邪神様に恋をして

そらまめ

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新婚編

邪神様、ちゃんと言っておいてください

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 竜魔族の村に着いてみると、マルデル様と悠太が死んだように眠っていた。

「エイルまでいながらなんなんですか、この状況は」
「レイヴ、いや、あの、少し目をというか、突然ね……」

 どうも要領を得ない。なんかイラッとする。

「だから、なんでこうなったと聞いてるの。エイル、ちゃんと答えなさい」

 スクルドとロータを見たが、二人ともうつむいている。
 この二人はこのままやり過ごそうとしてますね。

「だから、なにも分からないの。急にこうなったんだから原因があるなら、逆に私が知りたいわよ!」

 とうとうエイルはレイヴに逆ギレをした。
 そして、そのままレイヴの胸元を掴んでにじり寄った。

「後から来といて、グダグダ言ってんじゃありませんよ。わたし達だって遊んでた訳じゃないの。分かったかしら、この脳筋女」

 あ、本気でキレましたね、これは。
 さすがのレイヴもタジタジになっていますね。
 そりゃあ、わたしの次席、ワルキューレ第二席ですからね。本気をだしたら怖いですよね。
 その証拠にロータもスクルドも震えてるし。

「す、すまん。つい、マルデル様をみて熱くなってしまった。許してくれ」
「わかればいいんですよ、わかれば。次は気を付けてくださいよ、本気で殴りますからね」
「ああ、気をつけるよ。すまなかった」

 さすがエイル、と言いたいのですが、こんな事をしている場合ではないのです。

「エイル、とにかく何か少しでも分かったことはないの」
「お姉様、それが幽体離脱だとかなんとか、ヘカテーと凛子が言ってるのですけど、正直なんの事やらです」

 だめだ、これは……


「我が主、悠太様と女王様は冥界に魂を囚われています」

 え、この精霊はたしか土の、マナリアですよね。急に出てきたら驚くじゃない。

「マナリア、どういうことです。詳しく話してください」
「はい、ハデスがどうやったのかは分かりませんが、悠太様の魂が冥界に囚われました。わたし達は異常を察して冥界に降りようとしましたが結界に阻まれ叶いませんでした。そこで、闇の精霊を使って無理やり悠太様のところへ女王様を送ったのです。それしか悠太様を助ける術がありませんでしたから」

 なんと奇天烈な。そんな事が可能なの。
 悠太を助ける為とはいえ、ほんと容赦しないのですね、この娘たちは。

「それで大丈夫そうなのですか」
「無事に女王様を悠太様の所に送れましたので今は大丈夫かと。ただ、かなり深い場所なのですぐに向かうべく同胞があの忌々しい結界を破壊しています」

 え、そんな事をしたら冥界の入り口が開くのではありませんか。それこそまずいのでは……

「すでに冥界の入り口は開いています。あの結界は私達を外からの侵入者を防ぐものです」
「な、マナリア、ほんとなの。なんではやく言わなかったのよ!」
「ばかなの、クロノアは。そんなの女王様はとっくに知っていましたよ。時の大精霊とあろうものが、平和ボケしすぎです」

 なんてことなの、その事にヘカテーも、誰も気付かなかったなんて。これは大失態どころじゃ済まされませんね。

「アルヴィドはここでマルデル様の警護を。そして、ワルキューレはこれより結界の破壊及び、マルデル様と悠太様を救出に冥界に突入します!」


 クロノアが私の肩に乗ったのを確認して、私は外に出た。

「いいですか、対冥界の装備をきちんと整えなさい。マルデル様達は冥界の深部です。絶対に抜かりのないようになさい」



 ◇



 なんか薄暗いし、肌寒いし、幽霊はたくさん出るは、なんでこうなるの!

 まあ、幽霊はマルデルがやっつけてくれるからいいけど、何このデカイやつは。しかも角の生えたライオンに翼があって蛇の尻尾、なんかすごく強そうなんですけど。

「悠太くん、あれはキマイラっていうのよ。強いから油断しちゃダメだよ」
「あ、これが実物か。ゲームとかとはちょっと違うな」

 刀を抜くと下段に構え、慎重にゆっくり間合いを詰める。
 奴の体が少し沈んだ。くる、馬鹿正直に先手を取りにきたか。は、速い、地を滑る様に角を突き出して飛び込んできた。
 後ろにはマルデルがいる。横に避ける訳にはいかない、ならこれしかない。

 くらえ、ロータの閃撃!

 激しい打突が何度も交わされ、その衝撃が背を突き抜けていく。
 奴は一旦後方へ下がった。ちくしょう、ツノだけかよ。マルディールと打ち合うなんて凄いなコイツ。
 俺は再び下段に構える。そしてマルディールにマナを流し込み炎を纏う。次は必ず焼き斬る。

 炎を纏ったマルディールを見て、奴は警戒を強めた。
 だが、次はこちらからだ!
 体勢を低くして駆け、一気に奴の首を下から斬り飛ばすと、そのままロータの閃撃を繰り出した。奴は斬り刻まれ焼かれて消えた。

 やばい、まじ強かった。しかも首を刎ねたのに、蛇の尻尾で噛みつこうとしやがった。危なかった、ほんと。

 そんな薄氷の勝利に反省していると、背中に衝撃が走った。

「一瞬、ヒヤッとしたけど格好良かったよ」
「あはは、ごめん。ちょっと苦戦したよ」

 マルデルはそのまま前に回り込むと、俺の首に手を回してキスをした。
 おお、ご褒美だ、ほんと勝てて良かった。

「すごい再生力だったよ。最初の閃撃で仕留められなかったから、かなり焦った」
「でもちゃんと次で仕留めたんだから凄いよ、悠太くんは」

 もう一度キスをしてくれた。
 ああ、なんて素敵なご褒美なんだ。もう何度でも勝っちゃうから、俺は!


 うん、冥界も悪くないな。
 きっとマルデルと二人なら、どこでも幸せなんだな。
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