマスの埋め合わせ、してほしいです」の書き出しで、ゆりえの車でドライブしたいという。指定どおりに今朝、アパートの前で待っていると、サングラスをかけたゆりえが颯爽と車で迎えに来た。ドライブが趣味とは聞いていたが、いざ目の前にすると、これまでの大人しそうな彼女からイメージとのギャップに驚いた。
さらに驚いたのは、初めてのドライブデートの行き先は、あまり人気でもない、郊外の湖であることだ。投稿している写真サイトにこの湖で撮影した写真が時々掲載されている、という程度しか良治は知らない。
ロードサイドの街並みが少し寂しくなったのと同じタイミングで、道路標識に雲が浦の文字が出てくるようになった。良治は現地に行ったことはないが、そろそろ近づいているのかなと想像した。
赤信号で停車する。ため息をついた後、ゆりえがポツリと呟いた。
「……たまに……行くんです、あの湖」
「え……え?」
「さっきの……市川さんの質問です」
質問したことも忘れてしまっていたタイミングでの回答であった。
横断歩道を、買い物帰りとおぼしきおばさんがママチャリに乗って渡っている。
「いろいろ溜まった時、駐車場から湖の波を見て……アタマを空っぽにするんです」
「あんまり……言いたくなければ、ムリしなくていいですよ、平井さん……」
ゆりえはゆっくり首を振る。青信号に変わり、レモンイエローのゆりえの車が発車すると、彼女は大きくため息をついてスピードをあげていく。
「……2年くらい前かな……気持ちがグチャグチャになった時に、どこかに行きたいなと車を適当に走らせたら、雲が浦に着いたんです。それから……時々行くようになりました」
独り言のようにポツポツと話すゆりえに、良治は黙って耳を傾ける他はなかった。
「それにしても市川さん、どうしてそんなこと聞くの?」
完全ではないけど、良治もゆりえも、時々砕けた口調になる。
いきなりフレンドリーな口調で話すのは好きじゃない、と言い出したのはゆりえだった。段々やり取りを重ねて砕けた口調になれたらいいですね、と何度目かのデートで言われたことがある。
「あ……ナビとかほとんど見ないで、運転しているから、行きなれてるのかなぁって」
「クリスマスの時も……翌日、行きましたよ」
良治は顔から火が出るように感じ、ペコペコと頭を下げた。地雷を踏んでしまったかもしれない。
前を見ながら、ゆりえはクククッと笑い「冗談です」と付け加えたが、彼女の横顔からは本当に冗談かどうかは読み取ることが出来なかった。
「本当は、あのレストランでガッとやけ酒飲んで帰ろうかと思いましたけど」
「でも、平井さん、酒弱いでしょ?」
恥ずかしそうにうなずいて、ゆりえが髪をかきあげる。
「うちの両親もトシですしね。あんまりベロベロになって帰っても心配させちゃうから……2年前、あそこに行くきっかけになった時も、この前より気持ちが落ち込んで、一人で泣きたかったんです。でも飲むに飲めず、両親を心配させたくなくて……」
「2年前か……」
その頃、自分は何をしていたのだろう。大きなプロジェクトが決まって、サブマネージャーとしてプロジェクト参加した時期だったはずだ。自社側の事務局と開発側のエンジニアを兼任し、手探りながら手応えのある日々を送っていた。恋愛よりも目の前の仕事で精一杯であった。
「思うままに車走らせて、ついた雲が浦の駐車場の片隅で、思いっきり泣いてました」
自分の傷をはっきりと良治に伝えたゆりえだった。同情してほしいという口調ではない。
自分で自分に言い聞かせるような口調であった。良治にゆりえ自身を理解してもらいたいのだろうか。
「……私ね、2年前に、婚約直前の彼氏と別れたんです。雲が浦で泣いたのはそれがきっかけ」
良治は思わず、ゆりえの横顔を見た。サングラスから涙がこぼれているような錯覚に陥った。
カーナビのガイドに、時に従い、時に逆らって、道をスイスイ走るのは車の持ち主である、平井ゆりえだ。
ニットのタートルネックにダークブラウンのタイトスラックスというシンプルな服装。手慣れた様子で運転している。
デコルテにかかるくらいの長さだろうか。ゆるくウェーブのかかったダークブラウンの髪から、ほのかに柑橘系の香水の匂いが漂う。
乗っているのはレモンイエローの小ぶりな軽自動車。ルームミラーから下がっているモンテスラの芳香剤と交通安全のお守り、小さなドライブレコーダー以外、飾り付けられていないシンプルな車内であった。
「雲が浦でしたっけ、あの湖。平井さんは良く行くんですか?」
