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第12話
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結局、本当に閉店まで多聞はそこで待たされた。
その間、マナーモードにしてあった携帯が2度ほど鳴ったけれど、2度目のコール時に多聞は電源を切ってしまった。
確かに、そこで待たされているだけの状況は、退屈な時間の方が長かった。
でも、誰かに呼び出されてこの場を離れる事はしたくなかった。
シノ氏の態度は一貫してそっけなく、愛想のカケラもなかったけれど、それがひどくハマってクールに見える。
ほんの時折、彼の手が空いた時に交わされた会話も、やっぱりとてもクールで多聞は無性に楽しかった。
交わす言葉に一種のスリルがあり、それはまるで気の合う相手とジャムセッションをしている時に似ていた。
「終わったの?」
テーブルを拭いていたふきんを消毒し、有線のスイッチを切ったシノ氏に問いかける。
「ああ。後は戸締まりだけ」
促され、多聞は店の外に出た。
「シノさん、お疲れ。あのさぁ…」
裏口から出たシノ氏に、店長が声を掛ける。
数歩離れた場所に立つ多聞には聞こえない声で、シノ氏にヒソヒソと囁やいた後、店長は停めてあった軽自動車に乗って帰ってゆく。
「ナニ言われてたの?」
歩き出したシノ氏に、多聞は訊ねた。
「簡単に言いくるめられるな。とさ」
「…どういう意味?」
「新田サンは、俺を底抜けのお人好しだと思ってるのさ」
諦めたような笑みを浮かべて、シノ氏は肩を竦める。
「何、それ。前科でもあるワケ? 壺買わされたとか」
「壺を買ったこたぁねェけど、でっけェ借金があるコトはある」
シノ氏の意味深な台詞に、多聞はもっと質問を続けようとしたが。
「そんなコトより、これからどーすんだ?」
立ち止まり、振り返ったシノ氏に質問権を制されてしまう。
「ど、どうって?」
「話、何処でする気? 今この場でするのか、どっかに腰落ちつけてするのか」
「腰落ちつけるったって、今の時間じゃファミレスしかやってねェだろ。でも、そんなトコで話して良いの? 俺は、何処だって構わねェけどさ」
多聞の笑みに、シノ氏は少し考えるような顔をして、それからおもむろに歩き出す。
「解った。俺の下宿にする」
先をゆくシノ氏に、多聞は黙ってついていった。
その間、マナーモードにしてあった携帯が2度ほど鳴ったけれど、2度目のコール時に多聞は電源を切ってしまった。
確かに、そこで待たされているだけの状況は、退屈な時間の方が長かった。
でも、誰かに呼び出されてこの場を離れる事はしたくなかった。
シノ氏の態度は一貫してそっけなく、愛想のカケラもなかったけれど、それがひどくハマってクールに見える。
ほんの時折、彼の手が空いた時に交わされた会話も、やっぱりとてもクールで多聞は無性に楽しかった。
交わす言葉に一種のスリルがあり、それはまるで気の合う相手とジャムセッションをしている時に似ていた。
「終わったの?」
テーブルを拭いていたふきんを消毒し、有線のスイッチを切ったシノ氏に問いかける。
「ああ。後は戸締まりだけ」
促され、多聞は店の外に出た。
「シノさん、お疲れ。あのさぁ…」
裏口から出たシノ氏に、店長が声を掛ける。
数歩離れた場所に立つ多聞には聞こえない声で、シノ氏にヒソヒソと囁やいた後、店長は停めてあった軽自動車に乗って帰ってゆく。
「ナニ言われてたの?」
歩き出したシノ氏に、多聞は訊ねた。
「簡単に言いくるめられるな。とさ」
「…どういう意味?」
「新田サンは、俺を底抜けのお人好しだと思ってるのさ」
諦めたような笑みを浮かべて、シノ氏は肩を竦める。
「何、それ。前科でもあるワケ? 壺買わされたとか」
「壺を買ったこたぁねェけど、でっけェ借金があるコトはある」
シノ氏の意味深な台詞に、多聞はもっと質問を続けようとしたが。
「そんなコトより、これからどーすんだ?」
立ち止まり、振り返ったシノ氏に質問権を制されてしまう。
「ど、どうって?」
「話、何処でする気? 今この場でするのか、どっかに腰落ちつけてするのか」
「腰落ちつけるったって、今の時間じゃファミレスしかやってねェだろ。でも、そんなトコで話して良いの? 俺は、何処だって構わねェけどさ」
多聞の笑みに、シノ氏は少し考えるような顔をして、それからおもむろに歩き出す。
「解った。俺の下宿にする」
先をゆくシノ氏に、多聞は黙ってついていった。
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