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未踏の大地へ(青年編)
女神様、ドッキリ返しですか
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とてもとても体が調子良い。今までにないくらいに。
そんなスーパークールとなった俺は、精霊たちと朝の交流をしていた。
新たに生まれ変わった俺のことを精霊たちはとても喜んでいた。それに精霊たちも何気にいつもよりもよりピカピカしているような気がする。
おそらく彼等も俺と同じくパワーアップしたのかもしれない。
「しかし驚いたよな。アンジュ達とそんな昔からの付き合いだったなんて」
「まぁそうですね。でも女王とは違って悠太様は危なっかしくってほっとけなかっただけですけど」
アンジュがそう言うとシェリー達も同意を示すように何度もうなずいていた。
すると皆でヒソヒソ話を始め、俺を見て何かを思い出したのか一斉に吹き出して笑った。
おい、何を話していたのか知らないが人の顔を見て笑うのはやめろ。失礼にも程があるだろうが。
「申し訳ありません。けれど思い返すとおかしくて」
ウェンリィが謝ってくれたが、その表情は必死に笑いを堪えていて肩が小刻みに震えていた。
「ところで悠太様。あの洞穴の皆をあの場所から解き放っていただけませんか」
ん、解き放つ?
ユキナからそう言われるも、その方法が分からない。手で軽く口を隠し思考に耽るが全然思いつかない。
「大丈夫です。行けばなんとかなりますから」
「ほんとか。まぁユキナがそう言うなら信じるけど、もし駄目だった時は絶対に馬鹿にするなよ」
「私たちが悠太様を馬鹿にした事なんて無いはずですけど」
おい、シェリー。しれっと嘘をつくな。ほんとクロノアといい、精霊は息を吐くように嘘をつくな。
「我らが王よ。それはあまりにも酷くありませんか。私たちがこんなにも、あなた様に全てを捧げているのに」
おいおいと小さく声にだして嘘泣きを始める名女優アンジュ。その悲哀に満ちた演技は圧巻だった。
「おい、小芝居とはいえない迫真の演技はやめろ。誰かに見られたら俺が泣かせているような誤解されるだろうが」
「いえ、泣かせたのは悠太様ですから」
一斉に皆が口を揃えて反論した。
このままでは拙いと思い、話を変える事にした。
「なあ、でも原初の神様の眷属だったならなんでアンジュ達は神様にならなかったんだ。神様になって俺を支える選択肢だってあっただろう」
「全然。しがらみが増えるだけで、つまんないじゃないですか」
「そうそう。私たちは面白おかしい生き方の方が好きですから」
シェリーにマナリアが同意すると、この場にいる皆全てが同意を示し、一気に場が賑やかになった。
結局、どこまでいっても精霊はわがまま気まままな存在なんだな。
そんな風に納得しているとユキナがこう付け加えた。
「それに私の同胞もそうですが、神になっても楽しそうじゃありませんからね。それよりも悠太様と共に在る方が何倍も幸せです」
「ですよね。神になんてなったら悠太様のお側には居られませんし」
ウェンリィはそう言って、俺の肩に座って頬にもたれ掛かった。
ったく、本当に甘えん坊だな。
まっ、しょうがないか。
こんな駄目な俺をずっと見捨てずに支えてくれてたんだ。このくらいで喜んでくれるならば安いものだ。
「あっ、ウェンリィが抜け駆けした!」
そのシェリーの言葉が合図となり、この場にいる全ての精霊たちが俺に纏わりつく。
うん、たぶん傍から見たら俺、かなりピカピカしてんだろうな。
なんかクールとは程遠いけど仕方がないか。
◇
「だぁっ! な、なんで……」
精霊たちと遊び過ぎて少し遅れて朝食を摂ろうと食堂に入ると、なんとそこに創造神様とあの恐怖の時の大神様が居た。しかも師匠と先生までもが、さも当然のように食事をしている。
「あ、おはよう。随分と遅いじゃないか。あ、先に戴いていたよ」
「おう、馬鹿弟子。そんなところで阿呆ヅラしてないで、さっさと座れ」
そんな暢気な創造神様の話を先生が繋いだ。
目の錯覚なのか、何気に馴染んでるように見える。
いやいや、これは新手の精神攻撃ではないのか。
「悠くん、呆け過ぎて口が開いてるわ。それにこれは現実。さっさと受け入れた方が楽になるわよ」
スカジ様が優しく語りかけ、背を軽く押して席に座らせてくれた。
「これはフレ、いや、マルデルちゃんが作ったのかい。うん、本当に美味しいよ」
「ええ、正確には私とスクルドですけどね。気に入ってもらえて良かったです」
「当たり前。私の愛し子はなんでも出来る。でも、もっと褒めて」
な、なんなんだ。この自然な流れは。
というか、さっきあんなにも感動的な別れをしたよね、そうだったよね。なんでこうなってるんだよー!
