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S2:名古屋メシとアフタヌーンティー
4.ホクト視点:デートのお誘い大作戦
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マエストロ神楽坂のティールームの営業時間や営業内容が変わるので、その旨を見やすい告知形式で書いてくれと、ケイに頼まれた。
他ならぬケイの頼みとあっては断る選択肢はないので、PCで適当なサイズにカットと文字を並べたチラシのようなものを作って、プリントアウトして渡しておいた。
するとケイのお兄さんが、どこでどう調達してきたのやら、そのチラシをたっぷりの印刷物に増量して持ち帰ってきて、ペントハウスに来る面々に、チラシを知人や周囲に適当に配って宣伝をしてくれと言う。
もちろん俺もケイも海老坂も受け取ったし、2階のマッサージ&ヨガ教室でも配ったし、小熊さんは英会話教室に持ち込んだようだし、多聞サンは商店街の方へ頼みに行ってあちこちにそのチラシを置いてもらったようだ。
ケイのお兄さんがミナミに頼めば、もっと大々的なリニューアル・キャンペーンを打つことも可能だったと思うが、お兄さんはミナミがどんなにお兄さんに甘い顔をしていても、負い目を作るような事はしたく無いのだと言う。
まぁお兄さんの言うことは、俺にも分かる気がした。
なんせミナミはあんなストーカー紛いの変な奴だし、それに店の主導権を握られたりするのも嫌なのだろう。
マエストロの営業方針に関しては、営業時間以上に、店舗の責任者をハッキリと決めたのも大きな変化だったと思う。
今まではケイのお兄さんがオーナーで、正社員のタモンさんにバイトのケイって構成だったのを、タモンさんはアナログレコード部の店長、白砂さんがカフェ部の店長という肩書に変えた。
そうして白砂さんが仕切るようになったカフェ部は、リニューアルオープン後には今までの常連に加えて新規のお客もチラホラと来店するようになった。
当初はキッチンとフロアを白砂さんが一人で切り盛りするつもりだったようだが、いざ開店してみると昔からの常連が予想以上に頻繁に来店してくるし、新規の客も入るしで、午前中はタモンさんが、午後からはケイも加わってフロアの業務をやり、その場に居合わせれば俺と海老坂もそれを手伝っている。
というのもケイは、実は昔から女子というか女性全般が苦手で、それはたぶん子供の頃のアクシデントが未だに尾を引いていると思うのだが、その辺りのケイの事情を俺と海老坂がフォローしている。
そういうワケで俺は、登校している以外のほとんどの時間を赤ビルの中で過ごすようになっているのだが、手伝いをしている俺や海老坂以上に、マエストロのカフェフロアに入り浸っているのが小熊さんだった。
リニューアルオープン宣伝の際にも、見るからに勢い込んでせっせとチラシを職場に運び込んでいたし、その後もしきりと白砂さんのことを気にしているようだ。
だがケイのお兄さんは早めの店じまいが大好きなので、小熊さんが帰宅する頃にはマエストロのカフェ部は既に閉店していることが多かった。
それでも小熊さんは、片付けをしている白砂さんの様子を伺うようにしてフロアに居座っているし、仕事が休みの日などは朝から晩までカフェ席にいる。
これはもう誰が見ても、恋多き電ボの小熊さんが白砂さんに夢中になっているのが一目瞭然なわけだが、なんというか小熊さんのアピールはどうにも的外れな感じが否めなかった。
それでなくとも白砂さんは、店に出ても相変わらずの仏頂面&軍人口調そのまんまなので、大概の客は面食らっている。
