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本編

【閑話】執務室side第2騎士団長ルルス

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「ふぅー…流石に疲れたな」


深夜の人気ひとけの無くなった第2聖騎士団の詰所の執務室で溜まった事務作業に追われ疲れて目頭を指先で揉みほぐしていると扉をノックする音が聞こえ開かれる。


「まだ残って作業していたんですか?」


入ってきたのは副団長のフェリクスだった。少し眉間に皺を寄せ怒っている雰囲気を醸し出しながら近づいてきて俺が手に持っていた書類を奪い取る。


「おい、何するんだ」

「団長、ここ数ヶ月まともに休息を取っていないでしょう?目にクマができています。今日はもう仕事は終わりです、帰りますよ」


そう言ってフェリクスはテキパキと机の上に散らかった書類をまとめ、帰り支度を始めた。もちろんまだ帰るつもりのなかった俺はフェリクスに片付けられる書類に手を伸ばし奪い取ろうとしたが抵抗虚しく呆気なく綺麗にまとめられてしまった。


「おい、勝手に片付けるなっ」


つい大声をだし、書類を片付け棚に戻すフェリクスの手を掴んだら勢いよく掴み返され俺は壁に押し付けられていた。

いつもの俺なら遅れをとることもなくすぐに反応していただろう、しかし睡眠不足なのか空腹だったからなのか、俺は簡単に腕を絡め取られて頭の上で両腕をまとめるように拘束された。


「なっ!?…離せっおい!」


抵抗するがビクともしない。足で蹴り上げようとしたが俺の腕を拘束していないもう片方の手で簡単に受け止められいなされた。

どうにか拘束から逃れようとしてもがいてみても全く力をゆるめる気配のないフェリクス。むしろ先程より何か怒気を含んだ顔で俺を見下げていた。


「ルルス、いい加減にしろ…」

「…っ!?」

「俺はいつも言ってるよな?1人で抱え込むのはやめろと、俺の事も頼れと…」

「そ、それは…」


フェリクスの口調が変わった…それを聞いて俺は本気でフェリクスが怒っているのだと再確認した。


「責任感が強く何事にも一生懸命に真面目に取り組むのがルルスのいい所だ…だからこそ皆をまとめ導く騎士団長という役を任されていると思う。だが、それを全部1人で抱え込んで身体を壊したら元も子もない。そんなルルスの補佐をするための副団長…それが俺の役だ。」


フェリクスの切実な言葉に俺は強ばっていた身体の力が抜けてしまった。それを支えるようにフェリクスが優しく抱きしめる。


「ルルス、俺はお前が大切なんだ」

「フェリ…クス…」


フェリクスは俺のやつれた頬を優しく撫でながら額、瞼、鼻先、頬、唇…へとキスをした。


「聞き分けのないルルスにはお仕置きが必要だな」


そう言ってフェリクスは俺を抱き上げ執務室にあるソファへ押し倒した。



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