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事件簿1:俺と荒木とマッドサイエンティスト
18.なぜ俺のバディはこいつなんだろう?
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「あれはナイんじゃないのぉ~? コネコちゃん、タキオちゃんがいないって聞いてから、めっちゃ心配してくれてたんだよ?」
「部屋に引き止めたのは、オマエだろ」
「タキオちゃん、なぁんかコネコちゃんのコト、嫌ってるよね? イイコなのにさぁ」
「イイコかどーかなんざ、今は関係ねェだろう!」
「なんかタキオちゃん、らしくなくない?」
「今はそれどこじゃない、つっとんだろーがっ」
「じゃあどれどこなのよ?」
無郎を邪険に扱われた事で、荒木は機嫌を損ねているらしい。
「昨日の夜、俺が部屋を抜け出したのは、そこの窓から、屋敷を出て行くアニキを見たからだ」
「ほえ~、コネコちゃんのオニイサンってば、夜這いとはオツだねぇ」
「真面目に聞けよ」
「ボクちゃんいつだって大真面目だよぉ」
そういえば、この男は真面目な時もこうだった…と思い出し、霧島はそれだけでも気分がげっそりと萎えた。
捻挫したために、自分は全く自由に身動きする事が出来ない。
となれば、荒木に調査を託すしか無い。
その荒木がこのノリでは…と考えて、うんざりした。
「それで?」
げんなり顔の霧島に、荒木は先を促すように言った。
少しは真面目に話を聞くきになったのかと、霧島が顔を上げると…。
「オニイサンのあと、追けて行ったんでしょ? んも~、タキオちゃんってば、実はムッツリスケベなんだからぁ~」
「誰がムッツリじゃあっ!」
「きゃー! タキオちゃんが怒ったぁ!」
「あだだだだ…っ!」
思わず激高した霧島だが、動かした途端に足が痛んだ。
「だめだよぉ、タキオちゃん。怪我人は怪我人らしく安静にしてなくちゃあ」
「いちいち、人の話の腰を折るんじゃねぇよっ!」
「え~、ボクちゃん、腰に乗るのは大好きだけど、折るのは全然好きじゃないよ?」
ガッつと、荒木は霧島の肩を掴んだ。
学生時代にバスケ部に所属していた霧島は、身長が平均よりもずっと高い。
だがラグビー部所属の荒木は当然というか、肉弾戦を頻繁に行う種目の特性上、筋肉の上に脂肪もある程度乗っている体格をしており、この体勢でのしかかられたら、簡単に押し倒されてしまう。
「ほうら、ほうら、いい子にしてないとリュウイチ君の愛のチッスをかましますよぉ」
「放せ、このド変態ヤロウ!」
口をタコのように尖らせて、顔面をグイグイ寄せてきた荒木に対して、霧島は渾身の力で抑え込んでいた腕を振り切り、掌底打ちを決めた。
「いっったぁっ! ヒドイよタキオちゃん! 先に暴れだしたのタキオちゃんじゃんかっ!」
「テメェが真面目に話を聞けば、俺だっておとなしく会話出来たちゅーんだよっ!」
「ちゃあんと聞いてたじゃんっ! オニイサンが夜中にお出掛けして、その後ろをタキオちゃんがストーキングしたんでしょ? ロマンチック~」
霧島は頭を抱え、深く深く溜息を吐いた。
そして、肺から全ての空気を吐き終わったところで、その間に思っていた様々な葛藤、例えば "なぜ自分はこの男とバディを組んでいるのだろうか?" といった気持ちをリセットして、顔を上げる。
「ここじゃない "もう一つの館" で、なにやらアヤシゲな研究をしてるっぽい。俺はこの足で出掛けられないから、オマエが代わりに探しに行ってくれ」
「ほえ~、この家の他に、洋館があるんだ。良いよ、コネコちゃん誘って、お散歩しながら探してくる」
「誰にも気付かれないように、一人で、きっちり、探しに行けっ!」
「怪我して動けないからって、怒りっぽすぎるよ~。ほんじゃま、名探偵サマが直々に調査に出向きますかね。イイコにして、安静にしてるんだよ」
朗らかに「いってきま~す」などと行って、荒木は部屋から出ていった。
が、直ぐにも扉が開く。
「ねえ、タキオちゃん」
「なんだよ。さっさと行けよ」
「だって、誰にもナイショで…ってコトはさ、タキオちゃんにもナイショじゃなきゃ、ダメだったってコトだよね?」
「……………」
あの長い長い溜息で吐き出し尽くしたはずの怒りが、新たに腹の底から込み上げてくる。
「ふざけんな、このアホンダラっ!」
霧島は手近にあった枕を掴むと、扉に向かって投げつける。
「わあっ! いってきますっ!」
枕が扉に到達する前に、荒木はさっさと逃げていなくなる。
うんざりした顔で、霧島はベッドに仰向けに倒れた。
「あ~、ちくしょう。頭が低くてイライラする……」
