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ep.2:追われる少年
9.古代の遺跡【2】
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マハトはハッと、目を開いた。
「なんだ? 今のは…?」
マハトが意識を取り戻したところで、タクトの姿は一瞬にして消えた。
『遅いぞ、残念サウルス! 時間が無いのじゃ、とにかく立ていっ!」
自分の腹の上で怒鳴っている短剣を掴むと、マハトは砂の上に立ち上がる。
「ここはなんだ? 地面が動いてるのか?」
『砂が動いておるのじゃ。貴様には見えぬだろうが、地下で色々と面倒が起きておる。此処も直ぐに崩れ始めるであろう。だが問題は、その次に来る陥没じゃ。此処から這い登って逃げても、意味が無いほどの大穴になるぞ』
「それは困ったな」
『まず言っておく。貴様のような愚鈍なサウルスは、魔導士を相手に立ち回るためには、儂のサポートが絶対に必要なんじゃ! 良いか、以後は何があっても決して儂を身辺から離すでないぞ! 次に、陥没が起きる直前に、儂が貴様の体を穴の外に弾き飛ばすから、衝撃に備えよ』
「そんなことが出来るのか?」
『チャンスは一度きり。ただし、そのあと儂はしばらく沈黙する、そこも了承しておけい』
「沈黙? なぜ?」
『今の儂は魔力を消耗すると、疲労困憊して戻るのに時間が掛かるのじゃ。口がきければいいが、多分数日眠った状態になるじゃろう。よって貴様は此処からの脱出に成功した後、とにかく手段を見つけてクロスのあとを追うのじゃ』
「じゃあ結局あの連中に、ジェラートを奪われたのか?」
『やつらではないが、攫われてしもうた。今、クロスがあとを追っているので、貴様はその加勢に行ってくれ』
「解った。だが、意外だな。タクトがクロスさんを頼るとは思わなかった」
『あのヘタレの他に選択肢が無かったのじゃ、仕方なかろう!』
悪態を吐いているが、タクトの怒鳴り声には今までほどの刺々しさを感じない。
『そろそろ来るぞよ』
ひときわ大きく、上の方の砂が崩れ始めた時だった。
マハトは不思議な気配を感じて、辺りを見回した。
「おいタクト、妙な感じがしてきたんだが、何なんだ。これで俺を穴の外へ弾き出すのか?」
『これは、なんじゃ? この気配は、儂とは関係ない。変に遠くて…、いや、上からか…?』
上と言われ、マハトは空を仰いだ。
すると不意に足元の感覚が無くなったので、下を見ると、マハトは宙に浮かび上がっていた。
地上ではすり鉢の底が抜けたように穴が大きく広がっている。
その様子を見下ろしているマハトの身体は、タクトの言っていた "弾き飛ばす" という表現からは掛け離れた、まるで誰かの大きな手に掬い上げられて、上空へ避難しているような感じだった。
「すごいな、これが神耶族の能力なのか」
『…儂は何もしとらん』
「ええ?」
『貴様こそ、一体どういうチカラを使っておるのだ?』
「どういうって…こっちが聞きたい。タクトのやってることじゃないとしたら、俺はどうやって浮かんでる? 着地はどうしたらいいんだ?」
宙に浮かんだマハトの身体は、大きく広がっていく陥没から離れ、古びたストーンサークルのある丘の上まで来ると、浮かび上がった時と同じように、すんなりと地上に降ろされた。
「なんだ? 今のは…?」
マハトが意識を取り戻したところで、タクトの姿は一瞬にして消えた。
『遅いぞ、残念サウルス! 時間が無いのじゃ、とにかく立ていっ!」
自分の腹の上で怒鳴っている短剣を掴むと、マハトは砂の上に立ち上がる。
「ここはなんだ? 地面が動いてるのか?」
『砂が動いておるのじゃ。貴様には見えぬだろうが、地下で色々と面倒が起きておる。此処も直ぐに崩れ始めるであろう。だが問題は、その次に来る陥没じゃ。此処から這い登って逃げても、意味が無いほどの大穴になるぞ』
「それは困ったな」
『まず言っておく。貴様のような愚鈍なサウルスは、魔導士を相手に立ち回るためには、儂のサポートが絶対に必要なんじゃ! 良いか、以後は何があっても決して儂を身辺から離すでないぞ! 次に、陥没が起きる直前に、儂が貴様の体を穴の外に弾き飛ばすから、衝撃に備えよ』
「そんなことが出来るのか?」
『チャンスは一度きり。ただし、そのあと儂はしばらく沈黙する、そこも了承しておけい』
「沈黙? なぜ?」
『今の儂は魔力を消耗すると、疲労困憊して戻るのに時間が掛かるのじゃ。口がきければいいが、多分数日眠った状態になるじゃろう。よって貴様は此処からの脱出に成功した後、とにかく手段を見つけてクロスのあとを追うのじゃ』
「じゃあ結局あの連中に、ジェラートを奪われたのか?」
『やつらではないが、攫われてしもうた。今、クロスがあとを追っているので、貴様はその加勢に行ってくれ』
「解った。だが、意外だな。タクトがクロスさんを頼るとは思わなかった」
『あのヘタレの他に選択肢が無かったのじゃ、仕方なかろう!』
悪態を吐いているが、タクトの怒鳴り声には今までほどの刺々しさを感じない。
『そろそろ来るぞよ』
ひときわ大きく、上の方の砂が崩れ始めた時だった。
マハトは不思議な気配を感じて、辺りを見回した。
「おいタクト、妙な感じがしてきたんだが、何なんだ。これで俺を穴の外へ弾き出すのか?」
『これは、なんじゃ? この気配は、儂とは関係ない。変に遠くて…、いや、上からか…?』
上と言われ、マハトは空を仰いだ。
すると不意に足元の感覚が無くなったので、下を見ると、マハトは宙に浮かび上がっていた。
地上ではすり鉢の底が抜けたように穴が大きく広がっている。
その様子を見下ろしているマハトの身体は、タクトの言っていた "弾き飛ばす" という表現からは掛け離れた、まるで誰かの大きな手に掬い上げられて、上空へ避難しているような感じだった。
「すごいな、これが神耶族の能力なのか」
『…儂は何もしとらん』
「ええ?」
『貴様こそ、一体どういうチカラを使っておるのだ?』
「どういうって…こっちが聞きたい。タクトのやってることじゃないとしたら、俺はどうやって浮かんでる? 着地はどうしたらいいんだ?」
宙に浮かんだマハトの身体は、大きく広がっていく陥没から離れ、古びたストーンサークルのある丘の上まで来ると、浮かび上がった時と同じように、すんなりと地上に降ろされた。
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扉絵:葵浩サマ:AK-studio
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