12 / 35
ひとりめ
しおりを挟む
◆
その翌朝、学校中が大騒ぎになった。使われていない旧校舎、その技術室で他校の生徒が舌を噛んで死んでいたのである。
乱闘の痕跡もあったため、どうやら他殺の疑いもあるらしい。
その日は生徒達も興奮状態にあったため、急遽短縮授業に変更された。
放課後の部活動、文化祭の用意なども中止になり、すみやかに下校せよと放送で指示があった。
「幡多、ちょっと」
下駄箱で靴を履きかえようとしていた結珂は、追いかけてきた坂本に呼びかけられた。
「どうしたの?」
また、閏のことで何かあったのだろうか。靴を下駄箱に戻した結珂に、坂本は歩み寄ってくる。小声で耳打ちした。
「技術室で死んでたの、賀久の仲間だぜ」
「えっ……」
「この前、帰りにお前の手を掴んだヤツ、ほら、両耳にずらっとピアスした金髪の」
「し、知ってる。覚えてる」
知らず声が震えてしまう。
「あいつ高村(たかむら)って名前なんだけど、そいつだった。見てきたから間違いない」
「見 ─── 見てきたって」
よく平気なものだ。
「警察が話してる内容聞いてたら、なんか気になっちまったんだ。でもまさか高村だとはなあ ─── 」
「なっなんであの人がこの学校で」
「誰かに呼び出されたんじゃないかって警察が言ってたけど、だとしたら知り合いに殺されたんだろうって」
「まさか……この学校の人間?」
「可能性は高いんじゃないか」
坂本は淡々と言う。
青冷めてしまった結珂に気付き、ちょっと微笑んでみせた。
「送ってくよ。紅茶、またおごってやろうか?」
「 ────── 」
思わずうなずきかけて、結珂はじろりと坂本を見上げる。つんとして戻した靴をまた取り上げた。
「いい、誤解されるから。それに昨日みたいなこと言うのやめて」
「昨日って?」
「人に彼女ってウソ紹介するの」
「でもお前、赤くなってたぜ」
「うそばっか!」
ちなみに嘘ではないのだが、結珂には自覚がない。靴を履いてとっとと校庭に出ていくのを坂本が追っていく。
その翌朝、学校中が大騒ぎになった。使われていない旧校舎、その技術室で他校の生徒が舌を噛んで死んでいたのである。
乱闘の痕跡もあったため、どうやら他殺の疑いもあるらしい。
その日は生徒達も興奮状態にあったため、急遽短縮授業に変更された。
放課後の部活動、文化祭の用意なども中止になり、すみやかに下校せよと放送で指示があった。
「幡多、ちょっと」
下駄箱で靴を履きかえようとしていた結珂は、追いかけてきた坂本に呼びかけられた。
「どうしたの?」
また、閏のことで何かあったのだろうか。靴を下駄箱に戻した結珂に、坂本は歩み寄ってくる。小声で耳打ちした。
「技術室で死んでたの、賀久の仲間だぜ」
「えっ……」
「この前、帰りにお前の手を掴んだヤツ、ほら、両耳にずらっとピアスした金髪の」
「し、知ってる。覚えてる」
知らず声が震えてしまう。
「あいつ高村(たかむら)って名前なんだけど、そいつだった。見てきたから間違いない」
「見 ─── 見てきたって」
よく平気なものだ。
「警察が話してる内容聞いてたら、なんか気になっちまったんだ。でもまさか高村だとはなあ ─── 」
「なっなんであの人がこの学校で」
「誰かに呼び出されたんじゃないかって警察が言ってたけど、だとしたら知り合いに殺されたんだろうって」
「まさか……この学校の人間?」
「可能性は高いんじゃないか」
坂本は淡々と言う。
青冷めてしまった結珂に気付き、ちょっと微笑んでみせた。
「送ってくよ。紅茶、またおごってやろうか?」
「 ────── 」
思わずうなずきかけて、結珂はじろりと坂本を見上げる。つんとして戻した靴をまた取り上げた。
「いい、誤解されるから。それに昨日みたいなこと言うのやめて」
「昨日って?」
「人に彼女ってウソ紹介するの」
「でもお前、赤くなってたぜ」
「うそばっか!」
ちなみに嘘ではないのだが、結珂には自覚がない。靴を履いてとっとと校庭に出ていくのを坂本が追っていく。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

幽霊探偵 白峰霊
七鳳
ミステリー
• 目撃情報なし
• 連絡手段なし
• ただし、依頼すれば必ず事件を解決してくれる
都市伝説のように語られるこの探偵——白峰 霊(しらみね れい)。
依頼人も犯人も、「彼は幽霊である」と信じてしまう。
「証拠? あるよ。僕が幽霊であり、君が僕を生きていると証明できないこと。それこそが証拠だ。」
今日も彼は「幽霊探偵」という看板を掲げながら、巧妙な話術と論理で、人々を“幽霊が事件を解決している”と思い込ませる。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?
泉田高校放課後事件禄
野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。
田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。
【第32回前期ファンタジア大賞一次選考通過作品を手直しした物になります】
ビジョンゲーム
戸笠耕一
ミステリー
高校2年生の香西沙良は両親を死に追いやった真犯人JBの正体を掴むため、立てこもり事件を引き起こす。沙良は半年前に父義行と母雪絵をデパートからの帰り道で突っ込んできたトラックに巻き込まれて失っていた。沙良も背中に大きな火傷を負い復讐を決意した。見えない敵JBの正体を掴むため大切な友人を巻き込みながら、犠牲や後悔を背負いながら少女は備わっていた先を見通す力「ビジョン」を武器にJBに迫る。記憶と現実が織り交ざる頭脳ミステリーの行方は! SSシリーズ第一弾!

秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる