愛にはぐれた獣は闇夜に溶ける

RU

文字の大きさ
上 下
2 / 15

第2話

しおりを挟む
 鞘に収まっている長剣を、背中の元の位置に戻してから、多聞は倒れている柊一の側へ寄った。
 意識を失っているが、ちゃんと息をしている。骨が折れているような様子もない。
 ジッとその顔を見つめ、少し意外な気持ちになった。
 目を閉じている。たったそれだけのことで、これほど印象が変わるとは思わなかった。
 あの挑み掛かってきた時の、攻撃的でなおかつ強さとしなやかさを感じさせていたものが、今はまるでなりを潜めてしまっている。
 その身体でさえも、一回り小さく見えるほどだ。
 そう。対峙していた時は自分と同じほどもあるかと思っていたのに。
 多聞は柊一の腰から鞘を抜き取ると、柊一の剣を拾って収めた。
 そして、その身体を担ぎ上げる。
 もと来た林の中を少し下ると、野盗達の根城になっていたと思わしき小屋があった。
 開け放たれた扉の中を覗くと、今しがたまで人がいた気配が残っている。
 何の躊躇もなく、多聞は中に入った。
 野盗達は、もう二度とこの小屋を使う事はないのだから、遠慮をする必要もない。
 板張りの床にゴザが敷かれている粗末な造りの上に、柊一の身体を降ろす。
 見回すと、壁に細引きの縄が掛かっていた。
 柊一の身体から着衣を剥ぎ、壁から取り上げた縄で拘束する。
 目覚めた時の柊一の表情を想像しただけで、多聞はひどく気分が高揚した。
 この男の全てを、手に入れてみたい。
 親の仇と自分を付け狙うのならば、それも良い。
 しかし、そんな間接的な感情ではなく、もっと強烈に多聞という人間を、柊一の中に残したい。
 その衝動が、多聞を駆り立ててやまなかった。
 全裸にし、両腕を後ろで完全に拘束した後で、多聞はふと柊一の身体の違和感に気づいた。
 確かに男性としては少々驚くほどに色白ではあるが、柊一の体つきは決して見劣りをするようなモノではない。
 鍛えられた身体は、余分なものなど一切なく、しなやかな筋肉がスラリとした全身を覆っている。
 しかし。
 何かが普通とは違う。ような気がする。
 少しの苛立ちを感じながらも、結局多聞はそれ以上の詮索を諦めた。
 肩に手をかけ、喝を入れる。
 柊一は身体を強ばらせ、ぼんやりと目を開けた。
 黙って見下ろす多聞に気づき、起きあがろうとして自分の置かれている異常な状況に気づく。

「これは、一体どういうつもりだっ!」
「オマエは俺を、仇として討ち取るつもりらしいが…」

 膝を折り、多聞は態と顔を間近に寄せた。

「…俺はオマエを切っても一文にもならん」
「だから、なんだとっ…!」

 指を立てて、そっと胸のラインを辿り下腹部をなぞる。
 柊一はその感触に、ゾッとしたような顔になった。

「オマエは言ったな、何度でも俺を追ってくると。良いだろう、何度でも相手になってやる。但し、その度に代金を払ってもらうがな」
「代金?」

 多聞は掌を広げ、やんわりと下腹部を包み込んだ。

「触るなっ!」

 途端に柊一は、まるで電気でも走ったのかと思うほど激しいそぶりで、多聞の手から逃れようと身体を捻った。
 しかし、多聞はそんな柊一を容赦ない力で押さえ込み、無理矢理に足を広げさせると、再び同じ場所に手を当てた。

「よせっ! やめろっ!」
「俺を楽しませる。それが、オマエの払う代償だ」
「いやだっ!」

 もがいたところで動くのはせいぜい両足だけで、何一つ抵抗にはならない。
 想像以上に、この行為を拒む柊一が不思議に感じられたが、しかしそれは楽しみが増えただけだと悦に入って、多聞は柊一のそこをなおもしっかりと手の中に収めた。
 その時。
 指先に触れた奇妙な感触に、多聞はふと顔をしかめた。

