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本編
魔獣討伐遠征2 sideレオン
しおりを挟む魔獣討伐2日目、テント入口の隙間から朝日が差し込み目を覚ます。いつもより浅い眠りで少し体の疲れが残っているが何とかなるだろう。
顔を洗うためタオルと桶を持ちテントを出るとダルイズが駆け寄ってくる。
「おはよう…ってなんだ寝不足か?」
「…少しな」
そう答えるとダルイズが少し苦笑いをする。それを横目に水魔法で桶に水を張り顔を洗うとさっぱりして頭が少しスッキリした。
「まぁなんとなく寝不足の理由は分かってるが…今日は例のエンペラースネークを討伐予定なんだ、しっかりしてくれよ」
「あぁ大丈夫だ」
タオルで顔を拭きながらダルイズと話していると「おーいっレオン!」と遠くから名前を呼ばれそちらに顔を向けると大股で近づいてくる大男バルサが手を振りながらやってくる。
「…朝からうるさいヤツだな」
「ははっ…俺は朝からバルサに捕まって酒を飲まされそうになった…」
「飲んだのか?」
「飲むかっ!」
そんなこと話しているうちにバルサが俺たちふたりのそばによってくる。
「おうおうっ!やっと起きたか!どうだ1杯飲むか?」
そう言うと手に持ってた酒瓶を目の前にずいっと出してくる。
「飲むわけないだろう」
「けっ!つれねぇ野郎だなっ」
呆れた顔で断るとバルサはムッとした顔で舌打ちする。
そもそも朝から酒を飲むヤツがどこにい…いた、目の前にいた。
はぁと溜息をつきながら今日の予定をバルサに告げる。
「あと1時間したらエンペラースネーク討伐に森に入る。先発隊の方も準備しといてくれ。」
「おう、了解した。じゃあちょっくら連絡してくる」
バルサは踵を返して来た道を大股で帰っていく。もちろん片手に持った酒瓶を煽りながら。
1時間後…準備を整え森を奥深く進む。
「昨日はエンペラースネークを目撃したのか?」
俺の隣で警戒しながら進むバルサに聞くと険しい顔をしながら答えてくれた。
「あぁ、もう少し先に入ったところだ」
バルサが指さす方を見ると確かに巨大な生き物が木々をなぎ倒したと思われる少し開けた場所があった。
「ここがヤツの幾つかある寝床のひとつだ」
「…いまはいないようだな」
「アイツは警戒心が強いからな…俺たちに気づいて移動した可能性もある」
「あぁ、その可能性が高いな」
2人揃って渋い顔をしながらこれからの作戦をたてる。
「バルサ、お前の索敵魔法で探せるか?」
「おう、やってみる」
バルサが短く呪文を唱え集中して数秒後…
「おっ、みつけた」
「どこだ」
「ここから東に7キロ行ったところだ」
「よし…みんな聞け!エンペラースネークの場所が分かった、ここから東に7キロだ、気を引き締めてろ」
「「「「「はっ」」」」」
討伐隊に喝を入れ直し気を引き締めさせる。
「バルサ、お前が先頭で案内だ。ダルイズは最後尾から周囲警戒、残りのものはいつでも戦える準備をしておけ」
部隊に指示を出し討伐目標のエンペラースネークの元へ歩みを進める。
10分後…足音を殺し気配遮音の魔法を部隊全体にかけてエンペラースネークが潜んでいる場所まで辿り着く。
巨体をとぐろ状に巻目を閉じている。エンペラースネークは音にも敏感でここからは念話で話す。
(よし、ここで二手に別れて挟むぞ。精鋭部隊とバルサはダルイズの指揮のもと正面からヤツの気を引いて時間を稼いでくれ、俺は裏から回って仕留める)
(分かった…だが攻撃してきたら反撃していいよな?)
戦いたくてしょうがないと言う顔をしたバルサが言ってくる。
(ある程度ならいたしかない)
(そうこやくっちゃなっ!)
