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本編

波乱の婚約パーティ

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レオンさんが魔獣討伐から帰ってきて10日がたち、本日いよいよ僕たちの婚約パーティが開かれる。


ケリーちゃんに作ってもらった衣装を着ていざ王城へ馬車に乗り込んだのはいいんだけど…







「…レオンさんはかっこいい黒の軍服なのに、どうして僕はコレなんですか」

「すごく似合っているぞ?」





そんなレオンさんの言葉にムッとして眉間に皺を寄せ頬を膨らませた顔で見つめても「そんな顔も可愛いな」なんて言い返してくるし全然反省してない。



これからこの姿で各国の重鎮たちに会うと思うとはぁと僕はため息をこぼした。



そう、僕は今ドレスを身につけている。何故こんなことになったのかと言うとレオンさんがケリーちゃんと一緒になって僕の衣装をドレスにしてしまったからだ。



まさか、ドレスになるなんて…僕は男なんだから普通タキシードみたいなやつだと思うじゃん!!


服にこだわりがなかった僕は婚約衣装選びの時に「おまかせで」と一言レオンさんとケリーちゃんに言ってしまったのがまずかった…。






当日の朝、ケリーちゃんから衣装を渡され初めて僕の衣装がドレスと分かって呆然としていたら「アサヒちゃんが着るドレスだから腕によりをかけて作ったわっ!最高に素敵なドレスが作れて大満足よっ♡」なんてケリーちゃんは言ってたけど僕は全然、満足してない…。



驚きすぎてそのまま呆然としていたらケリーちゃんとメイドさん達にあれよあれよという間に着替えさせられ軽くメイクをさせられていた。もう最後の方は抵抗虚しくされるがままになっていた。




僕の気分なんてお構い無しに馬車は進み王城に着く。ドレスに合わせて靴もヒールを履いているから歩きづらい。そんな僕をさりげなくエスコートしてくれるレオンさん。





くそぉ…かっこいい




僕色の軍服に身を包みいつもと違う髪型のレオンさんに見とれていたのをまだ怒っていると勘違いしたのか凛々しい眉毛を八の字に下げ僕に目線を合わせる。






「アサヒ、そろそろ機嫌を治してくれ」





しゅんとした顔のレオンさんに見つめられたら許すしかないじゃないか…ほんと僕はレオンさんに甘いなぁ。







「…次は許しませんからね」

「あぁ、ありがとう」






恥ずかしくてぎゅっとレオンさんに抱きつきながら真っ赤になった顔を隠す。それに嬉しそうな声で笑い抱き締め返してくれるレオンさん。






「さぁ、パーティ会場へ行こう」

「はい」





手を取り合って長い絨毯の廊下を進み会場へ向かう。




数分歩いた先に大きな観音扉がある部屋に着いた。中は人がいるのかざわざわと賑わっている。緊張で手に力が入りレオンさんの手をきつく握りしめてしまったが、レオンさんはその手を自分の口元へ持っていき、僕の手の甲にキスをする。






「大丈夫だ、俺がいる」

「…はいっ」






レオンさんの合図で軍服を着た騎士の人がゆっくりと扉を開ける。






ざわざわしていた部屋の中が一瞬にして静まり返り僕たちに視線が一気に集まる。そんな中をドキドキしながらレオンさんと歩みを進める。



正面には国王陛下がいてにこやかに僕たちを見て笑って迎え入れてくれている気がする。そしてそのまま真っ直ぐ歩き国王陛下に挨拶をする。







「国王陛下、本日はこのような披露宴を私たちのために開いていただきありがとうございます」

「ありがとうございます」

「今日は祝いの場だ、礼はいらない」





にこやかな表情で僕たちをお祝いしてくれる国王陛下に嬉しくてちょっと涙が出た。宰相も元帥閣下からも祝いの言葉を貰ってとても嬉しかった。





こうして国王陛下との挨拶は無事終わり各国の重鎮たちとも挨拶を交わす。



一通り挨拶をしおわってやっと落ち着けると思ったら急に疲れが出てきてフラついてしまった。だけどレオンさんがスマートに支えてくれて近くにあったソファに腰をかける。







「大丈夫か?疲れただろう」

「はい少し…でも少し休めば大丈夫です」

「もうあらかた挨拶は終わったからここで少し休もう」

「すみません」

「気にするな、アサヒはこういった場は初めてだろう。ゆっくり慣れていこうな」

「はい、ありがとうございます」






僕の腰に手を回し隣に座るレオンさんは優しく僕のほっぺたを撫でてくれるけど、少しくすぐったくて笑っちゃう。



そんな僕たちの甘々なやり取りをみてそこかしこにきゃあきゃあとご夫人たちの黄色い悲鳴が聞こえるが、2人だけの世界に入っていた僕たちには聞こえていなかった。







「ニルス侯爵のあの甘い声聞きまして!?」

「いいえっ、初めて聞きましたわっ!」

「絵になる2人ですわね!」

「ほんとに!黒の君の笑顔も素敵ねっ」

「…私、2人のファンクラブ作ろうかしら」

「「「「いいわねっ!」」」」













そんな甘々な雰囲気で2人の世界に入っていた僕たちは鋭い瞳でこちらを見つめる男がいることにも気づいていなかった。






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