幸い、あのガイジン然とした銀髪碧眼のおかげで、態度がちょっとアレなのは、日本慣れしてないからだろうと客の方で勝手に許容してくれるので、トラブルには至ってないが。
それに俺も最初は面食らった白砂さんのぶっきらぼうな態度や表情は、これまでの生活環境に由来しているようで、一緒に仕事をしてみたら、態度ほどにはぶっきらぼうな人ではなく、むしろ親切な人なんじゃないかと思っている。
何より白砂さんの仕事の丁寧さ、隅々にまでこだわりを持った美意識の高さには、本当に感服した。
店の手伝いをしているときも、こちらも手抜かりの無いようにと、俺とケイが手分けをして閉店前の片付けと床の掃除をしているところに、今日もまた小熊さんが店に入ってきた。
隅々にまで気を払っている白砂さんは、店に人が来るとすぐに気づくので、厨房からスッと出てきて、ショーケースのところに立っていた小熊さんに向かって言った。
「今日はもう、閉店するところだ」
白砂さんを前にした小熊さんは、誰が見ても丸わかりなほどのぼせ上がった顔をしていて、本当に白砂さんの美貌にメロメロになっているようだ。
だが前述のように白砂さんは、かなり変わったクセのある人だ。
対人スキルに欠けていて美意識の高い白砂さんにアプローチするなら、出来るだけストレートに、しかもそれなりにロマンチックな演出付きでするのが一番有効だと思う。
だが小熊さんは、ショーケースを挟んで立っている白砂さんをポーっとした顔で見つつ、
「今日、キドニーを焼いたって書いてありましたけど…」
なんて、まったく色気のないセリフを言っただけだった。
マエストロ神楽坂では、商品ラインナップを毎回ツイートしている。
以前はお兄さんが気まぐれでキッシュやピザを焼いた時に、タモンさんが大雑把なツイートをしていたらしいが、今では白砂さんが焼き上がり時間毎に正確な呟きをしていて、小熊さんはそれを逐一チェックしているのだろう。
「キドニーは、残っていない」
例によってぶっきらぼうに、表情もほとんど変えずに白砂さんが小熊さんに答えた。
「残念だなぁ。僕は白砂さんのパイの中でも、キドニーが1番お気に入りなんですよ。それじゃあ、他は何か残ってるんですか?」
「惣菜になるような商品は、もう何も無い。ベリーのパイとグレープフルーツのタルトが、1ピースづつあるだけだ」
「じゃあ、両方ください」
「了解した」
「あ、そうだ。コレに…」
小熊さんは鞄の中からタッパーウェアを出した。
「なにかね、これは?」
「部屋は直ぐ上ですから。わざわざ包装してもらっても包装紙やらシールやら、開くの手間なんです。だからココに入れて貰えると簡単かなって」
安直に考えるなら、現実的というか、省資源みたいな方面では、いい発案だと思う。
でもマエストロのような洒落た店で購入する菓子類は、普通の人にはちょっとした "特別な" 買い物だと思うし、それを綺麗な紙箱や包装紙に包んでもらうことも楽しみの一部にしていると思う。
故に小熊さんの発言は、店の隅々にまで美意識を発揮している白砂さんに対する提案としては、あまり気の利いたアピールとは思えなかった。
案の定白砂さんは、仏頂面をますます不機嫌そうにしながら、差し出されたタッパーを数秒黙って見下ろしていた。
そしてナニカを諦めたらしく、黙ってコクンと頷くと、受け取ったタッパーにパイを入れ始めた。
そんなアピールじゃ全然ダメじゃんか…と俺は思ったが、小熊さんは頬を赤らめ嬉しそうにしている。
もしかして小熊さんは、白砂さんがタッパーなんか出されてガッカリしてることに、全然気付いてないのか?
だとしたらまったく救い難い状況で、見てるこっちの方が辛くなってきた。
「では、おつりとレシートだ」
商品を渡され、代金を支払ったところで、小熊さんはまだ数秒、ポーっとなったまま白砂さんの顔を見ていたが、思い出したようにまた突然大きな声を出した。
「あ、あのっ、白砂サンっ!」
叫ばれた白砂さんはあまり表情も変えずにいたが、その声の大きさにはテラスの掃除をしていたケイまでが手を止めて、驚いたようにこちらを見ている。
「おつりが間違っていたかね?」
「いいえ、そうじゃなくてっ! ええっと、あの…今度の水曜か木曜に、映画を観に行きませんか?」
小熊さんの顔を見ながら瞬きを3回ぐらいしてから、白砂さんが口を開いた。
「返事は、敬一に相談してからで良いかね?」
「え…っ? あ…ええっと…」
頑張ってデートの誘いをして緊張しているのか、小熊さんは舌を噛みそうな感じだし、反応が悪い。
他人事ながら歯痒くなって、俺は横から口を挟んでしまった。
「映画って、デートですか? もしよかったら、俺もケイを誘ってダブルデートに便乗させてもらってもいいですか?」
「私は、一緒でも構わないが、それも敬一に相談してからでないと返事は出来ないね」
俺としては、ケイとデートする口実に使わせてもらおうとした…てのもあったけど、それ以上に白砂さんに対して的外れなことばかりしている小熊さんのアプローチが、あまりに歯痒いので、少しフォローしてやりたい気持ちから申し出たことだった。
だというのに小熊さんは、なぜかますます焦った様子になって、どうにも歯切れの悪い音ばかり出している。
俺はテラスにいるケイを呼び寄せた。
「小熊さんが、水曜か木曜に白砂さんと映画を見に行きたいって言ってるんだけど、どうかな? もし行けるようなら、俺達も同行させてもらわないか?」
「そうだな、俺も映画館なんて久しぶりだ」
ケイはちょっと待っていてくれと言って、スマホのスケジュール帳を見つつ、ペントハウスのお兄さんと話をしてからOKサインを出してきた。
「水曜日を店休にします」
「じゃあ、俺達も映画にご一緒させてもらっていいですか?」
俺が問うと、白砂さんが心なし嬉しそうにコクンと頷いてくる。
「小熊君さえ、よければ」
「はい…いいです」
小熊さんはやっぱり歯切れの悪い、さっきとまったく同じ返事をしたので、俺達は水曜日に映画でダブルデートすることになった。
他ならぬケイの頼みとあっては断る選択肢はないので、PCで適当なサイズにカットと文字を並べたチラシのようなものを作って、プリントアウトして渡しておいた。
するとケイのお兄さんが、どこでどう調達してきたのやら、そのチラシをたっぷりの印刷物に増量して持ち帰ってきて、ペントハウスに来る面々に、チラシを知人や周囲に適当に配って宣伝をしてくれと言う。
もちろん俺もケイも海老坂も受け取ったし、2階のマッサージ&ヨガ教室でも配ったし、小熊さんは英会話教室に持ち込んだようだし、多聞サンは商店街の方へ頼みに行ってあちこちにそのチラシを置いてもらったようだ。
ケイのお兄さんがミナミに頼めば、もっと大々的なリニューアル・キャンペーンを打つことも可能だったと思うが、お兄さんはミナミがどんなにお兄さんに甘い顔をしていても、負い目を作るような事はしたく無いのだと言う。
まぁお兄さんの言うことは、俺にも分かる気がした。
なんせミナミはあんなストーカー紛いの変な奴だし、それに店の主導権を握られたりするのも嫌なのだろう。
マエストロの営業方針に関しては、営業時間以上に、店舗の責任者をハッキリと決めたのも大きな変化だったと思う。
今まではケイのお兄さんがオーナーで、正社員のタモンさんにバイトのケイって構成だったのを、タモンさんはアナログレコード部の店長、白砂さんがカフェ部の店長という肩書に変えた。
そうして白砂さんが仕切るようになったカフェ部は、リニューアルオープン後には今までの常連に加えて新規のお客もチラホラと来店するようになった。
