74 / 122
ep.2:追われる少年
17.禁忌の真実【4】
しおりを挟む
「では、タクトはあのドラゴンの正体は何だと思うんだ?」
『ふん…アレは、妖魔化した人間であろう』
「え、合成妖魔じゃなくて?」
クロスが問うた。
『確かにドラゴンに似せるための能力をツギハギにしている状態は、合成妖魔と言えなくもないが。溜め過ぎた能力値が人間の器に収まりきらなくなり器のカタチが変わっているのじゃから、すなわち妖魔化であろう。毒まんじゅうの実際の姿が今どうなっているかは解らぬが、あのドラゴンのような姿は幻獣族の持つ全像術の特殊技能で視せているだけであろう』
「しかし、アルバーラはジェラートも喰ってしまったんだろう? 神耶族の能力値の10%を得ているんじゃないのか?」
『彼奴の目的は、神耶族を隷属させることじゃ。簡単に喰う訳なかろ
きっぱりと、タクトは言った。
「ああ、そうだった…。スゲェ勢いで弟子を喰ってたから、てっきり錯覚してたよ…」
『彼奴の胸に湧き出たアレは、核化されたジェラートじゃろう』
「でも核化は術の顕現までに、三日ぐらい掛かるんじゃないの?」
己の知る常識の感覚で、クロスはそう訊いたのだが。
タクトは冷笑のような、笑みを浮かべる。
『人間の拙い能力では、そうであろ。実際に儂が完全に変化するまでに、二日ほど掛かっておるからな。だが毒まんじゅうは下級の幻獣族まで喰って、かなり魔力の底上げをしたようじゃし。使うのも二度目とあって、手慣れたところもあろうし』
「それで、おまえとジェラートに掛かっているその術は、どうやったら解けるんだ?」
『簡単じゃな。掛けた相手を倒せば良い』
「少しも簡単じゃないじゃないか」
『まあ、どの程度の幻獣族を、どのくらい喰ったか判らんところが手痛いの』
「それは、下級といえど幻獣族でしょ、数年の間に何十体も集められるモンじゃないと思うよ。集めまくって十体かそこらが、精々の量じゃないかな」
『ふむ。ならば相手の能力は、下級の幻獣族程度と見ておけば、トントンじゃろう』
これからの戦いに先方の戦力を推し量るクロスとタクトに、マハトが遠慮がちに問うた。
「話は全部ちゃんと聞いておきたいんだが、こんなに悠長にしていていいのか? あのドラゴンがいつこちらに来るか、分からないだろう」
「あ、それは大丈夫だよ。この屋敷は、出入り口以外は結界で外に出られないから、あっちは絶対、追いかけるより出てくるの待つほうが得策って考えてると思う」
クロスの答えに、マハトは安心したように頷いた。
「そうか、それなら質問させてもらいたいんだが、あいつはなぜ、体内に取り込んだジェラートを、わざわざ胸に浮き出させてるんだ?」
『あれはジェラートが逃げ出そうとしておる、と言うのが正しい。じゃが、あのカボチャ頭めが、どうせ出るならもっと柔らかい部分を狙えばよかろうに』
「ドラゴンに柔らかい部分なんてあるのか?」
『どんなにウロコでがっちり身を固めている生き物でも、関節の内側や耳の後ろなど、折れ曲がっている部分は弱いに決まっておるわ』
「あの、飲み込まれた状態で、ソコを狙って出るのも、一苦労だと思うけど…」
ぼそっと呟いたクロスを、タクトは冷たい目線で睨む。
『とにかくじゃ! ミッションは二つ、ジェラートの透晶珠を無傷で取り戻すこと! あの毒まんじゅうの息の根を止めること、じゃ!』
「だからそう簡単に言われても…」
『策はある! これから作戦を説明するから、良く聞けい』
『ふん…アレは、妖魔化した人間であろう』
「え、合成妖魔じゃなくて?」
クロスが問うた。
『確かにドラゴンに似せるための能力をツギハギにしている状態は、合成妖魔と言えなくもないが。溜め過ぎた能力値が人間の器に収まりきらなくなり器のカタチが変わっているのじゃから、すなわち妖魔化であろう。毒まんじゅうの実際の姿が今どうなっているかは解らぬが、あのドラゴンのような姿は幻獣族の持つ全像術の特殊技能で視せているだけであろう』
「しかし、アルバーラはジェラートも喰ってしまったんだろう? 神耶族の能力値の10%を得ているんじゃないのか?」
『彼奴の目的は、神耶族を隷属させることじゃ。簡単に喰う訳なかろ
きっぱりと、タクトは言った。
「ああ、そうだった…。スゲェ勢いで弟子を喰ってたから、てっきり錯覚してたよ…」
『彼奴の胸に湧き出たアレは、核化されたジェラートじゃろう』
「でも核化は術の顕現までに、三日ぐらい掛かるんじゃないの?」
己の知る常識の感覚で、クロスはそう訊いたのだが。
タクトは冷笑のような、笑みを浮かべる。
『人間の拙い能力では、そうであろ。実際に儂が完全に変化するまでに、二日ほど掛かっておるからな。だが毒まんじゅうは下級の幻獣族まで喰って、かなり魔力の底上げをしたようじゃし。使うのも二度目とあって、手慣れたところもあろうし』
「それで、おまえとジェラートに掛かっているその術は、どうやったら解けるんだ?」
『簡単じゃな。掛けた相手を倒せば良い』
「少しも簡単じゃないじゃないか」
『まあ、どの程度の幻獣族を、どのくらい喰ったか判らんところが手痛いの』
「それは、下級といえど幻獣族でしょ、数年の間に何十体も集められるモンじゃないと思うよ。集めまくって十体かそこらが、精々の量じゃないかな」
『ふむ。ならば相手の能力は、下級の幻獣族程度と見ておけば、トントンじゃろう』
これからの戦いに先方の戦力を推し量るクロスとタクトに、マハトが遠慮がちに問うた。
「話は全部ちゃんと聞いておきたいんだが、こんなに悠長にしていていいのか? あのドラゴンがいつこちらに来るか、分からないだろう」
「あ、それは大丈夫だよ。この屋敷は、出入り口以外は結界で外に出られないから、あっちは絶対、追いかけるより出てくるの待つほうが得策って考えてると思う」
クロスの答えに、マハトは安心したように頷いた。
「そうか、それなら質問させてもらいたいんだが、あいつはなぜ、体内に取り込んだジェラートを、わざわざ胸に浮き出させてるんだ?」
『あれはジェラートが逃げ出そうとしておる、と言うのが正しい。じゃが、あのカボチャ頭めが、どうせ出るならもっと柔らかい部分を狙えばよかろうに』
「ドラゴンに柔らかい部分なんてあるのか?」
『どんなにウロコでがっちり身を固めている生き物でも、関節の内側や耳の後ろなど、折れ曲がっている部分は弱いに決まっておるわ』
「あの、飲み込まれた状態で、ソコを狙って出るのも、一苦労だと思うけど…」
ぼそっと呟いたクロスを、タクトは冷たい目線で睨む。
『とにかくじゃ! ミッションは二つ、ジェラートの透晶珠を無傷で取り戻すこと! あの毒まんじゅうの息の根を止めること、じゃ!』
「だからそう簡単に言われても…」
『策はある! これから作戦を説明するから、良く聞けい』
10
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる