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第14話
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街道は、濃い霧が立ち込めていた。
自分以外の人影は見えず、それが余計に今の柊一の気持ちを焦らせる。
こんなにも焦った気持ちでは、いざという時に支障をきたしてしまうと解っていても、どうしようもない。
剣士としての未熟さを感じながら、それでも他にどうする術もなく、ひたすら街道を急ぐ。
多聞の噂を聞かなくなって、どれほどにもなろうか?
遙か先に行ってしまったのか?
途中で追い越してしまったのか?
それとも、道を違えてしまったのか?
先に進むべきか、戻って情報を集めるべきか、迷い。
その迷いの時間がもどかしくて、先に進む。
だが、進めば今度は戻らねばならないような気がしてきて。
ますます気ばかり焦って、柊一は完全に冷静な判断力を失っていた。
峠に入る前にあった茶店の老爺は、これから霧が濃くなるばかりだし、日暮れも近いからと引き留めてくれたのだが。
それを丁重に断って、柊一は峠の道に踏み込んだ。
あの時、老爺の言葉に従っておくべきだったのだろう。
少なくとも、平素の冷静さがあれば、自分の身体に訪れる不調の前触れを感じ取っていたはずなのだから。
目の前の道が、大きく歪んで見えた…と思った時には、膝から力が抜け落ちていた。
道の真ん中に座り込んでしまった事に気付くまで、数秒を要しただろう。
身体の内から湧き上がってくる、己がもっとも嫌悪する「感覚」を必死の思いで押さえ込み、柊一は這いずるようにして側の茂みに移動した。
発作に近い「衝動」が訪れるまでには、まだ少し余裕がある。
震える手で自分の肩を抱き、柊一は固く目を閉じた。
ほんの少しでも眠る事が出来れば、「衝動」をやり過ごす事が出来る。
今までの体験から、柊一はそれを知っていた。
うとうとと、眠っただろうか?
近くから聞こえる話し声で、柊一は意識を取り戻す。
「…ヤツがいれば商家にたかるより金になるだろう」
ボソボソと低い声で囁かれる会話は、聴き取りにくい。
だが、意識の表面をチクチクと刺激する程度に音が耳に入ってくる為に、眠る事も出来ない。
「アイツは人間じゃない。ケダモノだ」
一瞬掠めたその単語に、柊一は目を開いた。
「だが、ヤツの腕は確かだ。使い方によっては、コチラの手を汚さずにヤツに仕事をさせるだけで、金が転がり込んでくる」
意識を集めれば、なんとか言葉の意味が通じる程度に会話を聞き取れる。
ケダモノと呼ばれる人物は、もしかして多聞の事なのではないかと思い、柊一は身を起こそうとしたのだが。
「誰だ!」
自分で思っているよりも、身体は重く反応も鈍い。
気配を感じ取った会話の主達が、茂みを分けて現れる。
抜刀している浪人が、二人。
どうみても、話して通じるような輩ではなさそうだ。
身を屈めたまま、柊一も柄に手を掛ける。
「話を聞かれたぞ」
「慌てるな、聞かれたのなら死んでもらえば済む事だ」
一人が大上段に振り上げた剣を打ち込んでくる一瞬を付いて、柊一は抜刀して街道に飛び出した。
平素なら、この程度の輩を打ちのめすのに手間を掛ける事など無い。
剣を抜く事すらなく、素手で叩き伏せる事も可能なはずだ。
しかし。
気合いの声を発して討ち掛かってきた相手を避ける、それだけの動きが苛立つ程に緩慢で、咄嗟に反応出来ない。
全身が熱っぽく、視界が歪む。
手加減をして叩きのめし、相手の意識を失わせてその場を去ろうと思っていたが、それでは済みそうもない。
抜いた剣の切っ先で、相手の顔に傷をつけるだけのつもりが、気付けば喉を切り裂いていた。
「ちっ!」
連れが倒れ伏した事で、逆上した浪人が激しく打ち込んできた。
応戦をする、自分の足が蹌踉めくのを感じる。
もう、これ以上はどうする事も不可能と、柊一が相手の命を奪うつもりで構えた時。
不意に、後ろの茂みから新たな人物が現れた。
「…っ!」
その気配に振り向くより早く、打ち込まれた一撃に目の前が真っ暗になる。
