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S3:猫と盗聴器
15.素晴らしい夜
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だけど白砂サンが声に感情を滲ませたことより、言ったセリフの内容の方に俺はたまげた。
「当たり前じゃないですかっ! 僕達はオトナのお付き合いしてるんですからっ!」
「申しわけ無いが、君とご休憩に入るのは、君が考えを改めてくれない限り、御免被る!」
「兄さん。白砂サンの言ってる "ご休憩" とは何ですか?」
赤裸々に言い争う二人にビックリしていたら、眉間に皺を寄せた深刻な表情の敬一クンが俺の想像の斜め上を行く質問をしている。
「あーゴメン、質問は後にしてチョ」
答えたシノさんは先程までの怒り心頭モードから、野次馬モード全開のゲス顔になっていて、喧嘩を止めるどころか、二人の赤裸々なやり取りを楽しんじゃってるのが丸出しだった。
「じゃあ聖一サンは、僕とどういう付き合いをするつもりだったんですかっ!?」
「私も当然、大人の付き合いを希望している。だが、君が問題点を自覚して改善するまでは、君とセックスはしたくない」
「僕に問題点なんて無いでしょうっ!」
「やっぱり君は、常に自分だけが満足していることを自覚していないのか…」
眉根を寄せて、それこそ "鬼司令官" みたいな白砂サンの顔に、ほんの少しだが蔑むような色が浮かぶ。
それだけでもコグマには相当のダメージだっただろう。
「自分だけ…って、初めてのデートの時なんて、あんなに素晴らしい夜だったじゃないですかっ」
「記憶の改竄がなされてないなら、夢じゃないのかね」
「どういう意味です?」
「ご休憩2時間のうち、正味1時間以上寝ていたことを覚えていないのかね?」
「そ…っ、それぐらい、普通でしょう?」
コグマは狼狽えた顔で同意を求めるように視線を彷徨わせたが、意味が解っていない敬一クンは当然のこと、ゲス顔のシノさんや日和見な俺が肯定する訳も無い。
「そもそも君は、最初に私の部屋を訪れた時、玄関に飾ってあったロキュータスの等身大フィギュアに驚き、廊下でエイリアンに驚き、そこで蹌踉めいて棚に飾ってあったエンタープライズを落とし、ワープナセルを損壊した。ワープナセルが当たったミスタースポックの胸像にも、傷が付いてしまった。だが君は自分が驚く方に忙しくて、それらのことにも気付かなかっただろう」
「今さらそんなコト…、言ってくれれば弁償しましたよ!」
「弁償をしてもらおうとは、思っていない。そもそも君が私のコレクションに怯えていることに気付かず、部屋に招き入れてしまったのだから、責任の一端は私自身にもあったのだからな。しかしどんなに情状酌量の余地があったとしても、同じ過ちを繰り返すことは問題だ」
「繰り返してなんかないでしょう? 聖一サンが部屋に招いてくれたのは、後にも先にも一度だけじゃないですか」
「当然だ。私は私のコレクションをこれ以上君に壊されたくはないからね」
容赦なく一言で切り捨てられて、コグマはググッと黙り込む。
白砂サンは、更に続けた。
「私は自身の過ちを反省し、同じ過ちを繰り返さないように学習した。だが君は、デートの誘い文句からして、毎回同じではないか。更にセックスに関しても、最初のうちは相手の好みが解らずに上手くいかないことは致し方ないとして、その後も全く改善されないままなのは、問題ではないのかね?」
「どういう意味ですかっ?」
「少なくとも、相手が快感を得られたかどうかぐらいは、当たり前のマナーとして気を払うものでは無いのかと言っている」
「そんな、聖一サンの見てる外国ドラマのレイプ犯じゃあるまいし! いちいち相手に "良かった?" なんて、誰も聞きませんよ!」
「いちいち訊ねろとは言ってない、相手の様子から察するのが、当たり前のマナーだと言っている」
「僕の気遣いが足りなかったって、責めてるんですか? 女みたいにっ!」
言ってしまってから、コグマもさすがに "しまった" って顔をしたが、白砂サンの強張った表情はそんなモンじゃ無かった。