とはいえ、一晩そのまま放置した捻挫は、熱を持って腫れ上がっている。
当然、起き上がって枕を拾いに行く事は出来ない。
「クソッ!」
腹立たしげに掛け布団を被り、霧島は目を閉じた。
「部屋に引き止めたのは、オマエだろ」
「タキオちゃん、なぁんかコネコちゃんのコト、嫌ってるよね? イイコなのにさぁ」
「イイコかどーかなんざ、今は関係ねェだろう!」
「なんかタキオちゃん、らしくなくない?」
「今はそれどこじゃない、つっとんだろーがっ」
「じゃあどれどこなのよ?」
無郎を邪険に扱われた事で、荒木は機嫌を損ねているらしい。
「昨日の夜、俺が部屋を抜け出したのは、そこの窓から、屋敷を出て行くアニキを見たからだ」
「ほえ~、コネコちゃんのオニイサンってば、夜這いとはオツだねぇ」
「真面目に聞けよ」
「ボクちゃんいつだって大真面目だよぉ」
そういえば、この男は真面目な時もこうだった…と思い出し、霧島はそれだけでも気分がげっそりと萎えた。
捻挫したために、自分は全く自由に身動きする事が出来ない。
となれば、荒木に調査を託すしか無い。
その荒木がこのノリでは…と考えて、うんざりした。
「それで?」
げんなり顔の霧島に、荒木は先を促すように言った。
少しは真面目に話を聞くきになったのかと、霧島が顔を上げると…。
「オニイサンのあと、追けて行ったんでしょ? んも~、タキオちゃんってば、実はムッツリスケベなんだからぁ~」
「誰がムッツリじゃあっ!」
「きゃー! タキオちゃんが怒ったぁ!」
「あだだだだ…っ!」
思わず激高した霧島だが、動かした途端に足が痛んだ。
「だめだよぉ、タキオちゃん。怪我人は怪我人らしく安静にしてなくちゃあ」
「いちいち、人の話の腰を折るんじゃねぇよっ!」
「え~、ボクちゃん、腰に乗るのは大好きだけど、折るのは全然好きじゃないよ?」
ガッつと、荒木は霧島の肩を掴んだ。
学生時代にバスケ部に所属していた霧島は、身長が平均よりもずっと高い。
だがラグビー部所属の荒木は当然というか、肉弾戦を頻繁に行う種目の特性上、筋肉の上に脂肪もある程度乗っている体格をしており、この体勢でのしかかられたら、簡単に押し倒されてしまう。
「ほうら、ほうら、いい子にしてないとリュウイチ君の愛のチッスをかましますよぉ」
「放せ、このド変態ヤロウ!」
口をタコのように尖らせて、顔面をグイグイ寄せてきた荒木に対して、霧島は渾身の力で抑え込んでいた腕を振り切り、掌底打ちを決めた。
「いっったぁっ! ヒドイよタキオちゃん! 先に暴れだしたのタキオちゃんじゃんかっ!」
「テメェが真面目に話を聞けば、俺だっておとなしく会話出来たちゅーんだよっ!」
「ちゃあんと聞いてたじゃんっ! オニイサンが夜中にお出掛けして、その後ろをタキオちゃんがストーキングしたんでしょ? ロマンチック~」
霧島は頭を抱え、深く深く溜息を吐いた。
そして、肺から全ての空気を吐き終わったところで、その間に思っていた様々な葛藤、例えば "なぜ自分はこの男とバディを組んでいるのだろうか?" といった気持ちをリセットして、顔を上げる。
「ここじゃない "もう一つの館" で、なにやらアヤシゲな研究をしてるっぽい。俺はこの足で出掛けられないから、オマエが代わりに探しに行ってくれ」
「ほえ~、この家の他に、洋館があるんだ。良いよ、コネコちゃん誘って、お散歩しながら探してくる」
「誰にも気付かれないように、一人で、きっちり、探しに行けっ!」
「怪我して動けないからって、怒りっぽすぎるよ~。ほんじゃま、名探偵サマが直々に調査に出向きますかね。イイコにして、安静にしてるんだよ」
朗らかに「いってきま~す」などと行って、荒木は部屋から出ていった。
が、直ぐにも扉が開く。
「ねえ、タキオちゃん」
「なんだよ。さっさと行けよ」
「だって、誰にもナイショで…ってコトはさ、タキオちゃんにもナイショじゃなきゃ、ダメだったってコトだよね?」
「……………」
あの長い長い溜息で吐き出し尽くしたはずの怒りが、新たに腹の底から込み上げてくる。
「ふざけんな、このアホンダラっ!」
霧島は手近にあった枕を掴むと、扉に向かって投げつける。
「わあっ! いってきますっ!」
枕が扉に到達する前に、荒木はさっさと逃げていなくなる。
うんざりした顔で、霧島はベッドに仰向けに倒れた。
「あ~、ちくしょう。頭が低くてイライラする……」
とはいえ、一晩そのまま放置した捻挫は、熱を持って腫れ上がっている。
当然、起き上がって枕を拾いに行く事は出来ない。
「クソッ!」
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