当初はキッチンとフロアを白砂さんが一人で切り盛りするつもりだったようだが、いざ開店してみると昔からの常連が予想以上に頻繁に来店してくるし、新規の客も入るしで、午前中はタモンさんが、午後からはケイも加わってフロアの業務をやり、その場に居合わせれば俺と海老坂もそれを手伝っている。
というのもケイは、実は昔から女子というか女性全般が苦手で、それはたぶん子供の頃のアクシデントが未だに尾を引いていると思うのだが、その辺りのケイの事情を俺と海老坂がフォローしている。
そういうワケで俺は、登校している以外のほとんどの時間を赤ビルの中で過ごすようになっているのだが、手伝いをしている俺や海老坂以上に、マエストロのカフェフロアに入り浸っているのが小熊さんだった。
リニューアルオープン宣伝の際にも、見るからに勢い込んでせっせとチラシを職場に運び込んでいたし、その後もしきりと白砂さんのことを気にしているようだ。
だがケイのお兄さんは早めの店じまいが大好きなので、小熊さんが帰宅する頃にはマエストロのカフェ部は既に閉店していることが多かった。
それでも小熊さんは、片付けをしている白砂さんの様子を伺うようにしてフロアに居座っているし、仕事が休みの日などは朝から晩までカフェ席にいる。
これはもう誰が見ても、恋多き電ボの小熊さんが白砂さんに夢中になっているのが一目瞭然なわけだが、なんというか小熊さんのアピールはどうにも的外れな感じが否めなかった。
それでなくとも白砂さんは、店に出ても相変わらずの仏頂面&軍人口調そのまんまなので、大概の客は面食らっている。
幸い、あのガイジン然とした銀髪碧眼のおかげで、態度がちょっとアレなのは、日本慣れしてないからだろうと客の方で勝手に許容してくれるので、トラブルには至ってないが。
それに俺も最初は面食らった白砂さんのぶっきらぼうな態度や表情は、これまでの生活環境に由来しているようで、一緒に仕事をしてみたら、態度ほどにはぶっきらぼうな人ではなく、むしろ親切な人なんじゃないかと思っている。
何より白砂さんの仕事の丁寧さ、隅々にまでこだわりを持った美意識の高さには、本当に感服した。
店の手伝いをしているときも、こちらも手抜かりの無いようにと、俺とケイが手分けをして閉店前の片付けと床の掃除をしているところに、今日もまた小熊さんが店に入ってきた。
隅々にまで気を払っている白砂さんは、店に人が来るとすぐに気づくので、厨房からスッと出てきて、ショーケースのところに立っていた小熊さんに向かって言った。
「今日はもう、閉店するところだ」
白砂さんを前にした小熊さんは、誰が見ても丸わかりなほどのぼせ上がった顔をしていて、本当に白砂さんの美貌にメロメロになっているようだ。
だが前述のように白砂さんは、かなり変わったクセのある人だ。
対人スキルに欠けていて美意識の高い白砂さんにアプローチするなら、出来るだけストレートに、しかもそれなりにロマンチックな演出付きでするのが一番有効だと思う。
だが小熊さんは、ショーケースを挟んで立っている白砂さんをポーっとした顔で見つつ、
「今日、キドニーを焼いたって書いてありましたけど…」
なんて、まったく色気のないセリフを言っただけだった。
マエストロ神楽坂では、商品ラインナップを毎回ツイートしている。
以前はお兄さんが気まぐれでキッシュやピザを焼いた時に、タモンさんが大雑把なツイートをしていたらしいが、今では白砂さんが焼き上がり時間毎に正確な呟きをしていて、小熊さんはそれを逐一チェックしているのだろう。
「キドニーは、残っていない」
例によってぶっきらぼうに、表情もほとんど変えずに白砂さんが小熊さんに答えた。
「残念だなぁ。僕は白砂さんのパイの中でも、キドニーが1番お気に入りなんですよ。それじゃあ、他は何か残ってるんですか?」