(ダルイズ…コイツが暴走しないように見張っとけよ)
(…分かったよ)
仕事が増えたと文句を垂れ流しているダルイズを無視して作戦を部隊全体に伝える。
(よし、作戦始めっ!!)
俺の掛け声で一斉に精鋭部隊とバルサ、ダルイズがエンペラースネークの前に飛び出す。突然の奇襲でエンペラースネークが怯んでいる間に俺は走り背後に回る。
そこからは怒涛の展開だった。
バルサたちの挑発にエンペラースネークが激怒し厄介な毒霧を吐き出した。吸い込めば10分と経たないうちに死に至る猛毒だ。
だが相手が悪かった。バルサの適正魔法は風で、たちまち毒霧を散らす。
エンペラースネークは毒霧が効かないと分かるとその巨体を使って攻撃をし始めたが、難なくその巨体から繰り出される攻撃を躱すバルサにダルイズ。
「レオンっまだか!?」
Aランク魔獣を一撃で倒すためにはそれなりに威力がある最上位魔法でなければならない。だか最上位魔法は構築に時間が掛かる。
あと少しで完成のところでダルイズが俺に聞く。
「あと少し…できたっ皆離れろっ!!」
「撤退っ!エンペラースネークから離れろっ!」
俺の言葉を聞きダルイズが指示を出す。皆が一斉に離れたのを見て俺はエンペラースネークに向かって走り出し魔法を放つ。
【黒雷槍っ!!(ブラックサンダーランス)】
俺の手から放たれた黒い稲妻を纏って雷出できた5本の槍がものすごい速さでエンペラースネークに突き刺さっていく。
背後から気配を消して近づいていた俺に気づくのが遅れたエンペラースネークは俺の放った魔法に直撃した。
「ぎゃるぁああああああああぁぁっ」
エンペラースネークはけたたましい叫び声を上げながら感電し身体を痙攣させる。
数秒後、黒焦げになって感電死したエンペラースネークが大きな音を立てて倒れ込む。
「エンペラースネーク討伐!!!!」
「「「「「うおおおおおぉぉぉっ!」」」」」
ダルイズが部隊全体に聞かせるように討伐完了の声を上げるとたちまち男たちの雄叫びが森に響き渡った。
その後はエンペラースネークを解体し魔石を取り出したりと事後処理をして野営地に戻る。
野営地に残っていた者たちにも無事討伐完了したことを伝えると歓声が沸き起こった。
「長引くと思ったが案外早く終わったな」
「長引くよりマシだろう」
「そりゃそーだけどよ、なんか物足りねぇぜ」
暴れ足りないのか酒を片手に不完全燃焼とばかりに文句を垂れるバルサ。
そんなバルサを無視して俺は自分のテントへ向かう途中ダルイズと合流する。
「明日早朝に野営地を片付けて昼前には帰城出来るよう準備しておけと部隊に伝えておいてくれ」
「分かった。それにしても良かったな早めに片付いて」
「あぁ、ほんとに」
そんな俺をダルイズはニヤニヤした顔で見てくる。
「なんだその顔は」
「いやぁー?別にぃー?」
バカにしたような顔でニヤつかれて流石にムカついて言い返す。
「お前だってアリルが恋しいくせに」
「なっ!?」
思わぬ俺の反撃でニヤついていた顔が一変し慌てふためくダルイズ。図星を突かれ一気に形勢逆転した。
ダルイズは顔を真っ赤にして「うるせぇっ」と叫びながら自分のテントに向かって走り去って行く。
言い返したら少しスッキリした。
テントに入りある程度荷物をまとめ帰り支度の準備をしながらアサヒを思う。
早くこの腕いっぱいに抱きしめたい。
最終日の夜、アサヒのことを考えるとなかなか寝付けず結局朝まで起きて2日連続で徹夜する事となった。
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