18 / 27
第一章 ー始まりー
この世界に来て3年
しおりを挟む弓術訓練と医学勉強が始まったあの日からもう1年…。
俺はやっとの思いで、全ての課題をクリアする事が出来た。
弓術は、コツを掴むのがかなり早かったお陰で、難なくクリアできたのだが…。
医学はそうは行かなかった…。
毎日毎日頭を抱え、弓術訓練が終了した事をいいことに、ディーアは丸一日を医学に当てた…。
少しずつ医学を覚え始めた時、どうしても外に出たくて、ディーアに懇願し、週に1回の午前中だけティアに体術と剣術の修行を手伝ってもらった。
そして、半年で医学を叩き込み、再生魔法を使えるようになる為と言って、ディーアは空間魔法で怪我をした様々な種族を俺の部屋に連れて来るようになった。何度何度も治し、時には手や足が取れた者の四肢を繋げたり、致命傷を負った者も来た。判断を誤ったり遅かったりしたら死ぬ。
何とも言えない感情の日々、正直しんどかった…。
でも、皆んなに励まされ、助けられて、俺はどうにかこの地獄を切り抜ける事ができ、やっと再生魔法を習得する事が出来たのである。
俺は再生魔法習得後、ディーアにこんな事をして、誰かに恨まれたり仕返しされたりしないのか聞いたが、どうやら時間魔法で、治療の記憶を消して、元に帰していたらしい…。
そして、歴史、地理、古代学。これらはディーアが世界を歩き、集めた情報に基づくものだった。
様々な種族の歴史や国、氷の土地や燃える土地。各地にある古代遺跡や太古の生物ドラゴン、俺は物凄く心が踊った。
ちなみに、算術は元の世界と数字が同じだったので楽勝だった。
そんなこんなで、今日で俺は16歳になった。
この世界来て早3年…。
様々な事をここで学ばせてもらった。
そして、夢も貰った…。
皆んなには、本当に感謝してもし足りない程だ。
でも、明日、俺は旅に出る。
半年前にディーア達に言ったら、少し寂しそうな顔をしていたけど、止めはしなかった。
今では喜んでもいる。理由は、俺にも空間魔法と時間魔法が使えるようになったからだ。
これで俺達は、離れていてもテレパシーで連絡が取れるし、行った事がある場所には空間移動も出来る様になった。
そして今日、当分会えなくなるからと言って、ディーアが俺の魔力の解放をしてくれるそうだ。
『まさか、あの君が旅に出るなんてね。』
ディーアは懐かしんでいるようだ。
「はい、ディーアの世界を周った話を聞いた時から、いつかはと考えていました。」
俺はお茶を飲んだ。
『そう言えば、明日旅立つ君にお願いがあるんだけども。』
ディーアはレイナを呼んだ。
「お呼びですか?旦那様。」
『君も、明日街にもどるんだよね?』
「はい、皆様とのお別れは寂しいですが、私は元の生活に戻ります!」
(だから荷物をまとめていたのか…)
「それで、頼みって言うのは?」
『あぁ、君に街まで、レイナの護衛を頼みたいんだよ。』
ディーアは笑顔で言った…。
(えっ?ディーアが空間魔法で帰してあげればよくね?)
なんて、言う事もできず…。
「もちろん!喜んで!」
と、俺は笑顔で答えた。
「ありがとうございますミツキさん!」
レイナの笑顔が眩しかった…。
『いやー、助かるよミツキ君、ちなみに私とティアも旅に出る事にしたよ。』
俺はまさかの新事実に驚いた…。
「えっ?旅と言うのは?」
(まさかついてくるんじゃ…。)
『いや、ちょっと気になる事があってね、また世界を周りながら、古代遺跡を調べようと思うんだ。』
(なるほど…知識欲には敵わないんだなこの人…。)
「師匠も行くのですか?」
俺は隣でクールにお茶を飲んでいるティアに聞いてみた。
「えぇ、私も今初めて聞きましたが、ご主人様の為なら何処へでもついて行きます。」
(ご主人様に戻ってる、懐かしいな~てか今知ったんだ…。)
『まぁ、そう言う事で、この家とは今日でお別れだね。なんならミツキ君が使いたい時に使ってくれても構わないよ。』
確かに、空間移動を使えるのは俺とディーアだけ、もしまた皆んなが集まる可能性があるのはこの家だけだ…。
「分かりました!そう言っていただけるのであれば、使わせてもらいます!」
(そうだ、いつかまた、みんなで…。)
『好きに使って構わないよ、でも、たまに掃除と庭の芝の手入れをしておいてね。帰る時は前もって連絡するから。』
ディーアは笑顔でそう言った。
(あーこいつ!上手く管理を押し付けたな!)
「はい…。任せて下さい…。」
俺は心の中で、このエルフには一生敵わないと思った。
『さて、じゃあ日が落ちる前に、ミツキ君の魔力を解放しようか。』
そう言って、ディーアは立ち上がった。
『解放は訓練場で行うよ、この家に被害があったらたまらないからね。』
「はい…。よろしくです。」
ディーアはレイナとティアも同行させた。
『じゃあ、皆んなで行こうか。』
こうして、俺達4人は、訓練場へと向かった。
「ディーアさん、どうしてレイナと師匠も?」
俺は歩きながら楽しそうにしているディーアに聞いた。
『理由は簡単だよ、もし、君が魔力の制御に失敗して魔力が暴走しても、私ならあの2人を守れる。』
(2人?俺は?)
「あの~俺は?」
『君はおそらく、失敗した時点で粉々に吹き飛ぶと思うよ。』
ディーアはニコニコしながら答えた。
(いや、笑顔で言う事ですかねそれ…。)
そんな事を思っている内に、訓練場へと着いてしまった…。
「…………」
俺は何だか緊張してきた…。
『2人はそこに居てね、ティアは失敗したらすぐに魔法で防御壁を出してレイナを守って、私はすぐに空間魔法で君たちとここから離脱するからね。』
「承知しました、ご主人様。」
「ミツキさん!頑張って下さい!」
「はーい。」
俺は、何とも覇気のない返事だと、自分でも思った。
『よし!じゃあ始めるよ、ミツキ君はこっちへ来て座ってくれるかな。』
俺は言われた通り、訓練場中央で待つディーアのところへ行き、正座で座った。
『あれ?緊張しているみたいだけど大丈夫かい?』
(このやろう…一体誰のせいだと…。)
「はい、少し緊張してます。俺、大丈夫なんでしょうか…。」
すると、ディーアが後ろに立ち、俺の頭に手を置いた。
『大丈夫だよ、これまで君は、あの厳しいティアの訓練にも耐え、私の知識も自分のものに出来た、それに、君の魔法はオリジナル性が高く、私でも真似できるのは少ない。そして魔力操作はもう私をとっくに超えているよ。後は、自分と、私達を信じて。』
俺の中から、嘘のように緊張が消えていった。
まさか、ディーアがそんな事を言ってくれるなんて…。
「ありがとうございます!先生!」
そう言うと、ディーアは俺の両肩に手を置いた。
『いいかいミツキ君、解放後、恐らく魔力は、身体から外に出ようとするはずだ、君はそれを押さえ、身体に馴染むまで魔力をコントロールする事だけ考えるんだ。馴染みさえすればこっちのものだからね。』
「はい、先生!」
俺はそっと目を閉じ、自分の魔力に集中した。
『 じゃあいくよ! 魔法解除!! 』
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる