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第2話
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「このマンションに住んでンの?」
ボクの前に立ったそのヒトは、サングラスを外して話しかけてくる。
でも、想像していたような変なしゃべり方じゃなくて、声も優しい感じがした。
先生は優しい声で話しかけてくる知らないヒトは危ないって言ってたけど、このヒトの優しい感じは全然作り物っぽくなくて大丈夫そうな気がした。
それでもボクは少しだけ用心して、声には出さずに頷いてみせる。
そうしたらそのヒトは、なんだかスゴク安心したような顔で笑った。
サングラスを外してボクを見た時は、なんだか怒ってるみたいなコワイ顔をしていたけど、笑うと急に全然恐くなくなる。
「ゴミ集積所ってドコ?」
「ゴミ置き場は、北側の端の駐車場の裏だよ」
「北ァ?」
「ココは南側の公園」
「反対側かよ、どーりで見あたらねェ筈だ…」
口の中でブツブツ言ってから、そのヒトはボクの方に向き直る。
「案内、してくんねェ?」
「しても良いけど。…カギ、持ってるの?」
「カギィ?」
「ゴミの日以外にゴミを出す時は、管理人さんからカギを借りてこないと扉が開かないよ? ゴミの日は、朝から開けておいて貰えるからいらないんだけど」
「ンだよ、面倒クセェなぁ!」
心の底から嫌になったみたいにウンザリした顔をして、そのヒトは手からゴミ袋を落とすと、ボクの隣にペタンと座り込んだ。
なんかこのヒト、表情がコロコロ変わって面白い。
「あ、ワリィ。オマエに文句言ってるンじゃねェからな」
つい面白くてボクが顔をジッと見ていると、そのヒトは自分が大きな声を出した所為でボクがビックリしたと思ったらしくて、ニカッと笑って見せた。
ボクは声には全然驚かなかったけど、謝られた事にスゴク驚いた。
だって、普通の大人は子供に謝ったりしない。
パパだって、自分が悪い時でも謝るのはほんの時々だ。
でも、このヒトは最初からボクをコドモアツカイしないで話しかけてきた。
「オジサン、ボクがカギを借りて来てあげようか?」
ちょっと気分が良くなって、ボクはそう言ってあげた。
でも、そのヒトはボクを上から下までジロジロ見てから、フウーッと溜息を吐く。
「オジサンって呼ぶのやめたら、頼んでもイイぜ」
ボクはまたまたビックリした。
「変なの! それじゃあなんだか、ボクが頼まれたいみたいじゃんか!」
「なんだよ、頼まれたくねェの?」
「あったりまえじゃん!」
「そうか…、頼まれたくないのか…」
そのヒトはもう一度溜息を吐くと、「よいしょ」って感じでベンチから立ち上がる。
「ったく、しょーがねェなぁ…」
面倒くさそうに呟いて、足元に落としてあったゴミ袋を拾おうと屈み込む。
でも、変だなぁ。
なんで杖をついている方の手で、拾おうとしているんだろう?
左足だけでバランスを取って屈み込む格好はスゴク変なポーズになっている筈なのに、なぜか全然コッケイじゃなくて。
前に動物園で見たフラミンゴみたいに、綺麗だなって思った。
「ねェ、オジサン。なんで左手で拾わないの?」
「オジサンって呼ぶなっつーの」
「じゃあ、なんて呼べばいいのさ?」
「シュウイチ…かな?」
「じゃあ、シュウイチ。なんで左手を使わないのさ?」
「俺の左手はな、付いてるだけで役立たずだからさ」
ようやくって感じで袋を拾ったシュウイチは、ボクの方に振り返ってニッと笑ってみせる。
でもなんかその顔は、笑っているのに寂しそうに見えた。
「さてっと、じゃあまたな」
ボクに手を振って、シュウイチは歩き出す。
なんだか今にも転びそうな歩き方で、ボクは心配になって急いでゲームボーイをカバンにしまうと、ベンチから飛び降りて後を追った。
「ドコ行くの?」
「部屋に帰るンだよ。ゴミ捨てるだけだと思って薄着で出てきたから、寒くなっちまった」
「ゴミ、ボクが捨ててきてあげようか?」
「バッカ、学校行けよ」
呆れたみたいな顔で笑いながら、シュウイチがボクに振り返る。
「バッカだなぁ! シュウイチってば、学校が何時から始まるか知らないの?」
「あぁ?」
立ち止まったシュウイチがキョロキョロしてるから、ボクは公園の真ん中にある時計を指差した。
ボクの指している方向を目で追って、シュウイチはキョトンとした顔になる。
なんだかその顔を見たら、ボクはスゴク嬉しくなってしまった。
時計を見上げたシュウイチは、なんだかとても大人のヒトには見えない。
クラスの男子の間で、秘かに人気のオンナノコがいて、みんなあのコは表情がコロコロ変わって可愛いよなって話しているけど。
シュウイチはあのコよりももっとずっと可愛いくて、ミリョクテキだ。
「オマエ、こんな時間からなにやってんの?」
「オマエじゃないよ、カナタだよ」
「じゃあカナタは、こんなバカっ早くからランドセル背負ってどうしたんだ?」
「パパがまた、部屋にせっくすふれんどを連れて来てて、家にいるとメーワクを掛けられちゃうから避難してるんだよ」
「………なんだって?」
ものすごくビックリした顔で、シュウイチはボクに振り返った。
「パパのせっくすふれんどは、ボクのコトをすぐにコドモアツカイするから、来てる時には家にいない方がイイんだ」
ボクの説明に、シュウイチは眉を片方だけピコッと動かして、フシンな顔をしたけれど。