『ホームセンター カバの大工さん』と書かれた看板が流れていく。ゆりえはウィンカーを出して、小気味よくハンドルを回して左折した。車は3車線の大通りから、1車線の少し細い横道に入っていった。
赤いキャンディ塗装のSUVとすれ違う。良治の質問に、ゆりえの回答はない。
運転用のサングラスで表情がイマイチ読み取れず、彼女の気持ちを推し量ることが出来なかった。
いたたまれなくなり、行きがけに買ったペットボトルのコーヒーを一口含んで飲み込んだ。ブラックコーヒーがいつになく苦い。
(悪かったのは俺だけど、そんなにスネなくてもいいのになぁ……)
『マリッジネットワーク』という結婚相談所でゆりえを紹介されて数ヶ月経つ。
社会に出てから不景気続き。さっぱり先が見えない世の中で、なんとか就職できたIT企業。システム運用のエンジニアとして、自分なりに仕事を懸命にやってきた。休みの日は気が向いた時に一眼レフで風景写真を撮って、投稿サイトに出品することくらいが趣味らしい趣味の男であった。
会社で気になる人もいたし、モーションかけてくれた人もいたけど、社内恋愛はお互い面倒になるだろう、と何もしないで来てしまった。合コンにも誘われて、たまにいい感じになることもあったが、一夜の恋人以上になったことがない。
結局なんだかんだで出会いもないままに過ごしてきた結果、気がつけば30も半ばで、アラフォーに手が届きそうな歳になっている。友達のSNSのタイムラインに子供の七五三やら入学式の写真が目につくことも多くなった。
ある日、いつものようにアパートのリビングで、コンビニ弁当をビールと一緒につまんでいた時であった。テレビで流れていた単身赴任の男性が帰宅するまでの過程を特集した番組。男性が自宅の扉を開けた瞬間、飛びつく子供と奥さん。後からペットのトイプードルも加わってもみくちゃにされる様子を見て、何となく、自分も家庭が欲しいなぁ、誰かそばにいてほしいな、と思ったのである。
ものは試し、と結婚相談所に申し込んでみて、数カ月後の今、ゆりえの隣で『激安スーパー アライ』とか『ペルシャン 自動車販売』などのロードサイドの店舗を眺めているのである。
「……平井さん……変なこと聞いちゃいました?」
ゆりえは「いえ」と首を振りながら、適度な車間距離で直線道路を流している。
シートベルトがニットで強調されたバストをさらに魅惑的に浮き立たせていた。ジロジロ見るのもどうかと思うのだが、右折や左折の時に顔を向けると、自然と胸に目が行ってしまう。
周囲からはマッチングサービスを使えばいいのに、と言われたが、あえて結婚相談所にしたのは、取引先のグループ企業が運営しているので、少し利用料を安くしてもらえるのと、もう、一夜限りの恋人を求めるような気分でもなかったからである。
相談してから数週間後、物流会社で総務の仕事をしているゆりえを紹介された。
特別美形でないけど、優しげで少し陰のありそうな彼女の雰囲気に惹かれて、良治から交際を依頼したのであった。
手芸と絵画、ドライブが趣味である彼女とデートは数回。定番な「映画に一緒に行くこと」から始まって、それなりのレストランで食事したり、ゆりえの好きな画家の絵が展示されている美術館に行ったり。
最初のデートの後で、IDを交換したばかりのメッセージアプリに、ゆりえのお礼の言葉と「また、誘ってくださいね」という一言を見た時の高揚感は記憶に新しい。
会話をしていても、妙に男に媚びるわけでもないし、警戒するわけでもない。相手の趣味を理解しようとする。ちゃんと自分なりの価値観を持っている人なんだな、と良治は好意を感じ、時間を見つけてデートを重ねた。
ただ、昨年のクリスマス、アクシデントが起こった。
一緒に食事する約束を、ドタキャンするハメになったからである。
良治が担当していた顧客のシステムで大トラブルが発生したのであった。
きっかけは、良治の後輩のオペミスである。定例でない、四半期に一度の手作業が必要な対応だったことがトラブルに拍車をかけた。良治の事情を後輩が知っていたことも、トラブルを大きくしてしまった要因だ。
「良治さんは楽しんできてください」と、まだ力不足にもかかわらず、一人で作業担当を買って出たのは良いが、ミスに気づいた後輩が慌てて対応したため、ミスがミスを呼んで、良治でないと対処出来ない状態となってしまった。
後輩から泣き声混じりの状況報告を受けたのは、ゆりえが待っているレストランの手前であった。