くずおれた柊一の側に駆け寄った浪人が、持っていた剣でとどめを刺そうとするのを、その長身の剣士は押しとどめた。
「やめておけ」
「しかし、話を聞かれたぞっ! ヤツも討たれた」
「ヤツがいないなら、分け前が増えただけさ。死体の数が増えれば、逆に足がつきやすくなる。身ぐるみ剥いでおけば、勝手に自分で役人から逃げ回ってくれるだけ、コチラの手間が省けるってモンだろう?」
剣士の言葉に、浪人は納得したようだった。
「とにかく、こんな街道の真ん中ではいつ誰が通りかかるかわからんから、そっちに運べ」
倒れている浪人の死体を乱暴に掴むと、剣士は茂みの奥へと姿を消す。
残った浪人は、慌てて柊一を担ぎ上げると剣士の後を追った。
近くの河原に出た剣士は、持っていた浪人の死体を流れの速い川に投げ込んだ。
「そっちは、どうだ?」
「コイツ、随分上物の剣を持ってるぜ」
柊一の持ち物を物色していた浪人は、既に相棒の事などどうでも良くなっているようだった。
「おい、ちょっと待て。コイツは…拾いモノかもしれないぜ」
衣服を剥ぎ取られて、裸でそこに転がされている柊一の身体を眺め、剣士は表情を変えた。
「拾いモノ? 武家の娘とかいうならともかく、コイツの身体に価値があるのか?」
「なんだ、オマエ知らないのか?」
剣士は薄く笑うと、柊一の身体を抱き上げて、両手で大きく足を開かせた。
「ホラ、よく見てみろよ。面白い穴があるだろう?」
「なんだ、コイツ?」
しげしげと覗き込んだ浪人は、柊一の性器を見て瞠目する。
「オンナ…なのか?」
「どちらでもあり、どちらでもないのさ。ココはオンナのそれと同じ様に濡れるが、妊む事は出来ないらしい。穴が狭いから食いちぎられんばかりに絞まって、一度抱くと病み付きになるって話だ。判るヤツに売れば、商家を強請るより金になる」
「本当か?」
「まぁ、先に情婦(イロ)の代わりに楽しんだ後でも、値は変わらないだろうな」
剣士は抱えたまま、柊一の胸元をまさぐった。
意識を失っているはずの身体が、ピクリと反応を返す。
その様子に、浪人もまた顔つきを変えた。
「感じてやがる…、よっぽどのスキモノだな、コイツ…」
「一丁前に、勃ってきたな。ブッ掛けられちゃたまらんから、根本を絞めておくか」
細い紐を取り出すと、剣士は緩く立ち上がり始めた柊一のソレの中程をきつく縛り上げる。
浪人は柊一の小さな秘所を、物珍しげに指先で弄り回していたが、そこからジワリと蜜が溢れだしてきたのを見ると、堪えきれずに顔を埋めた。
舌で嬲れば、花弁がヒクヒクと震えながらますます熱い蜜が溢れ出す。
「ここが随分、イイらしいな」
反応を探るように舐め回していた浪人は、縛り上げられた幹の根本にある、柔らかい場所に噛み付いた。
「うあぁぁぁっ!」
ビクリと身体を強張らせ、柊一は覚醒する。
咄嗟に自分がおかれている状況を理解出来ず、混乱したまま辺りを見回す柊一の腕を取ると、剣士はそれを背中に回して押さえ込んだ。
「は…なせっ!」
「大人しくしていれば、酷くはしないさ」
低く笑うと、剣士は柊一の充血している突起を摘み上げる。
「や…あっ!」
「随分、敏感だな。ココが、そんなにイイのか?」
親指と人差し指で摘み上げたまま、強くこね回すと、柊一は全身を強張らせた。
「先刻は随分、手こずらせてくれたじゃないか」
柊一が覚醒した事に気付き、浪人も笑う。
足を押し広げられ、身体の秘密を暴き出されて、柊一は屈辱に押しつぶされそうだった。
その柊一の様子を楽しむように、浪人は再びあの一番感じやすい部分に歯を立てる。
「あぁぁっ!」
ソコを責め立てられると、もう声を抑える事など出来ない。
今までに何度も強いられた多聞との行為は、男性を受け入れる事を覚えさせるには充分だった。
時々襲ってくる、発作じみた体調の崩れも、昔はただ目眩や身体のだるさだけで終わっていたが、最近では己で己を慰めるような行為に及びたい衝動に駆られる事もしばしばだった。
この、身体が火照っている今の状況で犯された場合、自分でも想像が出来ないような痴態を演じてしまいそうで。
