88 / 90
ep.2:追われる少年
21.旅立ち【2】
しおりを挟む
そこで色々なことを思い返していたクロスが、急に焦ったように振り返る。
「じゃあもしかして、見たくもない変なモノが、これからは更に見えるようになっちゃったりすんのっ?!」
「えーと、なんだったっけ、見鬼眼つったっけ?」
首を傾げてタクトに問うたジェラートの言葉に、クロスは顔をしかめた。
「それ、なに?」
「貴様、やはり知らなんだのか。見鬼眼をきちんと使いこなしておれば、そこの弟子に化けてた毒まんじゅうを、すぐにも看破出来ていたろうに」
「待って、待って、待って! マジ、待って! じゃあ俺が魔導士だから、視えてるんじゃないの?」
「言っておくがの。貴様の知識は人間のかなり間違ったものに偏っておる。宴の食卓と言ったかの? アレなぞがいい例じゃ。多分贄の食卓を再現しようとしたのだろうが、失われた術式を無理矢理つなげ合わせたんじゃろ」
「そうなのっ?」
「贄の食卓は、相手の全てを奪い取る禁忌の術じゃが。破片を集めて、得られるか得られまいかの博打のような術になったのだろうて」
「え…ええええ~」
クロスは、いろいろな意味で脱力した声を上げた。
自身が必死に調べ学んだ知識が、トンデモ偽学だと言われたのだ。
ショックでないわけがない。
「その見鬼眼にしても、そうじゃ。人間には珍しいとはいえ、それほど稀な特殊技能でもない。今後は、ペテン師の幻像術程度、すぐにも見抜けるように精進するがよかろうよ」
自分の長年の悩みを一言で流されて、クロスは愕然となった。
タクトの姿が自分以外の、アルバーラにすら視えていなかったのは、そういう理由だったのか。
とすると、カービンやルミギリスに抱いた苛立ちは、完全に八つ当たりだった。
「屋敷ごと研究を焼き払っておいて、この弟子達は元に戻して、どうするつもりなんだ?」
マハトが足元の、四人の弟子を見遣る。
「別にどうもしない。クロスがこいつらのコト、すっげぇ心配してたから助けてやっただけだもん」
「こら小僧、それを一人でやり遂げたかのように、威張るんじゃない」
タクトに物言いをされたジェラートは、タクトに背を向けて小さくあかんべをして見せる。
「しかし、それではまた、神耶族に対して悪さをするんじゃないのか?」
「ん~、そっか。じゃ、俺の小微羽でも……、うーん、それもめんどっちぃしなぁ」
「ああ、また古代語か? そのスキレットとかいうのはなんだ?」
「小微羽は、まあ神耶族専用の使い魔…みたいなモンだな。クロスの虫と同じで、相手を服従させられればなんでもオッケーだぜ」
「人間が虫扱いになるのか?」
「んー、そー言われると、こいつらが虫になったみてーで、更に気持ちわりーな」
「いや、そこじゃなくて…」
「これ以上の説明はめんどっちぃから、タクトにでも聞きなよ」
「このものぐさ小僧! なんでも端折るなと言っておろうがっ!」
タクトに両頬を引っ張られて、ジェラートは逃れようとジタバタした。
「ひゃめろよー! 俺はもう小僧じゃねェってー!」
「見た目がどれほど大きくなろうと、頭がカボチャのままなら、中身は小僧で間違っとらんっ!」
「ジェムってば、あんなに大人になっても、やってるコト同じだなあ…」
幻影のタクトと小さなジェラートの様子を思い出して、クロスが呟いた。
「あの二人、ずっとあんなことをしてたのか?」
「うん。まぁ、大体あんな感じだったよ」
マハトは呆れ顔で二人を眺めた。
「じゃあもしかして、見たくもない変なモノが、これからは更に見えるようになっちゃったりすんのっ?!」
「えーと、なんだったっけ、見鬼眼つったっけ?」
首を傾げてタクトに問うたジェラートの言葉に、クロスは顔をしかめた。
「それ、なに?」
「貴様、やはり知らなんだのか。見鬼眼をきちんと使いこなしておれば、そこの弟子に化けてた毒まんじゅうを、すぐにも看破出来ていたろうに」
「待って、待って、待って! マジ、待って! じゃあ俺が魔導士だから、視えてるんじゃないの?」
「言っておくがの。貴様の知識は人間のかなり間違ったものに偏っておる。宴の食卓と言ったかの? アレなぞがいい例じゃ。多分贄の食卓を再現しようとしたのだろうが、失われた術式を無理矢理つなげ合わせたんじゃろ」
「そうなのっ?」
「贄の食卓は、相手の全てを奪い取る禁忌の術じゃが。破片を集めて、得られるか得られまいかの博打のような術になったのだろうて」
「え…ええええ~」
クロスは、いろいろな意味で脱力した声を上げた。
自身が必死に調べ学んだ知識が、トンデモ偽学だと言われたのだ。
ショックでないわけがない。
「その見鬼眼にしても、そうじゃ。人間には珍しいとはいえ、それほど稀な特殊技能でもない。今後は、ペテン師の幻像術程度、すぐにも見抜けるように精進するがよかろうよ」
自分の長年の悩みを一言で流されて、クロスは愕然となった。
タクトの姿が自分以外の、アルバーラにすら視えていなかったのは、そういう理由だったのか。
とすると、カービンやルミギリスに抱いた苛立ちは、完全に八つ当たりだった。
「屋敷ごと研究を焼き払っておいて、この弟子達は元に戻して、どうするつもりなんだ?」
マハトが足元の、四人の弟子を見遣る。
「別にどうもしない。クロスがこいつらのコト、すっげぇ心配してたから助けてやっただけだもん」
「こら小僧、それを一人でやり遂げたかのように、威張るんじゃない」
タクトに物言いをされたジェラートは、タクトに背を向けて小さくあかんべをして見せる。
「しかし、それではまた、神耶族に対して悪さをするんじゃないのか?」
「ん~、そっか。じゃ、俺の小微羽でも……、うーん、それもめんどっちぃしなぁ」
「ああ、また古代語か? そのスキレットとかいうのはなんだ?」
「小微羽は、まあ神耶族専用の使い魔…みたいなモンだな。クロスの虫と同じで、相手を服従させられればなんでもオッケーだぜ」
「人間が虫扱いになるのか?」
「んー、そー言われると、こいつらが虫になったみてーで、更に気持ちわりーな」
「いや、そこじゃなくて…」
「これ以上の説明はめんどっちぃから、タクトにでも聞きなよ」
「このものぐさ小僧! なんでも端折るなと言っておろうがっ!」
タクトに両頬を引っ張られて、ジェラートは逃れようとジタバタした。
「ひゃめろよー! 俺はもう小僧じゃねェってー!」
「見た目がどれほど大きくなろうと、頭がカボチャのままなら、中身は小僧で間違っとらんっ!」
「ジェムってば、あんなに大人になっても、やってるコト同じだなあ…」
幻影のタクトと小さなジェラートの様子を思い出して、クロスが呟いた。
「あの二人、ずっとあんなことをしてたのか?」
「うん。まぁ、大体あんな感じだったよ」
マハトは呆れ顔で二人を眺めた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる