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S3:猫と盗聴器
17.興味と気後れ
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その日はシノさんと敬一クンが帰省して、店の片付けは俺と白砂サンの二人でしていた。
「多聞君」
「なんすか?」
「君、今夜の食事の予定はどうなっているのかね?」
「え…? それはどーいう質問ですか?」
「柊一から、君が無事に夕食を取ることが出来るかどうか、見届けてほしいと頼まれている」
「あ、…ああ、そーいう…」
先日の朝飯でも判る通り、俺は現在、自室での飲み食いをほぼしていない。
もっとも昔から自炊とは無縁なので、シノさんたちが留守の今夜は、外に食べに出なきゃな~…と思っていたのだ。
「私の部屋に誘おうかと思ったのだが、柊一から君もフィギュアの類が苦手と聞いている。だが、君が頻繁に利用していた食堂は、最近閉店したとも聞き及んでいる」
「あ~、そうだった」
メゾンに来る以前、俺が便利に使っていたメシ屋は、大将の高齢化に伴って閉店したのだ。
敬一クンがやってきた後だったので、ギリギリで俺は飯を食う場所を失わずに済んだ|訳だが、じゃあ今日はどうすんだ? ってことを、シノさんは予想してたんだろう。
どーしようかな…と言いかけたところで、俺はふと思い出す。
「あの~う、白砂サンは夕食をどうする予定で?」
「うむ、今日は珍しくランチが完売してしまったので、適当に食べに出ようと考えているが、私は未だこの辺りの地の利を知らないので、今から適当に探しに行かねばと思っているところだ」
「ちょっと、旨いかどーかわかんないんですけど、気になってる店があるんですが、一緒に付き合ってもらえます?」
「ほう、どんな店だろうか?」
「商店街の真ん中辺りに、スペイン風バルってのが出来てて。そこがちょ~っと気になってるんですけど、スペイン風ってパエリアとか煮込みとか、魚がメインでしょ? シノさんは、魚の偏食が結構あるから、誘えなくて…」
「一人で……」
言いかけて、白砂サンは俺の顔を見て色々察してくれたようだ。
まぁ、このビビリの俺が、行き慣れない目新しい店に、一人で突撃出来る気概がナイ…なんて、聞くまでもないだろう。
「うむ、私も気になってきた。ぜひ、ご一緒させてもらおうか」
白砂サンが了承してくれたので、俺たちは早速出かける用意をする。
「今日、ランチ完売したんですね」
「うむ、ゴールデンウィークで観光客が多かったのでは? と推察している」
白砂サンが施錠するのをなんとなく眺めながら、客が俺にキャッキャしないのは、イケメンどうこうだけじゃないのかな? と思った。
確かに俺の容姿はヒョロガリもやしで、顔面偏差値も低く、性格も陰キャなビビリだと思う。
だけどもし俺が、白砂サンみたいな所作を身に着けていたら、少しは評価が上がるんじゃないかな~? とか、思ってしまったのだ。
確かに白砂サンほど、指先の動きまで全部が全部繊細に…って|訳にはいかないだろうが、例えば俺なら横で誰かが見ている状況で、鍵を閉めるとなったら慌てふためいてしまう。
そこに待たせている相手がいると思うと、気ばかり焦ってしまうからだ。
だけど白砂サンは、落ち着いた "優雅な" 所作でスマートに鍵を取り出し、きちんと施錠してから、扉が閉まっているかどうかを確認してから俺の顔を見て「待たせてすまないね」と言った。
気の持ちようと言えばそうなんだけど、でも慌てふためいた給仕がガチャガチャ食器を並べるよりも、優雅な所作で音もなく料理を提供される方が、俺だってたぶん、気持ちが良い。
なんか、変な話だが、俺は今、悟りの一つにたどり着いたような気がする。
「多聞君」
「なんすか?」
「君、今夜の食事の予定はどうなっているのかね?」
「え…? それはどーいう質問ですか?」
「柊一から、君が無事に夕食を取ることが出来るかどうか、見届けてほしいと頼まれている」
「あ、…ああ、そーいう…」
先日の朝飯でも判る通り、俺は現在、自室での飲み食いをほぼしていない。
もっとも昔から自炊とは無縁なので、シノさんたちが留守の今夜は、外に食べに出なきゃな~…と思っていたのだ。
「私の部屋に誘おうかと思ったのだが、柊一から君もフィギュアの類が苦手と聞いている。だが、君が頻繁に利用していた食堂は、最近閉店したとも聞き及んでいる」
「あ~、そうだった」
メゾンに来る以前、俺が便利に使っていたメシ屋は、大将の高齢化に伴って閉店したのだ。
敬一クンがやってきた後だったので、ギリギリで俺は飯を食う場所を失わずに済んだ|訳だが、じゃあ今日はどうすんだ? ってことを、シノさんは予想してたんだろう。
どーしようかな…と言いかけたところで、俺はふと思い出す。
「あの~う、白砂サンは夕食をどうする予定で?」
「うむ、今日は珍しくランチが完売してしまったので、適当に食べに出ようと考えているが、私は未だこの辺りの地の利を知らないので、今から適当に探しに行かねばと思っているところだ」
「ちょっと、旨いかどーかわかんないんですけど、気になってる店があるんですが、一緒に付き合ってもらえます?」
「ほう、どんな店だろうか?」
「商店街の真ん中辺りに、スペイン風バルってのが出来てて。そこがちょ~っと気になってるんですけど、スペイン風ってパエリアとか煮込みとか、魚がメインでしょ? シノさんは、魚の偏食が結構あるから、誘えなくて…」
「一人で……」
言いかけて、白砂サンは俺の顔を見て色々察してくれたようだ。
まぁ、このビビリの俺が、行き慣れない目新しい店に、一人で突撃出来る気概がナイ…なんて、聞くまでもないだろう。
「うむ、私も気になってきた。ぜひ、ご一緒させてもらおうか」
白砂サンが了承してくれたので、俺たちは早速出かける用意をする。
「今日、ランチ完売したんですね」
「うむ、ゴールデンウィークで観光客が多かったのでは? と推察している」
白砂サンが施錠するのをなんとなく眺めながら、客が俺にキャッキャしないのは、イケメンどうこうだけじゃないのかな? と思った。
確かに俺の容姿はヒョロガリもやしで、顔面偏差値も低く、性格も陰キャなビビリだと思う。
だけどもし俺が、白砂サンみたいな所作を身に着けていたら、少しは評価が上がるんじゃないかな~? とか、思ってしまったのだ。
確かに白砂サンほど、指先の動きまで全部が全部繊細に…って|訳にはいかないだろうが、例えば俺なら横で誰かが見ている状況で、鍵を閉めるとなったら慌てふためいてしまう。
そこに待たせている相手がいると思うと、気ばかり焦ってしまうからだ。
だけど白砂サンは、落ち着いた "優雅な" 所作でスマートに鍵を取り出し、きちんと施錠してから、扉が閉まっているかどうかを確認してから俺の顔を見て「待たせてすまないね」と言った。
気の持ちようと言えばそうなんだけど、でも慌てふためいた給仕がガチャガチャ食器を並べるよりも、優雅な所作で音もなく料理を提供される方が、俺だってたぶん、気持ちが良い。
なんか、変な話だが、俺は今、悟りの一つにたどり着いたような気がする。
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