「貴様ッ! 放せッ!」

 逃れようとする足を押さえ込み、強引に開く。
 必死になって身を捩る柊一を制して、多聞はそこを覗き込んだ。
 そこには、多聞の予想を上回る、不思議な光景があった。
 女性器と男性器が、同時に存在している。
 柊一の身体の違和感は、成人男子としてはあまりにアンバランスな男性器の所為だったのだ。

「オマエ…、女だったのか?」
「黙れッ!」

 屈辱に顔を染めている柊一の様子を見て、多聞は意地の悪い笑みを浮かべてみせる。

「コイツを見られるのが、そんなに恥ずかしいのか?」
「う…るさいッ」

 多聞は手を伸ばし、自分の長剣を取った。
 剣の柄の部分に使われている組み紐をとくと、愛剣を柊一の膝の裏側に当て、両端に組み紐でしっかりと固定してしまった。

「貴…様ッ」
「いい眺めだな。全部、丸見えだぞ」

 態と煽るような言葉を口にすれば、面白いほど反応を返す。
 側に置いてあった柊一の剣を取り、多聞はそれを柊一の女性器へと押し当てた。

「…ッ!」

 冷たい感触に、柊一の身体が強ばる。
 多聞は鞘の先でゆっくりと、勃ち上がりかけているソレの輪郭をなぞった。
 身体を仰け反らせ、柊一は声を押し殺している。

「嫌だと言っている割には、ずいぶんとイイ反応をするじゃないか。ココを使ったコト、あんのか?」
「黙れッ、下衆野郎ッ!」

 睨み付けてくる強い瞳に、多聞の嗜虐心が煽られる。
 多聞は持っていた剣を鞘から抜きだし、柊一のソレに押し当てた。
 金属のひやりとした感触に、柊一のソレは本人の意識を裏切って、多聞を楽しませてしまう。

「初めてか? 操を仇に奪われるのは、どんな気分だ?」
「俺は、女では無いッ!」

 怒りに染まった顔でこちらを見上げる柊一に、多聞は一瞬呆気にとられた。
 女性と呼ばれる事に、余程プライドを傷つけられるらしい。
 多聞の顔に、冷たい笑みが浮かぶ。

「オマエがそういうつもりなら、俺もそのつもりで相手をさせてもらうが…」

 言うなり、多聞は剣を床に投げ出し、柊一の身体を俯せにした。

「なにを…っ?!」

 身体を捩って振り返ろうとする柊一を押さえ、多聞は不意に柊一の顎を掴んだ。
 閉じる事が出来なくなった口に、多聞は指をねじ込んだ。

「良く舐めておけよ。痛い目を見るのは、嫌だろう?」
「…ッ、…貴…様…」

 多聞は手を離すと、今度はほっそりとした身体を抱え込んだ。そして、唾液でタップリとぬらした指を柊一の双丘の奥へとあてがう。

「よせっ!」
「我を張らなきゃ、優しくしてやったんだがな。コレは、オマエが選んだんだぜ」

 笑いながら、多聞は指を柊一の体内にねじ込んだ。

「…ッ!」

 白い背中が、しなやかに仰け反る。
 体内は、想像以上に柔らかく熱い。
 ゆっくり引き出すと、全身が細かく震えた。
 指を二本に増やし、再び奥へと差し入れる。
 柊一は、声にならない悲鳴を上げた。

「スゴイな。楽にくわえ込んでいくぜ?」
「…痛…ッ!」

 抱え込んでいる腕を伸ばし、痛みで萎えかけている柊一のソレを握る。

「こっちもホラ、熱くなってるぜ」

 指を絡ませてねっとりと愛撫をすると、柊一の口から嗚咽にも似た声が零れた。
 指先で探るように、体内を掻き回す。
 柊一の身体がゾクリと震えた瞬間を見逃さず、多聞はその場所で執拗に指先を蠢かした。

「…っ…くぅ」

 背筋を這い上ってくる感覚に支配されまいとしてか、柊一は必死になって唇を噛みしめている。
 多聞は指を引き抜くと、柊一の身体を抱き起こした。
 背中から腰を引き寄せ、充分にほぐしたソコに多聞自身をあてがう。

「い…やだっ!」

 拒んでも、逃れる術は無い。
 根本まで一突きに飲み込まされた瞬間、柊一の口から悲痛な叫びが迸る。

「きついな…、喰いちぎられそうだぜ?」

 腰を抱えてゆっくり動かすと、抑えきれない声が多聞の耳に聞こえた。
 身体を抱き寄せ、背中に唇を押しつける。
 全身を掌で愛撫しながらも、多聞は決して柊一の一番欲しい部分には触れなかった。

「へぇ、萎えちまうかと思ったが、感じてるじゃねェか。ドコで教わったんだ? 上手に腰振ってるぜ」

 囁かれた言葉に、柊一は返事をしない。
 たぶん、聞いてさえいないのだろう。
 耳元を掠める多聞の息に煽られているかのように、身体を戦慄かせている。
 柊一の様子を無視して、多聞は突き上げるペースを上げた。
 締め付けられる感触に、欲望を柊一の身体の中に注ぎ込む。
 多聞が射精したその瞬間、柊一の口から悲鳴とは違う声が溢れ出した。

「本当に、初めてなのか? 男に抱かれる為の身体だって、判ってねェのか?」

 柊一の足を押さえていた組み紐を解き、片足を持ち上げて、多聞は彼の身体を貫いたままで、その身体を振り向かせた。
 体内を一気に掻き回される衝撃に、柊一は達してしまう。

「なんだよ、イッちゃったのか?」

 目を細め、多聞は微かに笑った。
 顎に手をかけ、そっと顔を近づける。
 唇を重ね合わせ、柔らかな舌を強く絡め合わせてやんわりと吸い上げると、唇を解放した瞬間に、甘い吐息が零れた。
 そのまま顎からうなじを愛撫しつつ、多聞は再び熱を持ち始めたソレで、柊一の身体を突き上げる。

「ふ…あぁ…っ!」

 感じるポイントを探り出しそこを執拗に責め立てると、柊一は多聞の肩口に頭をこすりつけてきた。
 勃ちあがりはじめた柊一の根本を右手で押さえ込むと、縋るような目で多聞の顔を見上げてくる。

「イキたいなら、おねだりしなきゃな?」

 冷たく笑う多聞を、柊一は絶望的な瞳でしばらく見つめていたが、唇を噛みしめて顔を背けた。

「強情張ると、後がツライぜ?」

 片手で腰を抱え、片手で柊一の欲望を押さえ込み、多聞はゆっくりと腰を揺らす。
 与えられる快楽を感じまいとして、柊一は強く唇を噛む。
 口許に滲んだ血に気づき、多聞はそれをねっとりと舐め上げた。
 傷に触れられた痛みさえも、今の柊一には刺激にしかならない。

「オマエの血、甘いぜ」

 執拗に敏感な部分を嬲られて、柊一は堪えきれずに腰を振ってしまう。

「イキたいなら、おねだりしなって言ってるだろ?」
「だ…れが…貴様などに…、媚びる…ものかっ」

 固定されて動かす事の出来ない両手を握りしめ、吐き捨てるように柊一は言った。

「それもまた、俺を楽しませるって解ってるかい?」

 喉の奥で笑いながら、多聞は柊一の身体を床に降ろし、腰を抱え上げた。
 身体を前のめりに倒し、激しく突き上げる。
 柊一の口から、悲鳴ともあえぎともつかない声が紡がれた。
 達する直前、多聞は握りしめていた手から態と力を抜いて、柊一を同時に上り詰めさせた。
 多聞がゆっくりとした動作で身体を離した後でさえ、柊一のソレは白濁とした液を溢れさせている。
 その衝撃の大きさに、柊一は意識を手放していた。


 多聞は、街道を歩いていた。
 気を抜くと、思わず口許に笑みが浮かんでしまう。
 このまま一生、ぬるま湯のような時間を持て余すだけだと思っていた多聞にとって、あの剣士の登場は願ってもない喜びなのだ。

「当分、退屈しないで済みそうだ」

 多聞は、こみ上げてくる笑いを堪えることが出来なかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

銀色の精霊族と鬼の騎士団長

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:334

その手に、すべてが堕ちるまで 孤独な半魔は愛を求める

BL / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:2,336

魔女から呪いを受けて大きな灰色リスになりました!

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

正妻戦争ヤンデレウォーズ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

女の子になりたい・させたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:9

私はビーストだと気がついた時

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...