「惣菜になるような商品は、もう何も無い。ベリーのパイとグレープフルーツのタルトが、1ピースづつあるだけだ」
「じゃあ、両方ください」
「了解した」
「あ、そうだ。コレに…」
小熊さんは鞄の中からタッパーウェアを出した。
「なにかね、これは?」
「部屋は直ぐ上ですから。わざわざ包装してもらっても包装紙やらシールやら、開くの手間なんです。だからココに入れて貰えると簡単かなって」
安直に考えるなら、現実的というか、省資源みたいな方面では、いい発案だと思う。
でもマエストロのような洒落た店で購入する菓子類は、普通の人にはちょっとした "特別な" 買い物だと思うし、それを綺麗な紙箱や包装紙に包んでもらうことも楽しみの一部にしていると思う。
故に小熊さんの発言は、店の隅々にまで美意識を発揮している白砂さんに対する提案としては、あまり気の利いたアピールとは思えなかった。
案の定白砂さんは、仏頂面をますます不機嫌そうにしながら、差し出されたタッパーを数秒黙って見下ろしていた。
そしてナニカを諦めたらしく、黙ってコクンと頷くと、受け取ったタッパーにパイを入れ始めた。
そんなアピールじゃ全然ダメじゃんか…と俺は思ったが、小熊さんは頬を赤らめ嬉しそうにしている。
もしかして小熊さんは、白砂さんがタッパーなんか出されてガッカリしてることに、全然気付いてないのか?
だとしたらまったく救い難い状況で、見てるこっちの方が辛くなってきた。
「では、おつりとレシートだ」
商品を渡され、代金を支払ったところで、小熊さんはまだ数秒、ポーっとなったまま白砂さんの顔を見ていたが、思い出したようにまた突然大きな声を出した。
「あ、あのっ、白砂サンっ!」
叫ばれた白砂さんはあまり表情も変えずにいたが、その声の大きさにはテラスの掃除をしていたケイまでが手を止めて、驚いたようにこちらを見ている。
「おつりが間違っていたかね?」
「いいえ、そうじゃなくてっ! ええっと、あの…今度の水曜か木曜に、映画を観に行きませんか?」
小熊さんの顔を見ながら瞬きを3回ぐらいしてから、白砂さんが口を開いた。
「返事は、敬一に相談してからで良いかね?」
「え…っ? あ…ええっと…」
頑張ってデートの誘いをして緊張しているのか、小熊さんは舌を噛みそうな感じだし、反応が悪い。
他人事ながら歯痒くなって、俺は横から口を挟んでしまった。
「映画って、デートですか? もしよかったら、俺もケイを誘ってダブルデートに便乗させてもらってもいいですか?」
「私は、一緒でも構わないが、それも敬一に相談してからでないと返事は出来ないね」
俺としては、ケイとデートする口実に使わせてもらおうとした…てのもあったけど、それ以上に白砂さんに対して的外れなことばかりしている小熊さんのアプローチが、あまりに歯痒いので、少しフォローしてやりたい気持ちから申し出たことだった。
だというのに小熊さんは、なぜかますます焦った様子になって、どうにも歯切れの悪い音ばかり出している。
俺はテラスにいるケイを呼び寄せた。
「小熊さんが、水曜か木曜に白砂さんと映画を見に行きたいって言ってるんだけど、どうかな? もし行けるようなら、俺達も同行させてもらわないか?」
「そうだな、俺も映画館なんて久しぶりだ」
ケイはちょっと待っていてくれと言って、スマホのスケジュール帳を見つつ、ペントハウスのお兄さんと話をしてからOKサインを出してきた。
「水曜日を店休にします」
「じゃあ、俺達も映画にご一緒させてもらっていいですか?」
俺が問うと、白砂さんが心なし嬉しそうにコクンと頷いてくる。
「小熊君さえ、よければ」
「はい…いいです」
小熊さんはやっぱり歯切れの悪い、さっきとまったく同じ返事をしたので、俺達は水曜日に映画でダブルデートすることになった。
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