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第10章 シクワ=ロゲン祭<閉幕>
40、謎の会議
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「時間も意識できないようであれば、この先が思いやられる」
ジグは失望気味に言った。エシルバはただ「はい」としか言えず、閉会式に遅刻してしまったことを大いに後悔し、自分を恥ずかしく思った。なにより遅刻の理由がアクシデントでもなければ重要なことでもなく、人気アトラクションの長い行列に並んでいたからだ。彼はエシルバから事実関係を確認してすぐにグリニアに報告しに行ったが、戻ってくる頃には一段と険しい表情になっていた。
反省文を書かされた帰り道、同じくどんよりとした顔のリフと合った。
「ねぇ、そっちはなんて言われた?」
「結構きつめに言われたけど、後はいつも通りだった。かえってこたえるよ」
エシルバはペンの握り過ぎで赤くなった手をヒラヒラさせながら答えた。
「俺は何時間も説教されて、最終的には関係のない世間話、人生論まで聞かせてくれたよ。あと数週間はメンタルがズタズタだな」
トロベム屋敷に帰ると二人の遅刻は当然周知のこととなっていた。
「閉会式に遅刻とか、どんな大物かと思えばまたあの二人か」
さっそくジャキリーンのヒソヒソ声が聞こえてきたので、エシルバは恥ずかしくなってすぐに自分の席に着いた。
「二人とも」
ポリンチェロが声を掛けてきてリフはビクリと驚いた。
「よう、ポリンチェロ。どうしたんだよ。遅刻の話ならもうなにも言わないでくれよ。今、俺たちすごく反省しているんだからさ」
「大丈夫よ、あなたたち二人がいなくても閉会式がつぶれるわけじゃないわ」
今のは少し傷ついたが、エシルバは彼女の話に耳を傾けた。
「遅刻の話なんて大した問題じゃないわ。それよりもっと、大事な話があるの」
「ロゲン祭がやっと終わったっていうのに! まだなにか大事なことがあるのか?」
リフはがっくりしながらテーブルに伸びてうなだれた。
「今夜、なにか大事な会議が開かれているようなの。アーガネルはまだ教えてくれなかったけれど、いずれ明日の朝になれば私たちにも説明するって。こんな夜中に会議なんて今まで一度もなかったじゃない。ねぇ、変だと思わない?」
「遅刻なんてするんじゃなかった!」
リフは突然大声で叫んだ。
「俺たちの遅刻が会議の議題になるほど深刻な問題だったなんて信じられるか? こんなことで破門確定なんて、俺恥ずかしくて父さんに顔も合わせられないよ」
少し論点がずれているかもしれないと思い、エシルバは念のため彼女にこう尋ねた。
「その会議には、団員のほかに誰が参加していた?」
「多分、団員には関係のない部署の人もいるわ。そう、ルバラーが会議室に入って行くのを見たわ」
「始まるんだ」
エシルバは嫌な予感を抱きながらつぶやいた。
「なにが始まるというの?」
ポリンチェロはおずおずと声を小さくして聞き返した。
「ルバラーはブユの暴走対策課に設置された専門家会議に選ばれた人だ。だとしたら、この会議でなにか重要な取り決めをしているのかもしれない。ブユの石板か、銀の卵に関するなにかを」
ジグは失望気味に言った。エシルバはただ「はい」としか言えず、閉会式に遅刻してしまったことを大いに後悔し、自分を恥ずかしく思った。なにより遅刻の理由がアクシデントでもなければ重要なことでもなく、人気アトラクションの長い行列に並んでいたからだ。彼はエシルバから事実関係を確認してすぐにグリニアに報告しに行ったが、戻ってくる頃には一段と険しい表情になっていた。
反省文を書かされた帰り道、同じくどんよりとした顔のリフと合った。
「ねぇ、そっちはなんて言われた?」
「結構きつめに言われたけど、後はいつも通りだった。かえってこたえるよ」
エシルバはペンの握り過ぎで赤くなった手をヒラヒラさせながら答えた。
「俺は何時間も説教されて、最終的には関係のない世間話、人生論まで聞かせてくれたよ。あと数週間はメンタルがズタズタだな」
トロベム屋敷に帰ると二人の遅刻は当然周知のこととなっていた。
「閉会式に遅刻とか、どんな大物かと思えばまたあの二人か」
さっそくジャキリーンのヒソヒソ声が聞こえてきたので、エシルバは恥ずかしくなってすぐに自分の席に着いた。
「二人とも」
ポリンチェロが声を掛けてきてリフはビクリと驚いた。
「よう、ポリンチェロ。どうしたんだよ。遅刻の話ならもうなにも言わないでくれよ。今、俺たちすごく反省しているんだからさ」
「大丈夫よ、あなたたち二人がいなくても閉会式がつぶれるわけじゃないわ」
今のは少し傷ついたが、エシルバは彼女の話に耳を傾けた。
「遅刻の話なんて大した問題じゃないわ。それよりもっと、大事な話があるの」
「ロゲン祭がやっと終わったっていうのに! まだなにか大事なことがあるのか?」
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「今夜、なにか大事な会議が開かれているようなの。アーガネルはまだ教えてくれなかったけれど、いずれ明日の朝になれば私たちにも説明するって。こんな夜中に会議なんて今まで一度もなかったじゃない。ねぇ、変だと思わない?」
「遅刻なんてするんじゃなかった!」
リフは突然大声で叫んだ。
「俺たちの遅刻が会議の議題になるほど深刻な問題だったなんて信じられるか? こんなことで破門確定なんて、俺恥ずかしくて父さんに顔も合わせられないよ」
少し論点がずれているかもしれないと思い、エシルバは念のため彼女にこう尋ねた。
「その会議には、団員のほかに誰が参加していた?」
「多分、団員には関係のない部署の人もいるわ。そう、ルバラーが会議室に入って行くのを見たわ」
「始まるんだ」
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「なにが始まるというの?」
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「ルバラーはブユの暴走対策課に設置された専門家会議に選ばれた人だ。だとしたら、この会議でなにか重要な取り決めをしているのかもしれない。ブユの石板か、銀の卵に関するなにかを」
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