「此処で話ってと寒ィから、俺の部屋に行かねェ?」
と、言った。
ボクの前に立ったそのヒトは、サングラスを外して話しかけてくる。
でも、想像していたような変なしゃべり方じゃなくて、声も優しい感じがした。
先生は優しい声で話しかけてくる知らないヒトは危ないって言ってたけど、このヒトの優しい感じは全然作り物っぽくなくて大丈夫そうな気がした。
それでもボクは少しだけ用心して、声には出さずに頷いてみせる。
そうしたらそのヒトは、なんだかスゴク安心したような顔で笑った。
サングラスを外してボクを見た時は、なんだか怒ってるみたいなコワイ顔をしていたけど、笑うと急に全然恐くなくなる。
「ゴミ集積所ってドコ?」
「ゴミ置き場は、北側の端の駐車場の裏だよ」
「北ァ?」
「ココは南側の公園」
「反対側かよ、どーりで見あたらねェ筈だ…」
口の中でブツブツ言ってから、そのヒトはボクの方に向き直る。
「案内、してくんねェ?」
「しても良いけど。…カギ、持ってるの?」
「カギィ?」
「ゴミの日以外にゴミを出す時は、管理人さんからカギを借りてこないと扉が開かないよ? ゴミの日は、朝から開けておいて貰えるからいらないんだけど」
「ンだよ、面倒クセェなぁ!」
心の底から嫌になったみたいにウンザリした顔をして、そのヒトは手からゴミ袋を落とすと、ボクの隣にペタンと座り込んだ。
なんかこのヒト、表情がコロコロ変わって面白い。
「あ、ワリィ。オマエに文句言ってるンじゃねェからな」
つい面白くてボクが顔をジッと見ていると、そのヒトは自分が大きな声を出した所為でボクがビックリしたと思ったらしくて、ニカッと笑って見せた。
ボクは声には全然驚かなかったけど、謝られた事にスゴク驚いた。
だって、普通の大人は子供に謝ったりしない。
パパだって、自分が悪い時でも謝るのはほんの時々だ。
でも、このヒトは最初からボクをコドモアツカイしないで話しかけてきた。
「オジサン、ボクがカギを借りて来てあげようか?」
ちょっと気分が良くなって、ボクはそう言ってあげた。
でも、そのヒトはボクを上から下までジロジロ見てから、フウーッと溜息を吐く。
「オジサンって呼ぶのやめたら、頼んでもイイぜ」
ボクはまたまたビックリした。
「変なの! それじゃあなんだか、ボクが頼まれたいみたいじゃんか!」
「なんだよ、頼まれたくねェの?」
「あったりまえじゃん!」
「そうか…、頼まれたくないのか…」
そのヒトはもう一度溜息を吐くと、「よいしょ」って感じでベンチから立ち上がる。
「ったく、しょーがねェなぁ…」
面倒くさそうに呟いて、足元に落としてあったゴミ袋を拾おうと屈み込む。
でも、変だなぁ。
なんで杖をついている方の手で、拾おうとしているんだろう?
左足だけでバランスを取って屈み込む格好はスゴク変なポーズになっている筈なのに、なぜか全然コッケイじゃなくて。
前に動物園で見たフラミンゴみたいに、綺麗だなって思った。
「ねェ、オジサン。なんで左手で拾わないの?」
「オジサンって呼ぶなっつーの」
「じゃあ、なんて呼べばいいのさ?」
「シュウイチ…かな?」
「じゃあ、シュウイチ。なんで左手を使わないのさ?」
「俺の左手はな、付いてるだけで役立たずだからさ」
ようやくって感じで袋を拾ったシュウイチは、ボクの方に振り返ってニッと笑ってみせる。
でもなんかその顔は、笑っているのに寂しそうに見えた。
「さてっと、じゃあまたな」
ボクに手を振って、シュウイチは歩き出す。
なんだか今にも転びそうな歩き方で、ボクは心配になって急いでゲームボーイをカバンにしまうと、ベンチから飛び降りて後を追った。
「ドコ行くの?」
「部屋に帰るンだよ。ゴミ捨てるだけだと思って薄着で出てきたから、寒くなっちまった」
「ゴミ、ボクが捨ててきてあげようか?」
「バッカ、学校行けよ」
呆れたみたいな顔で笑いながら、シュウイチがボクに振り返る。
「バッカだなぁ! シュウイチってば、学校が何時から始まるか知らないの?」
「あぁ?」
立ち止まったシュウイチがキョロキョロしてるから、ボクは公園の真ん中にある時計を指差した。
ボクの指している方向を目で追って、シュウイチはキョトンとした顔になる。
なんだかその顔を見たら、ボクはスゴク嬉しくなってしまった。
時計を見上げたシュウイチは、なんだかとても大人のヒトには見えない。
クラスの男子の間で、秘かに人気のオンナノコがいて、みんなあのコは表情がコロコロ変わって可愛いよなって話しているけど。
シュウイチはあのコよりももっとずっと可愛いくて、ミリョクテキだ。
「オマエ、こんな時間からなにやってんの?」
「オマエじゃないよ、カナタだよ」
「じゃあカナタは、こんなバカっ早くからランドセル背負ってどうしたんだ?」
「パパがまた、部屋にせっくすふれんどを連れて来てて、家にいるとメーワクを掛けられちゃうから避難してるんだよ」
「………なんだって?」
ものすごくビックリした顔で、シュウイチはボクに振り返った。
「パパのせっくすふれんどは、ボクのコトをすぐにコドモアツカイするから、来てる時には家にいない方がイイんだ」
ボクの説明に、シュウイチは眉を片方だけピコッと動かして、フシンな顔をしたけれど。
「此処で話ってと寒ィから、俺の部屋に行かねェ?」
と、言った。
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