既に、蜜を溢れさせているその場所は、熱い楔を待ちわびてヒクついているのが自分でも解る。
「い…やだ……っ!」
必死なって抗うのに、手足はもうほとんど自分の意志の通りに動く事を拒絶して。
男達の愛撫に、腰を振ってねだってしまいそうだった。
「あ……あぁ………っ! や…ぁ…っ! ……レ……ン!」
ワケも判らず、柊一はもう自分がなにを叫んでいたのかすら自覚はなかった。
「…おい、ちょっと待てよ、アンタ、多聞のイロなのかよ…?」
剣士に頬を叩かれた事も、柊一はもう判らないぐらい混乱している。
不審な顔で、剣士が浪人を制止しようとしたその瞬間、ヒュッと空を切る音が響いた。
「…っ!」
屈み込んでいた浪人の首が、いきなりコロリと胴から離れて地面を転がっていったと思ったら、顔に熱い飛沫を感じる。
抱いている柊一の白い肌が見る間に鮮血で染まるのを見て、剣士は思わず手を離していた。
ハッと気付いた時には、目の前に切っ先が突きつけられている。
「…多聞サン…、やっぱコレ、アンタのイロだったの?」
「白王華…か? なんだ、こんなところで随分シケたコトやってるじゃないか」
相手の顔を見極めて、多聞は剣を退く。
「最近はデカイ仕事もないんでね。まぁ、ちょいと小遣い稼ぎさ」
呆けたままそこに仰向けに倒れた柊一を抱き上げると、多聞はチラッとだけ白王華に目を向ける。
「そいつ、いきなり切っちまって、悪かったな」
「アンタの持ち物だと知らなかったんでね、こっちも悪かったよ。…にしても、アンタがイロを作るなんて、意外すぎてたまげたぜ?」
「持ち物でも、イロでもない。…コイツは、俺が親の仇だからとつきまとってるだけだ。少しばかり骨があるから、生かしてやってるだけでな」
多聞の答えに、白王華は口笛を吹く。
「そんな上玉、放ってあるのかよ! もったいねぇナァ。でも、アンタの持ち物じゃないんなら、俺のイロにしちまってもイイってコトかよ?」
「出来るモンなら、やってみろ」
浪人が剥ぎ取った柊一の衣服をまとめると、多聞は柊一を抱いて立ち上がる。
柊一は虚ろな目を中空に漂わせたまま、されるがままに多聞の腕に抱かれていた。
「じゃあ、またそのうちにな。なんかイイ金儲けの話があったら、持ってくよ」
「オマエに関わると、割に合わん」
ニイッと笑った白王華に、多聞は一瞥を返しただけだった。
自分以外の人影は見えず、それが余計に今の柊一の気持ちを焦らせる。
こんなにも焦った気持ちでは、いざという時に支障をきたしてしまうと解っていても、どうしようもない。
剣士としての未熟さを感じながら、それでも他にどうする術もなく、ひたすら街道を急ぐ。
多聞の噂を聞かなくなって、どれほどにもなろうか?
遙か先に行ってしまったのか?
途中で追い越してしまったのか?
それとも、道を違えてしまったのか?
先に進むべきか、戻って情報を集めるべきか、迷い。
その迷いの時間がもどかしくて、先に進む。
だが、進めば今度は戻らねばならないような気がしてきて。
ますます気ばかり焦って、柊一は完全に冷静な判断力を失っていた。
峠に入る前にあった茶店の老爺は、これから霧が濃くなるばかりだし、日暮れも近いからと引き留めてくれたのだが。
それを丁重に断って、柊一は峠の道に踏み込んだ。
あの時、老爺の言葉に従っておくべきだったのだろう。
少なくとも、平素の冷静さがあれば、自分の身体に訪れる不調の前触れを感じ取っていたはずなのだから。
目の前の道が、大きく歪んで見えた…と思った時には、膝から力が抜け落ちていた。
道の真ん中に座り込んでしまった事に気付くまで、数秒を要しただろう。
身体の内から湧き上がってくる、己がもっとも嫌悪する「感覚」を必死の思いで押さえ込み、柊一は這いずるようにして側の茂みに移動した。
発作に近い「衝動」が訪れるまでには、まだ少し余裕がある。
震える手で自分の肩を抱き、柊一は固く目を閉じた。
ほんの少しでも眠る事が出来れば、「衝動」をやり過ごす事が出来る。
今までの体験から、柊一はそれを知っていた。
うとうとと、眠っただろうか?
