デブ&テイク〜太ってても頑張れる!陰キャデブな僕が勇気をもらった、たった1つの哲学

黒猫虎

文字の大きさ
上 下
9 / 12

9.ラブ&テイク。

しおりを挟む

「それで、田中くんは何を最初に作るかは決めてるのかしら?」
「ダイエット用のクッキーを考えてます」

 割りと即答できた。

 僕はデブ。
 それは間違いない。
 でもデブが健康を志したっていいよね?
 僕だってシンジさんのような動けるデブになりたい。

 そんな僕が自分の生活を省みて、気づいたことがある。

 間食が多い……

 僕の食欲的に、すぐに間食を減らすのは厳しいと判断。
 ならば間食に適したダイエットメニューを考える。
 美味しければ尚良し!

「良いですね、ダイエット用のクッキーですか」

 ふふっ、と部長さんが微笑む。
 キツ目のセンパイ女子の不意打ちに、おもわずドキッとした。

「個人負担の部費はない代わりに、材料費の負担は各自で行います。調味料は部室にあるものであれば自由に使って良いです。学校支給の部費も少しありますが、ほとんどは皆で使える調味料などを揃えるのに使います。希望の物はリクエストしてください」

 ふむふむ。

「分かりました!」

 高橋センパイとはうまくやっていけそうだ。
 まだ警戒している様子の他の皆さんとは、追々仲良くなれたらいいな。

 ◆

 とりあえず初日はこれくらいにして、料理研究部の部室を後にする。

 ついでに、他に気になっている部の前をいくつか通って見てみようかな。
 まだ入部はしないつもりだけど。

 そんな感じで部室棟を見学してると、突然背後から声をかけられる。

「ねぇ、入る部活決めたの?」

 その声に振り返ると、声の主はいかにもスクールカースト上位の美少女だった。

「……」
「あっ、田中くんだよね? アタシのこと分かる?」

 自己紹介でなんとなく見覚えある。
 えっと……
 同じクラスの、名前は水嶋みずしまナナコさんだったか。
 陰キャの僕は女子の顔の直視は微妙に避けたまま返答する。

「同じクラスの水嶋さん?」
「あ、認識されてた。嬉しい!」

 ドキッ。
 ボッチ陰キャは女子に微笑まれただけで好きになっちゃうから気を付けてほしいよ。
 高橋センパイもね!

 猫のように人懐っこい微笑みを見せて近づいてくる彼女。
 女子に免疫のない僕はこれだけでキョドってしまいそうになる。
 いや、間違いなくキョドる。

 なぜ、彼女みたいなスクールカースト上位美少女が僕なんかに声を掛けるのか。
 君、もうクラスの中心グループの中心人物ですよね。
 視界の片隅で見てましたけど。
 もしか、クラスに馴染めてない僕に憐れんでるのでしょうか。
 それとも、僕のこと好きなの?
 と、さっそく僕のボッチ陰キャ脳が勘違いしバグりそうになる。

 いやまて。
 こんな時はデブ&テイクの師匠の教えを思い出して一旦落ち着こう。

 えっと……

 ◆

 かつて交わしたシンジさんとの会話を思い出す。

「師匠、デブも女の子と仲良くなれますか? ぼくも彼女作れますか?」

 シンジさんが「師匠はやめてね」と少し困ってみせながら、うんと力強く頷いた。

「デブ&テイクの教えに従って自分を磨き続ければ、とびきりの運命の女性ひとに出会えると保証する」
「本当ですか!?」
「『デブは痩せた人よりもラブする事ができる、つまりすごいラブをあげられる人がデブなんだ』と自分に言い聞かせ続けるだけでね」
「デブ&テイクのラブバージョン!?」
「ラブ&テイクさ!」
「ラブ&テイク!?」
「でも、出会ったばかりで相手を好きになりすぎたり、すぐに告白したりするのは絶対に失敗するからね。好きという感情は封印して、いつも紳士でいることを心がけて。僕はそうしてるよ」
「なるほど、デブ紳士ムーブを心がければ……」

 ◆

 そうだ。思いだした。
 と目の前にいる彼女が僕の運命の女性ひと

(いや、ないでしょ)

 だって、釣り合いが取れてなさ過ぎだもの!
 心の中で自分自身に笑ってしまう。

(それはそうとして。彼女の目的がどうであれ、僕はデブ紳士ムーブを心がけなきゃ)

 少し落ち着きを取り戻した僕は、そっと決意する。
 恐らく彼女は、良く知らないけどクラスメイトがいたので、ただ声を掛けただけなのだ。


「同じクラスはそうなんだけど、学校入学前に会ってるんだけど、覚えてる?」

 ん?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

『女になる』

新帯 繭
青春
わたしはLGBTQ+の女子……と名乗りたいけれど、わたしは周囲から見れば「男子」。生きていくためには「男」にならないといけない。……親の望む「ぼく」にならなくてはならない。だけど、本当にそれでいいのだろうか?いつか過ちとなるまでの物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...