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本編

ダルア王国と尊い色を持つ人間

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謁見が終わりレオンさんと一緒に部屋を出ようとした時、国王陛下に呼び止められ違う個室に案内された。そこには謁見の間にいた宰相と元帥閣下が待っていた。




国のトップが勢揃いなんだけどぉ…
胃がキリキリするぅ…




緊張しきった謁見が終わり安心したのは束の間、謁見より緊張してきたよぉ…




ローテーブルをコの字型に囲んでいるソファに座るように言われレオンさんと隣で座る。対面のソファには宰相と元帥閣下が座り1人用ソファに国王陛下が座り僕に向かって話しかけてくる。



「アサヒ殿…貴方は異世界から来たのではないか?」

「…えっと…その」

「安心してくれ。ここにいる者たちは、異世界のことを知っている。心配せずとも大丈夫だ」




優しい笑顔を向けられ緊張が少しほぐれる。




「…はい。僕はこことは違う世界、地球という星の日本と言う所からきました」

「…日本!?まさか尊き色を持つ方と同じ国とは…」

「…尊き色をを持つ方?」




僕が聞き返すと国王陛下はこくんと頷いてダルア王国国王だけに伝わる昔話を話してくれた。




「あぁ、はるか昔にこの王国に異世界の日本というところから降り立った人間がいた。その方はこの世界に害のある魔獣を退治し、膨大な魔力で怪我をおった者に治療を施してくれたのだ…その方の容姿は美しく黒眼黒髪…アサヒ殿と同じであったとされている。なのでこの王国では黒が【尊い色】になって崇拝されておる。…名前は確か…【レン・タカナシ】」



タカナシ レンさん…日本人だ。名前的に男の人かもしれない…



同じ日本人がこの世界に来ていたことを知り興奮してちょっと涙が溢れたら、レオンさんが大丈夫か?と優しく涙を拭ってくれた。それを見た向かに座る元帥閣下が目を見開き驚いている。宰相も「あのレオン団長が…」なんて言ってたらしいけど僕は自分のことでいっぱいいっぱいだ。



僕は1番気になっていたことを国王陛下に聞いてみる。





「…その人はその後どうなったのでしょうか?」

「その方はこの世界で結婚し子宝にも恵まれ末永く幸せに暮らし続けたそうだ。…残念ながら帰る方法や魔法は無いと記されている」



そっか…もう帰れないのか。日本に帰れなくて悲しいはずなのに涙が出ない…なんでだろう…



もっと気持ちが揺らぐかと思ったけど案外落ち着いていて自分でも驚くほど冷静だ。こちらの世界に来たばかりの時はどうしたら帰れるだろうと思っていたけど今はそんなに帰りたいと思うことが無くなっていた。たぶんレオンさんのおかげだと思う。見ず知らずの僕を保護してくれて愛して必要としてくれる。




ふと背中を撫でる感触があり隣に座るレオンさんを見ると…凛々しい眉毛を下げて何も言わず僕の背中を優しく撫でてくれる。





嬉しくてドキンドキンと心臓が高鳴る。あぁ、この人と一緒じゃないと僕はもうダメになってしまったんだ…




知り合ってたった数日なのにもう僕の心にはレオンさんで溢れかえっている。たとえ帰れなくてもレオンさんがいれば僕はもう大丈夫だ。



「もう僕は帰れないのですね…分かりました。貴重な情報ありがとうございます。」




国王陛下が申し訳なさそうに「そうか。情報が役に立ちよかった」と言ってくれて僕は頷くと宰相が話しかけてきた。




「アサヒ殿…何かあれば我々を頼ってください。いくらでも力を貸しましょう。」

「はい、ありがとうございます。」




宰相様と話していると元帥閣下は険しい顔をしながら僕たちに話しかける。




「アサヒ殿…不安にさせるつもりはないが貴方の持つ黒…その色は国王陛下も言ったが我が王国では崇拝の対象になる。髪の色だけではなく瞳の色までとなると【神の使い】もしくは【精霊の愛し子】も持つ者などと言われ神格化させられ、貴方の意に背かないことを強要させるような輩が出てくるかもしれない。他にも敵国や神殿などから攫われ囲われる可能性がある。」





攫われたり囲われたり…なんか僕すごいピンチじゃない!?髪と眼が黒いってだけで神様扱いなの?




それより元帥閣下が気になることを言った




「【神の使い】【精霊の愛し子】ってなんですか?」




聞き返すとすかさずレオンさんが教えてくれた。




「この世界には【加護】という神や精霊からの祝福がある。そして加護にもランクがありその最上位に【神の使い】【精霊の愛し子】と言う加護があるんだ。」




僕はへぇ、なるほどなと頷く。




「【神の使い】はこの世界を創造した神が自ら祝福を与える事、【精霊の愛し子】とは創造神の眷属の精霊から祝福を受けることです。まぁこの加護を与えられる人間はほとんどおりません。 」




補足で宰相が教えてくれる。




僕にも分かりやすく説明してくれたので加護を理解できた。



「とにかく、貴方はこの王国にとって特別な方だ。あまり1人で行動しない方がいいだろう。」



元帥閣下がそう言って王宮で護衛を付け暮らすことを提案してくれたらレオンさんが



「それには及びません。私がアサヒを守るので大丈夫です。」



僕を含めその部屋にいる全員が一斉にレオンさんをみる。元帥閣下なんて口をぽかんと開けて驚いてる。




「まさか、お前がそのようなことを言うなんて…」

「これは驚いた。必要最低限でしか他人に興味を示さなかったのに…」



元帥閣下と宰相が「あのレオンが…」「あの団長が…」と驚く。


「はっはっはっ!どういう風の吹き回しだ?まぁいい、レオンならアサヒ殿を守れるだろう。任せて大丈夫か?」

「はい、この命に代えましても守ってみせます。アサヒは私にとって大事な人なのです。」



国王陛下が笑ってレオンさんに僕の保護を命じ、レオンさんが受ける。


その後は少しこの世界、国の話をしてお開きになった。心身ともに疲れきった僕は馬車の中でレオンさんの肩を枕にしながら寝落ち、目が覚めたのは次の日の朝でレオンさんの腕の中だった。




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