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プロローグ
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そうして俺は、唐突に出来てしまった空白の一日を、なんとなく持て余して外に出た。
「やあ、リンタロー君もお昼?」
ホテルのロビーに降りたところで声を掛けて来たのは、同じくツアーに参加している神田サンだ。
「も……って、他のヒトは出掛けてるんですか?」
神田サンは古参のサポメンで、楽器は俺と同じくギターを担当している。
同じ楽器同士…という理由ではなく、神田サンはチームSの潤滑剤のようなヒトだ。
チームの呼吸を知り尽くしている上に、何かと気の回るヒトなので、皆をまとめるのが非常に上手い。
本人曰く『押し付けられた』らしいが、初日から新顔の俺に何かと気を使ってくれている。
「朝から全員、出払ってるよ。部屋に居ても気が滅入るから、まぁ、当然っちゃ当然だよね」
と、神田サンは苦笑した。
「セイさん、大丈夫なんですかねぇ?」
禁句かなとも思ったけど、でも今一番気になるのは当たり前だけどその話で。
新参者の俺としては、こういう場合どうするべきなのか戸惑っていたのも確かだったから、そう振ってみたのだ。
「う…ん。まぁ、大丈夫でしょう。セイは…繊細だけど強靱だからねぇ」
「そうなんですか?」
「絶対一人でいられないけど、何でも一人で解決しちゃうからね」
ものすごく矛盾している発言だけど、この短い時間しか付き合いの無い俺でもそれは納得出来てしまう台詞だな…と思った。
「これから、ヒロ達と合流するんだけど、リンタロー君も一緒に行く?」
ヒロとは、同じくサポメンでベースを担当している高輪宏サンの事だ。
「あ~、いや、俺はエンリョしておきます」
俺の答えに、神田サンは苦笑いのような表情を浮かべてから、「じゃあ、またね」と言って、先にロビーを出ていった。
別に神田サン以外と口も聞けない……とかってワケでは無いし、新顔で年下の俺は、それなりに先輩諸氏と上手くやってはいる。
だが、新顔の俺に気遣いをしてくれているんだろうな……って空気があるのは、どうしても拭いきれない。
親切で良い人達なのは間違いないから、逆にこっちが申し訳なく感じているし、こればっかりは時間を掛けて距離感やら空気感を作っていくしかない。
今日は特に閉塞感があるから、俺はあえてその申し出を断ったのだ。
神田サンも、声を掛けてはきたけれど、俺の答えにちょっとだけ「ああ、ヨカッタ」ってな気持ちも混ざったような様子だったしな。
「やあ、リンタロー君もお昼?」
ホテルのロビーに降りたところで声を掛けて来たのは、同じくツアーに参加している神田サンだ。
「も……って、他のヒトは出掛けてるんですか?」
神田サンは古参のサポメンで、楽器は俺と同じくギターを担当している。
同じ楽器同士…という理由ではなく、神田サンはチームSの潤滑剤のようなヒトだ。
チームの呼吸を知り尽くしている上に、何かと気の回るヒトなので、皆をまとめるのが非常に上手い。
本人曰く『押し付けられた』らしいが、初日から新顔の俺に何かと気を使ってくれている。
「朝から全員、出払ってるよ。部屋に居ても気が滅入るから、まぁ、当然っちゃ当然だよね」
と、神田サンは苦笑した。
「セイさん、大丈夫なんですかねぇ?」
禁句かなとも思ったけど、でも今一番気になるのは当たり前だけどその話で。
新参者の俺としては、こういう場合どうするべきなのか戸惑っていたのも確かだったから、そう振ってみたのだ。
「う…ん。まぁ、大丈夫でしょう。セイは…繊細だけど強靱だからねぇ」
「そうなんですか?」
「絶対一人でいられないけど、何でも一人で解決しちゃうからね」
ものすごく矛盾している発言だけど、この短い時間しか付き合いの無い俺でもそれは納得出来てしまう台詞だな…と思った。
「これから、ヒロ達と合流するんだけど、リンタロー君も一緒に行く?」
ヒロとは、同じくサポメンでベースを担当している高輪宏サンの事だ。
「あ~、いや、俺はエンリョしておきます」
俺の答えに、神田サンは苦笑いのような表情を浮かべてから、「じゃあ、またね」と言って、先にロビーを出ていった。
別に神田サン以外と口も聞けない……とかってワケでは無いし、新顔で年下の俺は、それなりに先輩諸氏と上手くやってはいる。
だが、新顔の俺に気遣いをしてくれているんだろうな……って空気があるのは、どうしても拭いきれない。
親切で良い人達なのは間違いないから、逆にこっちが申し訳なく感じているし、こればっかりは時間を掛けて距離感やら空気感を作っていくしかない。
今日は特に閉塞感があるから、俺はあえてその申し出を断ったのだ。
神田サンも、声を掛けてはきたけれど、俺の答えにちょっとだけ「ああ、ヨカッタ」ってな気持ちも混ざったような様子だったしな。
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