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本編
アサヒの行方sideレオン
しおりを挟む「アサヒっ!!!」
あと少しで手が届くと言うところで眩い光を放ちその光にのみ込まれるようにしてアサヒは消えた。
捕まえようと伸ばした手は空を切る。
どうしてこんな事に…
もう少し早く駆けつけていれば、見学室なんて連れてこないでずっと一緒に行動していれば…俺はアサヒの消えた場所を呆然と見つめながら後悔する。
1人項垂れていると俺の後を追ってきていたダルイズと第2、第3の騎士団長と副団長が駆けつけた。
「おいレオン!どうしたんだっ!大丈夫か!?」
「兄上!突然走り出して何かあったのですか!?」
虚空を見つめる俺に気づいたダルイズがすぐさま駆け寄り両肩をつかみ揺さぶる。弟のフィリクスも俺の様子のおかしさに心配の声をかける。
「アサヒが…消えた…」
「はぁ!?どういう事だよ!!」
説明しようにも俺もそんなに詳しく分からないでいた。ただアサヒに送ったイヤリングから俺に熱い魔力が流れ込み咄嗟に走り出したのだ。
何かアサヒの身に危機が迫っていると思って俺は全速力で走り出し見学室の扉を開けた、そしたらアサヒの身体が物凄い光に包まれて今にも消えそうだった…そう、それが俺の知っている全てだった。
俺に説明させることを諦めたダルイズは先程までアサヒの傍で仕えていたセバスに視線を向け「ここで何が起こったんだ」と問い詰めた。
セバスは苦しそうな顔をしながらこの場で起こった悲劇を話し始めた。
ご令嬢と楽しく和やかに会話していた所を無断で入ってきた王女に滅茶苦茶にされた事、王女からアサヒに向けての罵詈雑言などここで起こった事をセバスが説明し終わった途端、事の発端であるわがまま王女が喚き散らし始めた。
「私のせいだっていうの!?私は悪くないわ!あの人が勝手に暴走して消えただけでしょ!!それにレオン様の邪魔して迷惑かけてたのは本当の事でしょ!!むしろ良かったじゃない?ここから消えたってことは元の世界に帰れたかもしれないのだから!!感謝して欲しいくらいだわ!!ね?レオン様もそう思うでしょ?」
プツンー…
俺の中の何かが切れた音がした…
「…れ」
「レオン様?なんて仰ったんですか?」
悪びれもなく甘ったるい声で俺の名前を呼ぶ女に向かって俺は今の思いを全てをぶつけた。
「黙れっ!!!!!!!」
声を発したと共にぶわわっと殺気が漏れだし部屋中を埋め尽くす。
「まずいっ!レオン落ち着けっ!!」
近くにいるはずのダルイズが何が叫んでいるが今の俺には何も聞こえない。ただ口を動かし何かを言っているだけに見える。
俺の殺気に当てられて顔を青くしガタガタと震えて床にへたり込む女から視線を外さない。
今もなお溢れ続ける殺気で部屋の中にいた令嬢たちにも被害が出始めた。
「急いでご令嬢たちを部屋から避難させろっ!!」
いち早く動いたのは第2聖騎士団団長だった。事態が最悪な方向に向かっていると察していたのか早い段階で応援を呼んでいたらしく、次々と気絶した令嬢たちが騎士によって運ばれこの部屋から避難していく。
他にも第3の騎士団長と副団長は魔法で俺の殺気が部屋の外へ漏れでないように結界を張り巡らせていた。
「お前だけは…お前だけは許さない…」
俺の中で黒い靄がどんどん広がっていき飲み込まれ爆発する寸前…
ふわっと俺の身体を包み込むように優しくて暖かい愛おしい人の魔力が流れ込んだ。
身体がビクンと反応し先程まで漏れ出していた殺気が一瞬のうちに霧散すると目の前にへたり込んでいた女が泡を吹きながら気絶した。
それを咄嗟にダルイズが受け止めながら突然殺気を止めた俺に驚きながら見つめる。
「レ、レオン…どうし…」
「あ…あぁ…」
ダルイズが話終わる前に俺は嗚咽を漏らしながら大粒の涙を流しその場に膝を着いた。
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