アトリエ「ファルム」、開業いたします

●プロローグ 姉、ノーラからの手紙

『親愛なるリーシアへ。

　リーシア、元気にしてますか？
　お姉ちゃんの言いつけ、ちゃんと守ってる？
　あなたももう十六歳になったんだから、それくらい守れるわよね。

　ひとつ、常に健康な身体を保つこと！　これは錬金術師になるための基本だからね。どんなに過酷な仕事を請け負っても耐えていけるよう、丈夫な身体をつくる努力を怠ってはいけないわ。

　ひとつ、錬金術師の勉強を怠らないこと！　あなたは才能はどうであれ努力の子だから、きっといつかいいものが作れるようになるわ。自分を信じて、勉強を続けなさい。

　そしていちばん重要なことが、もうひとつ。
　どんなことがあっても、人を愛しなさい。どんな窮地に陥っても、どんなにつらくて哀しいことになったとしても、誰かを憎んだり恨んだりしてはいけないわ。愛は愛で返ってくる。必ずよ。お父さんとお母さんの教え、きちんと守るのよ。

　あ、あと最後にもうひとつ。

　一日一杯、必ずお姉ちゃんが作り置きしておいた薬湯を飲むこと！
　あなたは昔から身体が弱いんだから、これは絶対に忘れずにね！

　お姉ちゃんはもうすぐアトリエに戻るわ。あと一週間くらいで会えると思う。三年ぶりの再会になるわね。
　あなたの大好きなお料理もスイーツもたくさん作ってあげるから、ふたりで三年ぶんのあなたのお誕生日をお祝いしましょうね。もちろん、バニラパンケーキもとびっきりおいしいのをつくるわよ！　楽しみにしていて！

　じゃ、さっきから依頼人が「早く竜剣を作れ」ってうるさいから、これで。
　一週間後にアトリエ「ファルム」で会いましょう！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あなたの姉　ノーラ・ウィンストンより』

　リーシアは予測していなかった。

　まさかこの手紙の差出人である姉ノーラが、
　　　　　　　　　　　　　　　──しゃべる壺になって帰ってくるなんて。