とりあえず、彼女に事情をメッセージし「埋め合わせは必ずする」と付け加えて、舌打ちして会社に引き返したのであった。それ以来、死んだように落ち込んだ後輩を鼓舞しながら、年末までトラブルの修復と後始末に追われ、元日の初売りで賑わう街を横目にヨレヨレとした状態で帰宅した。
ドタキャンについて、ゆりえから『仕方ないです。私もこの歳なので、大変なのは想像つきますから』という返信があったものの、それ以降の良治のメッセージは既読スルーであった。
諦め気味の良治にゆりえからメッセージが来たのは、前年末のトラブルのフォローに追われている、仕事初めから数日たった昼休みであった。「クリスマスの埋め合わせ、してほしいです」の書き出しで、ゆりえの車でドライブしたいという。指定どおりに今朝、アパートの前で待っていると、サングラスをかけたゆりえが颯爽と車で迎えに来た。ドライブが趣味とは聞いていたが、いざ目の前にすると、これまでの大人しそうな彼女からイメージとのギャップに驚いた。
さらに驚いたのは、初めてのドライブデートの行き先は、あまり人気でもない、郊外の湖であることだ。投稿している写真サイトにこの湖で撮影した写真が時々掲載されている、という程度しか良治は知らない。
ロードサイドの街並みが少し寂しくなったのと同じタイミングで、道路標識に雲が浦の文字が出てくるようになった。良治は現地に行ったことはないが、そろそろ近づいているのかなと想像した。
赤信号で停車する。ため息をついた後、ゆりえがポツリと呟いた。
「……たまに……行くんです、あの湖」
「え……え?」
「さっきの……市川さんの質問です」
質問したことも忘れてしまっていたタイミングでの回答であった。
横断歩道を、買い物帰りとおぼしきおばさんがママチャリに乗って渡っている。
「いろいろ溜まった時、駐車場から湖の波を見て……アタマを空っぽにするんです」
「あんまり……言いたくなければ、ムリしなくていいですよ、平井さん……」
ゆりえはゆっくり首を振る。青信号に変わり、レモンイエローのゆりえの車が発車すると、彼女は大きくため息をついてスピードをあげていく。
「……2年くらい前かな……気持ちがグチャグチャになった時に、どこかに行きたいなと車を適当に走らせたら、雲が浦に着いたんです。それから……時々行くようになりました」
独り言のようにポツポツと話すゆりえに、良治は黙って耳を傾ける他はなかった。
「それにしても市川さん、どうしてそんなこと聞くの?」
完全ではないけど、良治もゆりえも、時々砕けた口調になる。
いきなりフレンドリーな口調で話すのは好きじゃない、と言い出したのはゆりえだった。段々やり取りを重ねて砕けた口調になれたらいいですね、と何度目かのデートで言われたことがある。
「あ……ナビとかほとんど見ないで、運転しているから、行きなれてるのかなぁって」
「クリスマスの時も……翌日、行きましたよ」
良治は顔から火が出るように感じ、ペコペコと頭を下げた。地雷を踏んでしまったかもしれない。
前を見ながら、ゆりえはクククッと笑い「冗談です」と付け加えたが、彼女の横顔からは本当に冗談かどうかは読み取ることが出来なかった。
「本当は、あのレストランでガッとやけ酒飲んで帰ろうかと思いましたけど」
「でも、平井さん、酒弱いでしょ?」
恥ずかしそうにうなずいて、ゆりえが髪をかきあげる。
「うちの両親もトシですしね。あんまりベロベロになって帰っても心配させちゃうから……2年前、あそこに行くきっかけになった時も、この前より気持ちが落ち込んで、一人で泣きたかったんです。でも飲むに飲めず、両親を心配させたくなくて……」
「2年前か……」
その頃、自分は何をしていたのだろう。大きなプロジェクトが決まって、サブマネージャーとしてプロジェクト参加した時期だったはずだ。自社側の事務局と開発側のエンジニアを兼任し、手探りながら手応えのある日々を送っていた。恋愛よりも目の前の仕事で精一杯であった。
「思うままに車走らせて、ついた雲が浦の駐車場の片隅で、思いっきり泣いてました」
自分の傷をはっきりと良治に伝えたゆりえだった。同情してほしいという口調ではない。
自分で自分に言い聞かせるような口調であった。良治にゆりえ自身を理解してもらいたいのだろうか。
「……私ね、2年前に、婚約直前の彼氏と別れたんです。雲が浦で泣いたのはそれがきっかけ」
良治は思わず、ゆりえの横顔を見た。サングラスから涙がこぼれているような錯覚に陥った。
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