そしてとうとう最大の爆弾発言が飛び出てきたのだ。
「君との行為の時、私は一度たりともイッてないよ!」
「え…えええっ!!」
コグマの顔面が、蒼白になる。
逆にいつもは血の気が足りないぐらい白い顔をしている白砂サンの方が、赤くなっていた。
らしからぬ乱暴な所作で置いてあったアタッシュケースを掴むと、白砂サンはシノさんに振り返る。
「申しわけ無いが、失礼する」
「あ、聖一サンっ!」
コグマを無視して白砂サンは部屋から出ていってしまい、コグマはオロオロと狼狽えた末に、後を追うようにペントハウスから慌てふためいて飛び出して行った。
「当たり前じゃないですかっ! 僕達はオトナのお付き合いしてるんですからっ!」
「申しわけ無いが、君とご休憩に入るのは、君が考えを改めてくれない限り、御免被る!」
「兄さん。白砂サンの言ってる "ご休憩" とは何ですか?」
赤裸々に言い争う二人にビックリしていたら、眉間に皺を寄せた深刻な表情の敬一クンが俺の想像の斜め上を行く質問をしている。
「あーゴメン、質問は後にしてチョ」
答えたシノさんは先程までの怒り心頭モードから、野次馬モード全開のゲス顔になっていて、喧嘩を止めるどころか、二人の赤裸々なやり取りを楽しんじゃってるのが丸出しだった。
「じゃあ聖一サンは、僕とどういう付き合いをするつもりだったんですかっ!?」
「私も当然、大人の付き合いを希望している。だが、君が問題点を自覚して改善するまでは、君とセックスはしたくない」
「僕に問題点なんて無いでしょうっ!」
「やっぱり君は、常に自分だけが満足していることを自覚していないのか…」
眉根を寄せて、それこそ "鬼司令官" みたいな白砂サンの顔に、ほんの少しだが蔑むような色が浮かぶ。
それだけでもコグマには相当のダメージだっただろう。
「自分だけ…って、初めてのデートの時なんて、あんなに素晴らしい夜だったじゃないですかっ」
「記憶の改竄がなされてないなら、夢じゃないのかね」
「どういう意味です?」
「ご休憩2時間のうち、正味1時間以上寝ていたことを覚えていないのかね?」
「そ…っ、それぐらい、普通でしょう?」
コグマは狼狽えた顔で同意を求めるように視線を彷徨わせたが、意味が解っていない敬一クンは当然のこと、ゲス顔のシノさんや日和見な俺が肯定する訳も無い。
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「今さらそんなコト…、言ってくれれば弁償しましたよ!」
「弁償をしてもらおうとは、思っていない。そもそも君が私のコレクションに怯えていることに気付かず、部屋に招き入れてしまったのだから、責任の一端は私自身にもあったのだからな。しかしどんなに情状酌量の余地があったとしても、同じ過ちを繰り返すことは問題だ」
「繰り返してなんかないでしょう? 聖一サンが部屋に招いてくれたのは、後にも先にも一度だけじゃないですか」
「当然だ。私は私のコレクションをこれ以上君に壊されたくはないからね」
容赦なく一言で切り捨てられて、コグマはググッと黙り込む。
白砂サンは、更に続けた。
「私は自身の過ちを反省し、同じ過ちを繰り返さないように学習した。だが君は、デートの誘い文句からして、毎回同じではないか。更にセックスに関しても、最初のうちは相手の好みが解らずに上手くいかないことは致し方ないとして、その後も全く改善されないままなのは、問題ではないのかね?」
「どういう意味ですかっ?」
「少なくとも、相手が快感を得られたかどうかぐらいは、当たり前のマナーとして気を払うものでは無いのかと言っている」
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「あ、聖一サンっ!」
コグマを無視して白砂サンは部屋から出ていってしまい、コグマはオロオロと狼狽えた末に、後を追うようにペントハウスから慌てふためいて飛び出して行った。
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