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ep.2:追われる少年
16.喰らいつくす【4】
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「うわあっ!」
クロスの頭の中に "プチッ" という擬音と共に潰された自分が、思い描かれた。
しかし振り下ろされた尾に潰されることなく、身体が何かに弾かれ中空高く飛ばされている。
落下して床に叩きつけられる前に、クロスは疾風を詠唱して、着地の衝撃を和らげた。
だが絶対に離すまいと抱きしめているジェラートを庇って、背中を強か打ち付けてしまう。
「う………ってぇ…」
「クロス、大丈夫か?」
「大丈夫…、まだ生きてるよ…。…てか、尾っぽの一撃、ジェラートが止めたの?」
「止めたかったけど全然ダメで、俺らすっ飛ばされちゃった」
「いや、充分だったよ。おかげで潰れず済んだ」
クロスは立ち上がった。
「俺が抱いてるより、自分で走ったほうが早そうだな」
「結界が効かなかったんだ。タクトは近代魔法なんてカスだから、覚える必要ねぇっつってたけど、俺はちゃんと覚えてたから」
「ああ、それで防御の発動タイミングが遅れたのか。この屋敷は、食虫植物みたいな結界で囲まれてるから、中じゃ結界は使えないんだ。他にもどれほど誓約があるかわからない。術を使う時は複数の選択肢を残した方が正解だ」
「ワカッタ!」
「頼むぜ、相棒」
クロスがジェラートの肩を叩く。
ジェラートはちょっと生意気な顔で笑いながら頷いた。
しっかりと自身の足で立ったジェラートは、向こうで奮戦しているアンリーの様子を見ながら、ふわっと両腕を広げた。
すると鳥が両翼を広げたような幻想が広がって、小さな少年の手が荘厳なオーケストラを操る指揮者のように、力強さと優雅さを兼ね備えた動きで羽ばたいた。
細かい氷の粒子が、まるで鋭利な刃物のような鋭さをもって、ドラゴンに向かって吹雪く。
それまでアンリーが仕掛けた術は、ほとんどマッチの炎程度にしかドラゴンに響いていなかったのが嘘のように、ジェラートの作り出した吹雪のナイフはドラゴンのウロコを切り裂いた。
蹌踉めいたドラゴンは、ジェラートの吹雪に対抗して、吹雪のブレスを吐き散らかしてくる。
吹雪と吹雪がぶつかり合い、それは猛烈な力の押し合いとなって拮抗した。
クロスは空に大きな陣を描くと、鋭い一閃となった雷を、ドラゴンの頭上に落とした。
クロスの頭の中に "プチッ" という擬音と共に潰された自分が、思い描かれた。
しかし振り下ろされた尾に潰されることなく、身体が何かに弾かれ中空高く飛ばされている。
落下して床に叩きつけられる前に、クロスは疾風を詠唱して、着地の衝撃を和らげた。
だが絶対に離すまいと抱きしめているジェラートを庇って、背中を強か打ち付けてしまう。
「う………ってぇ…」
「クロス、大丈夫か?」
「大丈夫…、まだ生きてるよ…。…てか、尾っぽの一撃、ジェラートが止めたの?」
「止めたかったけど全然ダメで、俺らすっ飛ばされちゃった」
「いや、充分だったよ。おかげで潰れず済んだ」
クロスは立ち上がった。
「俺が抱いてるより、自分で走ったほうが早そうだな」
「結界が効かなかったんだ。タクトは近代魔法なんてカスだから、覚える必要ねぇっつってたけど、俺はちゃんと覚えてたから」
「ああ、それで防御の発動タイミングが遅れたのか。この屋敷は、食虫植物みたいな結界で囲まれてるから、中じゃ結界は使えないんだ。他にもどれほど誓約があるかわからない。術を使う時は複数の選択肢を残した方が正解だ」
「ワカッタ!」
「頼むぜ、相棒」
クロスがジェラートの肩を叩く。
ジェラートはちょっと生意気な顔で笑いながら頷いた。
しっかりと自身の足で立ったジェラートは、向こうで奮戦しているアンリーの様子を見ながら、ふわっと両腕を広げた。
すると鳥が両翼を広げたような幻想が広がって、小さな少年の手が荘厳なオーケストラを操る指揮者のように、力強さと優雅さを兼ね備えた動きで羽ばたいた。
細かい氷の粒子が、まるで鋭利な刃物のような鋭さをもって、ドラゴンに向かって吹雪く。
それまでアンリーが仕掛けた術は、ほとんどマッチの炎程度にしかドラゴンに響いていなかったのが嘘のように、ジェラートの作り出した吹雪のナイフはドラゴンのウロコを切り裂いた。
蹌踉めいたドラゴンは、ジェラートの吹雪に対抗して、吹雪のブレスを吐き散らかしてくる。
吹雪と吹雪がぶつかり合い、それは猛烈な力の押し合いとなって拮抗した。
クロスは空に大きな陣を描くと、鋭い一閃となった雷を、ドラゴンの頭上に落とした。
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