俺はそっと眉間に手を当て、目を瞑った。
あれか、前にフレイとやったドッキリの仕返しか。
いや、マルデルはそんな事はしない。
となると、ただ単に遊びに来たということなのだろう。
ん、なんか創造神様が前よりも輝いていないような……
「あ、受肉したからね」
「そう、これで私たちは人と変わらない身となった」
そっかぁ。受肉すると人になるのか。
「この馬鹿弟子。あっさり騙されるな。それに受肉して人になる訳がなかろう」
師匠の手刀が軽く頭に落ちた。
「それにだ。見掛けは人でも中身はそのままだからな。坊や、甘く見てると痛い目に遭うぞ」
「ちょっと、悠太くんを脅かさないで。それに私がちゃんと護るから問題ないから」
「まったく貴様は。互いを甘やかしてるだけでは成長せんぞ」
そんな師匠と戯れ合うマルデルをほっといて、向かいに座るヒルデに目をやると、彼女は微笑みうなずいた。
そして周りを見渡すと、皆が普通に受け入れ、楽しそうに食事をしている。
まっ、みんなが良いならそれでいいさ。
それに人が、いや、家族が増えるのは大歓迎だしな。
そう思い、俺は食事を始めた。
そんなスーパークールとなった俺は、精霊たちと朝の交流をしていた。
新たに生まれ変わった俺のことを精霊たちはとても喜んでいた。それに精霊たちも何気にいつもよりもよりピカピカしているような気がする。
おそらく彼等も俺と同じくパワーアップしたのかもしれない。
「しかし驚いたよな。アンジュ達とそんな昔からの付き合いだったなんて」
「まぁそうですね。でも女王とは違って悠太様は危なっかしくってほっとけなかっただけですけど」
アンジュがそう言うとシェリー達も同意を示すように何度もうなずいていた。
すると皆でヒソヒソ話を始め、俺を見て何かを思い出したのか一斉に吹き出して笑った。
おい、何を話していたのか知らないが人の顔を見て笑うのはやめろ。失礼にも程があるだろうが。
「申し訳ありません。けれど思い返すとおかしくて」
ウェンリィが謝ってくれたが、その表情は必死に笑いを堪えていて肩が小刻みに震えていた。
「ところで悠太様。あの洞穴の皆をあの場所から解き放っていただけませんか」
ん、解き放つ?