近くから聞こえる話し声で、柊一は意識を取り戻す。
「…ヤツがいれば商家にたかるより金になるだろう」
ボソボソと低い声で囁かれる会話は、聴き取りにくい。
だが、意識の表面をチクチクと刺激する程度に音が耳に入ってくる為に、眠る事も出来ない。
「アイツは人間じゃない。ケダモノだ」
一瞬掠めたその単語に、柊一は目を開いた。
「だが、ヤツの腕は確かだ。使い方によっては、コチラの手を汚さずにヤツに仕事をさせるだけで、金が転がり込んでくる」
意識を集めれば、なんとか言葉の意味が通じる程度に会話を聞き取れる。
ケダモノと呼ばれる人物は、もしかして多聞の事なのではないかと思い、柊一は身を起こそうとしたのだが。
「誰だ!」
自分で思っているよりも、身体は重く反応も鈍い。
気配を感じ取った会話の主達が、茂みを分けて現れる。
抜刀している浪人が、二人。
どうみても、話して通じるような輩ではなさそうだ。
身を屈めたまま、柊一も柄に手を掛ける。
「話を聞かれたぞ」
「慌てるな、聞かれたのなら死んでもらえば済む事だ」
一人が大上段に振り上げた剣を打ち込んでくる一瞬を付いて、柊一は抜刀して街道に飛び出した。
平素なら、この程度の輩を打ちのめすのに手間を掛ける事など無い。
剣を抜く事すらなく、素手で叩き伏せる事も可能なはずだ。
しかし。
気合いの声を発して討ち掛かってきた相手を避ける、それだけの動きが苛立つ程に緩慢で、咄嗟に反応出来ない。
全身が熱っぽく、視界が歪む。
手加減をして叩きのめし、相手の意識を失わせてその場を去ろうと思っていたが、それでは済みそうもない。
抜いた剣の切っ先で、相手の顔に傷をつけるだけのつもりが、気付けば喉を切り裂いていた。
「ちっ!」
連れが倒れ伏した事で、逆上した浪人が激しく打ち込んできた。
応戦をする、自分の足が蹌踉めくのを感じる。
もう、これ以上はどうする事も不可能と、柊一が相手の命を奪うつもりで構えた時。
不意に、後ろの茂みから新たな人物が現れた。
「…っ!」
その気配に振り向くより早く、打ち込まれた一撃に目の前が真っ暗になる。
くずおれた柊一の側に駆け寄った浪人が、持っていた剣でとどめを刺そうとするのを、その長身の剣士は押しとどめた。
「やめておけ」
「しかし、話を聞かれたぞっ! ヤツも討たれた」
「ヤツがいないなら、分け前が増えただけさ。死体の数が増えれば、逆に足がつきやすくなる。身ぐるみ剥いでおけば、勝手に自分で役人から逃げ回ってくれるだけ、コチラの手間が省けるってモンだろう?」
剣士の言葉に、浪人は納得したようだった。
「とにかく、こんな街道の真ん中ではいつ誰が通りかかるかわからんから、そっちに運べ」
倒れている浪人の死体を乱暴に掴むと、剣士は茂みの奥へと姿を消す。
残った浪人は、慌てて柊一を担ぎ上げると剣士の後を追った。
近くの河原に出た剣士は、持っていた浪人の死体を流れの速い川に投げ込んだ。
「そっちは、どうだ?」
「コイツ、随分上物の剣を持ってるぜ」
柊一の持ち物を物色していた浪人は、既に相棒の事などどうでも良くなっているようだった。
「おい、ちょっと待て。コイツは…拾いモノかもしれないぜ」
衣服を剥ぎ取られて、裸でそこに転がされている柊一の身体を眺め、剣士は表情を変えた。
「拾いモノ? 武家の娘とかいうならともかく、コイツの身体に価値があるのか?」
「なんだ、オマエ知らないのか?」
剣士は薄く笑うと、柊一の身体を抱き上げて、両手で大きく足を開かせた。
「ホラ、よく見てみろよ。面白い穴があるだろう?」
「なんだ、コイツ?」
しげしげと覗き込んだ浪人は、柊一の性器を見て瞠目する。
「オンナ…なのか?」
「どちらでもあり、どちらでもないのさ。ココはオンナのそれと同じ様に濡れるが、妊む事は出来ないらしい。穴が狭いから食いちぎられんばかりに絞まって、一度抱くと病み付きになるって話だ。判るヤツに売れば、商家を強請るより金になる」
「本当か?」
「まぁ、先に情婦(イロ)の代わりに楽しんだ後でも、値は変わらないだろうな」
剣士は抱えたまま、柊一の胸元をまさぐった。
意識を失っているはずの身体が、ピクリと反応を返す。
その様子に、浪人もまた顔つきを変えた。
「感じてやがる…、よっぽどのスキモノだな、コイツ…」
「一丁前に、勃ってきたな。ブッ掛けられちゃたまらんから、根本を絞めておくか」
細い紐を取り出すと、剣士は緩く立ち上がり始めた柊一のソレの中程をきつく縛り上げる。
浪人は柊一の小さな秘所を、物珍しげに指先で弄り回していたが、そこからジワリと蜜が溢れだしてきたのを見ると、堪えきれずに顔を埋めた。
舌で嬲れば、花弁がヒクヒクと震えながらますます熱い蜜が溢れ出す。
「ここが随分、イイらしいな」
反応を探るように舐め回していた浪人は、縛り上げられた幹の根本にある、柔らかい場所に噛み付いた。
「うあぁぁぁっ!」
ビクリと身体を強張らせ、柊一は覚醒する。
咄嗟に自分がおかれている状況を理解出来ず、混乱したまま辺りを見回す柊一の腕を取ると、剣士はそれを背中に回して押さえ込んだ。
「は…なせっ!」
「大人しくしていれば、酷くはしないさ」
低く笑うと、剣士は柊一の充血している突起を摘み上げる。
「や…あっ!」
「随分、敏感だな。ココが、そんなにイイのか?」
親指と人差し指で摘み上げたまま、強くこね回すと、柊一は全身を強張らせた。
「先刻は随分、手こずらせてくれたじゃないか」
柊一が覚醒した事に気付き、浪人も笑う。
足を押し広げられ、身体の秘密を暴き出されて、柊一は屈辱に押しつぶされそうだった。
その柊一の様子を楽しむように、浪人は再びあの一番感じやすい部分に歯を立てる。
「あぁぁっ!」
ソコを責め立てられると、もう声を抑える事など出来ない。
今までに何度も強いられた多聞との行為は、男性を受け入れる事を覚えさせるには充分だった。
時々襲ってくる、発作じみた体調の崩れも、昔はただ目眩や身体のだるさだけで終わっていたが、最近では己で己を慰めるような行為に及びたい衝動に駆られる事もしばしばだった。
この、身体が火照っている今の状況で犯された場合、自分でも想像が出来ないような痴態を演じてしまいそうで。
既に、蜜を溢れさせているその場所は、熱い楔を待ちわびてヒクついているのが自分でも解る。
「い…やだ……っ!」
必死なって抗うのに、手足はもうほとんど自分の意志の通りに動く事を拒絶して。
男達の愛撫に、腰を振ってねだってしまいそうだった。
「あ……あぁ………っ! や…ぁ…っ! ……レ……ン!」
ワケも判らず、柊一はもう自分がなにを叫んでいたのかすら自覚はなかった。
「…おい、ちょっと待てよ、アンタ、多聞のイロなのかよ…?」
剣士に頬を叩かれた事も、柊一はもう判らないぐらい混乱している。
不審な顔で、剣士が浪人を制止しようとしたその瞬間、ヒュッと空を切る音が響いた。
「…っ!」
屈み込んでいた浪人の首が、いきなりコロリと胴から離れて地面を転がっていったと思ったら、顔に熱い飛沫を感じる。
抱いている柊一の白い肌が見る間に鮮血で染まるのを見て、剣士は思わず手を離していた。
ハッと気付いた時には、目の前に切っ先が突きつけられている。
「…多聞サン…、やっぱコレ、アンタのイロだったの?」
「白王華…か? なんだ、こんなところで随分シケたコトやってるじゃないか」
相手の顔を見極めて、多聞は剣を退く。
「最近はデカイ仕事もないんでね。まぁ、ちょいと小遣い稼ぎさ」
呆けたままそこに仰向けに倒れた柊一を抱き上げると、多聞はチラッとだけ白王華に目を向ける。
「そいつ、いきなり切っちまって、悪かったな」
「アンタの持ち物だと知らなかったんでね、こっちも悪かったよ。…にしても、アンタがイロを作るなんて、意外すぎてたまげたぜ?」
「持ち物でも、イロでもない。…コイツは、俺が親の仇だからとつきまとってるだけだ。少しばかり骨があるから、生かしてやってるだけでな」
多聞の答えに、白王華は口笛を吹く。
「そんな上玉、放ってあるのかよ! もったいねぇナァ。でも、アンタの持ち物じゃないんなら、俺のイロにしちまってもイイってコトかよ?」
「出来るモンなら、やってみろ」
浪人が剥ぎ取った柊一の衣服をまとめると、多聞は柊一を抱いて立ち上がる。
柊一は虚ろな目を中空に漂わせたまま、されるがままに多聞の腕に抱かれていた。
「じゃあ、またそのうちにな。なんかイイ金儲けの話があったら、持ってくよ」
「オマエに関わると、割に合わん」
ニイッと笑った白王華に、多聞は一瞥を返しただけだった。
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