48 / 49
事件簿2:山麓大学第一学生寮下着盗難事件
12.エピローグ
しおりを挟む
翌日、霧島が学食で昼食を取っているところへ、鹿島が現れた。
「美味しそうなカレーうどんだね。オレにもおごって」
「人より値段の高いランチを手に持って、なに寝ぼけたコト言ってんだよ」
「イヤだなァ。狭いロッカーの中でフトモモをすり寄せあった仲じゃないか」
「…誤解を招く発言はヤメロ…」
上目使いの霧島に、小悪魔的な笑顔で返し、鹿島は霧島の向かい側に座った。
「いやね。寮の部屋が空いたから、今日から正式に君はあそこの住人になったって事を伝えにきただけさ」
「…やっぱり、川崎は追い出されたのか?」
食事の手を止め、霧島は改めて鹿島の顔を見た。
「おんだされたとゆーよりは、出てった…のほーが正しいねぇ。寮生のみんなは荒木クンの事を面白がってるけど、彼の言動が奇行だって理解してるし。川崎クンが、あすこで暮らすには、繊細過ぎるって事も解ってたしね~」
川崎を捕らえた後、鹿島は寮生達を集めて "話し合い" の場を設けた。
寮生達は、自分の下着が手元に戻ってきた事と、下着以外に被害がなかった事、更に川崎が下着を盗んだ理由が、荒木に濡れ衣を着せたかっただけ…だと理解し、今回の一件を不問に付す事に決めたのだ。
寮生の結論が出たところで、鹿島はその旨を川崎に告げ、川崎はこれからも寮に留まるのは無理だと言って、今朝には荷物をまとめて出ていったらしい。
「あんな騒ぎにならなきゃなァ…。もうちょっとやりようがあったと思うんだが…」
「…霧島クンがどう思ってるか知りませんがね、僕はあれで良かったと思いますよ~。川崎クンだってこれでさっぱりしたでしょうしねえ」
「それ以前に、あんな妖怪と同室になっちまった川崎が可哀相だって、俺は思ってンだよ」
「そんな事、言わない方が良いと思いますよ~。だって君は…」
「あれ~、タキオちゃんに鹿島クンじゃないの」
霧島の背後から、突然頓狂な声が上がる。
バタバタとしたゴム草履特有の足音が近づき、ドッカと隣に腰を下ろしたのは、噂の主の荒木である。
「こーんなトコで偶然会うなんて、やっぱり縁があるねェ、ボク達」
「何だよ、縁って」
「あ~れ~、鹿島に聞かなかったの? タキオちゃん、川崎クンの代わりにボクのルームメイトになったんだよ」
霧島は、バッと鹿島に振り返った。
鹿島はニコニコしたまま、ウンウンと頷いてみせる。
「だから言ったでしょ。そんな事は言わない方が良いって。今日から君の相棒なんだからさ~」
霧島は茫然と二人の顔を見た。
先ほどまでは、川崎に対して同情してやれるほどの余裕があったが、今はそれどころでは無い。
いやむしろ、川崎の姿は将来の自分のような気すらしているのだった。
*山麓大学第一学生寮下着盗難事件:おわり*
「美味しそうなカレーうどんだね。オレにもおごって」
「人より値段の高いランチを手に持って、なに寝ぼけたコト言ってんだよ」
「イヤだなァ。狭いロッカーの中でフトモモをすり寄せあった仲じゃないか」
「…誤解を招く発言はヤメロ…」
上目使いの霧島に、小悪魔的な笑顔で返し、鹿島は霧島の向かい側に座った。
「いやね。寮の部屋が空いたから、今日から正式に君はあそこの住人になったって事を伝えにきただけさ」
「…やっぱり、川崎は追い出されたのか?」
食事の手を止め、霧島は改めて鹿島の顔を見た。
「おんだされたとゆーよりは、出てった…のほーが正しいねぇ。寮生のみんなは荒木クンの事を面白がってるけど、彼の言動が奇行だって理解してるし。川崎クンが、あすこで暮らすには、繊細過ぎるって事も解ってたしね~」
川崎を捕らえた後、鹿島は寮生達を集めて "話し合い" の場を設けた。
寮生達は、自分の下着が手元に戻ってきた事と、下着以外に被害がなかった事、更に川崎が下着を盗んだ理由が、荒木に濡れ衣を着せたかっただけ…だと理解し、今回の一件を不問に付す事に決めたのだ。
寮生の結論が出たところで、鹿島はその旨を川崎に告げ、川崎はこれからも寮に留まるのは無理だと言って、今朝には荷物をまとめて出ていったらしい。
「あんな騒ぎにならなきゃなァ…。もうちょっとやりようがあったと思うんだが…」
「…霧島クンがどう思ってるか知りませんがね、僕はあれで良かったと思いますよ~。川崎クンだってこれでさっぱりしたでしょうしねえ」
「それ以前に、あんな妖怪と同室になっちまった川崎が可哀相だって、俺は思ってンだよ」
「そんな事、言わない方が良いと思いますよ~。だって君は…」
「あれ~、タキオちゃんに鹿島クンじゃないの」
霧島の背後から、突然頓狂な声が上がる。
バタバタとしたゴム草履特有の足音が近づき、ドッカと隣に腰を下ろしたのは、噂の主の荒木である。
「こーんなトコで偶然会うなんて、やっぱり縁があるねェ、ボク達」
「何だよ、縁って」
「あ~れ~、鹿島に聞かなかったの? タキオちゃん、川崎クンの代わりにボクのルームメイトになったんだよ」
霧島は、バッと鹿島に振り返った。
鹿島はニコニコしたまま、ウンウンと頷いてみせる。
「だから言ったでしょ。そんな事は言わない方が良いって。今日から君の相棒なんだからさ~」
霧島は茫然と二人の顔を見た。
先ほどまでは、川崎に対して同情してやれるほどの余裕があったが、今はそれどころでは無い。
いやむしろ、川崎の姿は将来の自分のような気すらしているのだった。
*山麓大学第一学生寮下着盗難事件:おわり*
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

警視庁怪異対策室
浦井らく
キャラ文芸
警視庁には、怪異が起こしたであろうという事件を担当する、怪異対策室という特別な捜査部署がある。
そこに所属する、ベテランだが怪異から発せられる瘴気の耐性が極端に低い嘉内が、新入りだが居るだけで怪異を浄化することができる能力の持ち主である麻倉と共に、一般的には解決できない事件の捜査に奔走する。
カクヨム、小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる