イルン幻想譚

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ep.2:追われる少年

10.古代の民の末裔【2】

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『ふははっ! そんな上等な話ではないわ。例え "アタリ" を引いたとて、平身低頭して頼み込むのが関の山。幻獣族ファンタズマのような言葉も通じない相手だった場合ばわいは、八つ裂きにされるじゃろ』
「命掛けじゃないか」
『言ったであろう。言葉の通じない相手を呼び出すようなイルダナハは無能と。だがそうそうイルダナハが死んでは示しがつかぬからな。イルダナハになれるのは特殊耐性スキャルダー持ちに限られており、必死になって磨きを掛けるのじゃ』

 そこまでは、少々怒ったり呆れたりはしていたが、普通に話をしていたマハトが、いきなり顔を真赤にして大声を上げた。

「おっ、おまえは! 急になんてことを言い出すんだ!」
『なんじゃ?』
「そんな…、いきなり…、じょ…女性用の下着の話を始めるなんてっ!」

 言われている意味が判らず、タクトは数秒考えてしまった。

『馬鹿者! 女の下着スキャンティーの話などしておらぬわ! 特殊耐性スキャルダー特殊技能スキルに決まっておろ!』
特殊技能スキル…? 生まれつき持っているっていう、アレか?」
『そうじゃ』
「ああ、なんだ、そうか…。俺は特殊技能スキル持ちじゃないぞ」
『さてさて、どうだろうかのう? 赤子あかごの頃から素養ありと見られておったからこそ、ひたいしるしを施されているのだろう?』
「そんな話は聞いたこともないし、そもそも先刻までは痣だった!」
『それは聖水を浴びて "洗礼" されたからであろ。いうなれば覚醒した…とでも言うことか?』
「だから、そんな素養は俺にはない」
『ふむ、だが考えてみれば、あのヒダリマキ女は自信満々に貴様は死んだと断言しておったが、そうしてピンピンしているではないか。思うに、ジェラートのじゅつの掛かりが悪かったのも、その所為であろ』
「それじゃあまるで、俺がじゅつを跳ね返したみたいじゃないか」
特殊耐性スキャルダーは、普通なら耐えられずに死に至るじゅつに、耐えきれるようになる特殊技能スキルじゃ』
「じゃあ、俺がここまで飛んできたのは、なぜだ?」
『思い返すに、あれはもっと外から作用したじゅつじゃな。遺跡に何者かの思念が残っていた…と考えるべきか』
「思念? だれの?」
『さあな』

 タクトは肩を竦めた。

「見てきたように言うかと思えば、今度はひどくあやふやだな」
『正直、人間フォルクの造ったこの程度の遺物にここまでの念を残せるとなると、儂に匹敵するような魔力ガルドルを持っていると思うが。多分、なんとかタタンの一族を愛でておったものがおったんじゃろ。経緯は判らぬが、なんらかの理由で此処を離れねばならなくなり、思念を残していった…と考えるのが順当じゃな』
「その思念で、どうして俺が飛んだんだ?」
『儂が核化フィルギナイズされておらなんだら、じゅつを詳細に精査出来るが。そうであったら、今ここで貴様なぞに助力を求めたりせず、自力で全てを解決しておるわ!』
「ああ、そう言われればそうだったな。すまん」

 確かにそこは、タクトの言い分のほうが筋が通るので、マハトは素直に謝った。
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