ユキナからそう言われるも、その方法が分からない。手で軽く口を隠し思考に耽るが全然思いつかない。
「大丈夫です。行けばなんとかなりますから」
「ほんとか。まぁユキナがそう言うなら信じるけど、もし駄目だった時は絶対に馬鹿にするなよ」
「私たちが悠太様を馬鹿にした事なんて無いはずですけど」
おい、シェリー。しれっと嘘をつくな。ほんとクロノアといい、精霊は息を吐くように嘘をつくな。
「我らが王よ。それはあまりにも酷くありませんか。私たちがこんなにも、あなた様に全てを捧げているのに」
おいおいと小さく声にだして嘘泣きを始める名女優アンジュ。その悲哀に満ちた演技は圧巻だった。
「おい、小芝居とはいえない迫真の演技はやめろ。誰かに見られたら俺が泣かせているような誤解されるだろうが」
「いえ、泣かせたのは悠太様ですから」
一斉に皆が口を揃えて反論した。
このままでは拙いと思い、話を変える事にした。
「なあ、でも原初の神様の眷属だったならなんでアンジュ達は神様にならなかったんだ。神様になって俺を支える選択肢だってあっただろう」
「全然。しがらみが増えるだけで、つまんないじゃないですか」
「そうそう。私たちは面白おかしい生き方の方が好きですから」
シェリーにマナリアが同意すると、この場にいる皆全てが同意を示し、一気に場が賑やかになった。
結局、どこまでいっても精霊はわがまま気まままな存在なんだな。
そんな風に納得しているとユキナがこう付け加えた。
「それに私の同胞もそうですが、神になっても楽しそうじゃありませんからね。それよりも悠太様と共に在る方が何倍も幸せです」
「ですよね。神になんてなったら悠太様のお側には居られませんし」
ウェンリィはそう言って、俺の肩に座って頬にもたれ掛かった。
ったく、本当に甘えん坊だな。
まっ、しょうがないか。
こんな駄目な俺をずっと見捨てずに支えてくれてたんだ。このくらいで喜んでくれるならば安いものだ。
「あっ、ウェンリィが抜け駆けした!」
そのシェリーの言葉が合図となり、この場にいる全ての精霊たちが俺に纏わりつく。
うん、たぶん傍から見たら俺、かなりピカピカしてんだろうな。
なんかクールとは程遠いけど仕方がないか。
◇
「だぁっ! な、なんで……」
精霊たちと遊び過ぎて少し遅れて朝食を摂ろうと食堂に入ると、なんとそこに創造神様とあの恐怖の時の大神様が居た。しかも師匠と先生までもが、さも当然のように食事をしている。
「あ、おはよう。随分と遅いじゃないか。あ、先に戴いていたよ」
「おう、馬鹿弟子。そんなところで阿呆ヅラしてないで、さっさと座れ」
そんな暢気な創造神様の話を先生が繋いだ。
目の錯覚なのか、何気に馴染んでるように見える。
いやいや、これは新手の精神攻撃ではないのか。
「悠くん、呆け過ぎて口が開いてるわ。それにこれは現実。さっさと受け入れた方が楽になるわよ」
スカジ様が優しく語りかけ、背を軽く押して席に座らせてくれた。
「これはフレ、いや、マルデルちゃんが作ったのかい。うん、本当に美味しいよ」
「ええ、正確には私とスクルドですけどね。気に入ってもらえて良かったです」
「当たり前。私の愛し子はなんでも出来る。でも、もっと褒めて」
な、なんなんだ。この自然な流れは。
というか、さっきあんなにも感動的な別れをしたよね、そうだったよね。なんでこうなってるんだよー!
俺はそっと眉間に手を当て、目を瞑った。
あれか、前にフレイとやったドッキリの仕返しか。
いや、マルデルはそんな事はしない。
となると、ただ単に遊びに来たということなのだろう。
ん、なんか創造神様が前よりも輝いていないような……
「あ、受肉したからね」
「そう、これで私たちは人と変わらない身となった」
そっかぁ。受肉すると人になるのか。
「この馬鹿弟子。あっさり騙されるな。それに受肉して人になる訳がなかろう」
師匠の手刀が軽く頭に落ちた。
「それにだ。見掛けは人でも中身はそのままだからな。坊や、甘く見てると痛い目に遭うぞ」
「ちょっと、悠太くんを脅かさないで。それに私がちゃんと護るから問題ないから」
「まったく貴様は。互いを甘やかしてるだけでは成長せんぞ」
そんな師匠と戯れ合うマルデルをほっといて、向かいに座るヒルデに目をやると、彼女は微笑みうなずいた。
そして周りを見渡すと、皆が普通に受け入れ、楽しそうに食事をしている。
まっ、みんなが良いならそれでいいさ。
それに人が、いや、家族が増えるのは大歓迎だしな。
そう思い、俺は食事を始めた。
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