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S3:猫と盗聴器
5.シノさんのタブレット
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このタブレット。
シノさん曰く、アマミーことアマミヤミナミからの貸与品なのだが、そう言い張ってるのはシノさんだけで、誰が見てもあれはミナミからシノさんへの贈答品に他ならない。
白砂サンが専属パティシエになる前は、シノさんはカフェの席でマンガを読んだりスマホゲームをしたりしていた。
そのスマホは、現在マエストロ神楽坂の厨房に置かれていて、もっぱら白砂サンが出来上がった商品の呟きを投稿するのに使われている。
それなら白砂サンのスマホで、マエストロのアカウントを登録すれば良いと思うのだが、この状況は結果的にそうなっただけで、最初はちゃんと白砂サンは自分のスマホから呟きを投稿していた。
ことのきっかけは、客が居ない店先でなんとなく休憩モードで世間話をしていた時に、白砂サンが「猫騎士でGOが捗らない」と言い出した。
件の猫騎士でGOとは、白砂サンが今ハマッているソシャゲで、GPS機能を使って実際の地図上に現れる架空の動物…主に猫らしい…を捕まえ、自分のパーティーを編成して冒険をする…みたいなもの、らしい。
俺はゲームなんてドラクエ3ぐらいしかやったことがないが、その時の白砂サンの説明から察するに、酒場ならぬ地図上のあらゆる場所で野良猫をスカウトし、レベル上げならぬ育成・転職ならぬ進化をさせて強く育て、冒険の旅をする…ってことなんだろう。
シノさんは、それならスマホを敬一クンに持たせて、移動中や学校内で猫のスカウトをすれば良いと言い出した。
俺は、個人のスマホを別の人間が持っていたら、色々支障をきたすんじゃないの? と思ったが、シノさんは、現在の白砂サンの状況的に個人的な要件で電話やメールが来る可能性は低いし、使う案件と言えばマエストロの呟きだけなんだから、それは自分のスマホを使えば良いと言い張った。
白砂サンは、それではシノさんに迷惑なのでは? と言ったが、シノさんは言い出したら他人の話なんて聞かない性格だし、その日戻ってきた敬一クンに白砂サンのゲームを手伝うように頼んでしまった。
しかし、シノさんはすぐにも自分の発言を後悔することになる。
シノさんはそれこそ、白砂サンがSNSに投稿するのは朝の開店の時だけだとでも思っていたのだろう。
だけど白砂サンは、確かに11時までにある程度の商品がショーケースに並ぶようにしているけど、その日の天候や気温と湿度みたいなものにまで目を配り、入荷した材料との兼ね合いを図って作るケーキの種類を増やしたり、また時間帯を見計らって惣菜系の商品の画像をアップしたりと、その頻度はシノさんの予想をはるかに上回った小マメさだった。
その度に厨房に呼び出されたシノさんは、結局、半日もしないうちにその面倒さにうんざりして、白砂サンに「使いたい時に取りに来る」と口先だけのデマカセを言って、スマホを厨房に置きっぱなしにした。
だが、スマホでネットやらゲームやらをしながら、だらだらとマンガを読むのが日課になっているシノさんは、スマホが無いと大幅に時間を持て余してしまう。
そのことをシノさんがちょっぴりミナミに愚痴ったら、翌日には各種電子書籍やら雑誌やらの契約が完備された最上級スペックのタブレットが、シノさんの手元に渡された。
シノさんがこれを「貸与品だ!」と言い張っている理由は、このタブレットのキャリア契約がミナミの名義になっているからなんだけど、マンガを購入するのもゲームに課金するのも、全部の決済がミナミのカードで支払われている時点で、間違いなく贈答品だ。
しかもミナミは、このタブレットをシノサンに贈る時に、赤ビル全部に大手の携帯会社の "公衆無線LAN" も設置していった。
もちろんこれらの契約もミナミの名義なのだが、曰く「出資者として、店の快適度を上げて集客に貢献したい」とかなんとか言ってたらしい。
シノさんがゲームをするための快適ネット環境作りなんだろうけど、これが設置されたおかげでメゾンに居住している住人にもいろいろ恩恵があったので、いつもは歓迎されないお変人のミナミも、この時ばかりは株が上がっていた。
