邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、腹黒眷属に言質を取られてしまいました

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 ヴェールを発つ前にエイルに挨拶にいった。
 エイルはとても忙しそうにしていたが、俺が挨拶に来たことをとても喜んでくれた。

「悠太様。マルデル様達は反乱軍の首魁を討ち取り、勝利を収めたそうです。まあ、当然の事ですけどね」

 ん、魔国に着くのがずいぶん早くないか。

「あ、教えていませんでしったっけ。大規模魔術による転移門を使用したからですね。ほら、ヴェール近郊のでかい天井のない神殿みたいなやつですよ。ああいった場所が大戦時は各地にたくさんあったんですけど、今残っているのは半分もないくらいですかね」

 はぁ、全然教えてもらってねえよ。
 なに、さらっと教えてんだよ。

「なんでいつも、俺にはそういうことを後から言うんだよ。そんなに俺は信用ないのか」
「違いますよ。天馬もそうですけど、たんに使用を禁じていたので忘れてただけですよ。ほんとですから信じてください」

 うん、この顔は本当ぽいな。ん、でもなんかニヤけてるな。

「そういえば悠太様、マルデル様と七人の恋人に増えたそうですね。……なんで、わたしだけ仲間外れにするんですか! しかもロータなんか、わたしにこんな仕事を押し付けといて、自分だけいい思いとは絶対に許しませんからね」

 げっ、ロータがピンチで危ないな。
 でも、マルデル様と七人の恋人って、なんかウケるな。

「エイル、おまえは本当に面白いことをいってくれるな、いつも。マルデル様と七人の恋人はかなり気に入ったぞ」
「はあ、そこじゃありませんよ。なんでわたしだけ仲間外れにするのか、と聞いているのです」
「別にミツキとも恋人ではないし、エイルだけじゃないだろ。それにこれ以上は俺には本当に無理だ。だから俺の器量が上がって更にいい男になったら、もしかしたらエイルに一番に告白するかもしれないな」

 ほほう、驚きおったか。
 なんだかんだでこの世界では、エイルはヒルデやクロノアと一緒で一番付き合いが長いからな。
 エイルなんぞに簡単には揶揄われんよ、ふふふ。

「まあ、そういうことなら気長に待っていましょう。と言っても、わたし達は悠久に生きる存在ですからね。あっという間のことですけど、ふふふ。悠太様、言質はとりましたからね」

 あ、きたねえ。エイル、それは反則だろ!

「あっ、悠太様。アルヴィドが悠太様のせいで、マルデル様に八つ当たりされて苦労してるようなので早く合流してくださいね。昨日からひっきりなしに連絡が来て困ってるんですよ、わたしも」

「あん、そんなの俺のせいにするなよな。でも早く合流って、じゃあ、俺もその転移門とやらで移動するのか。なんかワクワクすんな」

「はぁ、転移門なんか使いませんよ。あれは軍を送るためのものですから。もう天馬の契約は済ませたでしょう。悠太様は天馬で移動ですよ」

「はあぁぁぁ、天馬の契約なんてしてないぞ、初耳だよ!」

「あぁぁん、スクルドとロータは何やってたんですかね。ちょっと誰か、大至急、スクルドとロータをここに呼びなさい!」

 あ、エイルまじで怒ってる。これは俺が悪いのか。
 でも、どのみちすぐにバレる事だよな、うん。

「大方、一緒に乗って移動とかふざけた事を考えていたに違いありません。あのばか者たちが!」

 あ、テーブル、二つに折れちゃいましたけど、それって、たぶん高級品ですよね、大丈夫すか……

「ま、まあ、あんまり怒るなよ、エイル。たぶん俺昨日もやらかしたから忘れてただけだと思うぞ。ま、まあ、落ち着いて、な、エイル先生」

 あっはん、睨まれました、こわいです。エルフの里で説教された事を思い出しますぅぅ。

「その呼び方は懐かしいですね。なんか、こう、少し嬉しくなります。たぶん気のせいだと思いますが」
「……エイル先生。先生は怒ってるより、笑ってる方が素敵だと思います。いつもみたいに素敵な笑顔で見送って欲しいな、ダメですか」

 俺は恐怖のあまり、秘技、かわいい優等生を繰り出した。
 これは辛く長い修行の上で、エルフの里で編み出した、対エイルの最高奥義だ。

「……う、まあ、そうですよね。うん、見送る時は笑顔ですよね。もう、悠太くんはあの時と変わらず、ほんと可愛いんだから」

 エイルが優しく抱きしめてくれた。ふ、チョロいな。
 でもエイルも相変わらず、いい感触のおっぱいだ。
 無事こうしてエイルの機嫌が直り、二人で談笑しながらスクルド達が来るのを待った。


 その後、やはりスクルドとロータはエイルに叱られるという一悶着もあったが、無事俺とマチルダは天馬との契約に成功して、マルデル達と合流するべく、ヴェールをあとにした。

 はじめて自分で操る天馬の乗り心地はサイコーだった。
 そして、カッコいい槍と盾を手にしたスクルド達に憧れて槍が欲しくなり、ついおねだりして用意してもらった。なにやらヒルデから預かっている槍らしいが大丈夫だろうと俺にくれた。


 ふふふ、この赤い槍はすごく格好いいぜ。



 ◇



「なに、反乱軍も、送り込んだ勇者達の軍も全滅だと!」

 眷属の報告に、つい声を荒げてしまった。
 フレイヤが魔国に援軍を率いて現れただと。
 なぜそんなに早く魔国に着いたのだ。あの厄介な転移門は全て破壊した筈ではなかったのか。

「はい。残念ながら全滅、いえ、一兵残らず殲滅されたとの事です」

 クッ、やはり強化兵や巨人程度ではフレイヤ、ワルキューレには敵わぬということか。
 神や眷属でなければ勝負にはならぬのか。しかし、あの大戦で大半が奴によって黄泉に送られた。
 やはり父が送ってきた、あの天使とかいう者達を使うしかないのか。
 だが、果たして奴らを信用してもいいのだろうか。

「おそらく次はここに乗り込んでくる。眷属で防衛を固めろ。それと、父上がよこした天使とやらにヴェールを攻めさせろ」

「その天使をヴェールに送ってもよろしいのですか。奴らと共にここでフレイヤを迎え撃った方がよろしいのではありませんか」

「あいつらはいまいち信用できん。得体もしれぬものと、ここで共闘はできん。それよりはヴェールを攻めさせ、フレイヤをヴェールに引き返させた方が良かろう。なにせ父上曰く、あやつらはワルキューレよりも強いらしいからな」

 勇者という駒も失い、戦力の分散は好まぬが、負けっぱなしは性に合わん。せめてヴェールだけは破壊、いや陥してやるわ。


「土と風にはそのまま侵攻させますか。それとも帰還でしょうか」

「風に送った軍は辺境の砦まで後退させろ。テティスとアウラ、ウェスタの連合軍をそこで引きつけて迎撃しろ。なるべくヴェールから奴らを引き離せ。そして土に送った者達にはそのまま作戦を遂行させろ」

 テティス達の弱兵など恐るるに足らずだが、下手に邪魔されるても困るしな。
 まあ、ここにフレイヤが来るなら、それも好都合だ。
 数も我が眷属とワルキューレは互角。フレイヤとの一騎討ちで、あの時の雪辱を必ず果たしてやる。
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