シノさん曰く、アマミーことアマミヤミナミからの貸与品なのだが、そう言い張ってるのはシノさんだけで、誰が見てもあれはミナミからシノさんへの贈答品に他ならない。
白砂サンが専属パティシエになる前は、シノさんはカフェの席でマンガを読んだりスマホゲームをしたりしていた。
そのスマホは、現在マエストロ神楽坂の厨房に置かれていて、もっぱら白砂サンが出来上がった商品の呟きを投稿するのに使われている。
それなら白砂サンのスマホで、マエストロのアカウントを登録すれば良いと思うのだが、この状況は結果的にそうなっただけで、最初はちゃんと白砂サンは自分のスマホから呟きを投稿していた。
ことのきっかけは、客が居ない店先でなんとなく休憩モードで世間話をしていた時に、白砂サンが「猫騎士でGOが捗らない」と言い出した。
件の猫騎士でGOとは、白砂サンが今ハマッているソシャゲで、GPS機能を使って実際の地図上に現れる架空の動物…主に猫らしい…を捕まえ、自分のパーティーを編成して冒険をする…みたいなもの、らしい。
俺はゲームなんてドラクエ3ぐらいしかやったことがないが、その時の白砂サンの説明から察するに、酒場ならぬ地図上のあらゆる場所で野良猫をスカウトし、レベル上げならぬ育成・転職ならぬ進化をさせて強く育て、冒険の旅をする…ってことなんだろう。
シノさんは、それならスマホを敬一クンに持たせて、移動中や学校内で猫のスカウトをすれば良いと言い出した。
俺は、個人のスマホを別の人間が持っていたら、色々支障をきたすんじゃないの? と思ったが、シノさんは、現在の白砂サンの状況的に個人的な要件で電話やメールが来る可能性は低いし、使う案件と言えばマエストロの呟きだけなんだから、それは自分のスマホを使えば良いと言い張った。
白砂サンは、それではシノさんに迷惑なのでは? と言ったが、シノさんは言い出したら他人の話なんて聞かない性格だし、その日戻ってきた敬一クンに白砂サンのゲームを手伝うように頼んでしまった。
しかし、シノさんはすぐにも自分の発言を後悔することになる。
シノさんはそれこそ、白砂サンがSNSに投稿するのは朝の開店の時だけだとでも思っていたのだろう。
だけど白砂サンは、確かに11時までにある程度の商品がショーケースに並ぶようにしているけど、その日の天候や気温と湿度みたいなものにまで目を配り、入荷した材料との兼ね合いを図って作るケーキの種類を増やしたり、また時間帯を見計らって惣菜系の商品の画像をアップしたりと、その頻度はシノさんの予想をはるかに上回った小マメさだった。
その度に厨房に呼び出されたシノさんは、結局、半日もしないうちにその面倒さにうんざりして、白砂サンに「使いたい時に取りに来る」と口先だけのデマカセを言って、スマホを厨房に置きっぱなしにした。
だが、スマホでネットやらゲームやらをしながら、だらだらとマンガを読むのが日課になっているシノさんは、スマホが無いと大幅に時間を持て余してしまう。
そのことをシノさんがちょっぴりミナミに愚痴ったら、翌日には各種電子書籍やら雑誌やらの契約が完備された最上級スペックのタブレットが、シノさんの手元に渡された。
シノさんがこれを「貸与品だ!」と言い張っている理由は、このタブレットのキャリア契約がミナミの名義になっているからなんだけど、マンガを購入するのもゲームに課金するのも、全部の決済がミナミのカードで支払われている時点で、間違いなく贈答品だ。
しかもミナミは、このタブレットをシノサンに贈る時に、赤ビル全部に大手の携帯会社の "公衆無線LAN" も設置していった。
もちろんこれらの契約もミナミの名義なのだが、曰く「出資者として、店の快適度を上げて集客に貢献したい」とかなんとか言ってたらしい。
シノさんがゲームをするための快適ネット環境作りなんだろうけど、これが設置されたおかげでメゾンに居住している住人にもいろいろ恩恵があったので、いつもは歓迎されないお変人のミナミも、この時ばかりは株が上がっていた。
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※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
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