31 / 90
ep.2:追われる少年
1:失業した男【1】
しおりを挟む
「クロスく~ん。大人なんだからさぁ、わかるでしょ? キミだけ、なんだよねぇ~。商隊と護衛隊、両方からクレームきてるヒトはさぁ…」
商隊のリーダーを務めている小太りの男は、じろりと視線をクロスに向け、これみよがしのため息を吐き、実に面倒くさそうな顔をした。
これは要するに、解雇通知だ。
そしてクロスは、数日前にようやくの思いでありついた護衛の仕事を、あっさりとお払い箱にされた。
「ああ、またか…」
もう、ため息も出ない。
いつものことだが、自己肯定感がダダ下がる。
魔導士としての技量は、誰にも引けは取らないし、それに関しては絶対の自信がある。
但し、それ以外のことに関しては、誰にも引けを取ってばかりだ。
「どうすっかな…」
クロスは、一人で森の中の切り株に座り込んでいた。
商隊の護衛の仕事は、冒険者組合の斡旋だが、解雇の権限は商隊にある。
出先でクビを言い渡されるのは、クロスに取っては "いつものこと" であった。
魔力を持たない、いわゆる持たざる者達は、魔導士を嫌う。
もっとも彼らにしてみれば、 "魔法" などという、得体のしれないモノを使う魔導士は、薄気味悪い嫌悪の対象なのだから、仕方がないのかもしれないが。
仕事の難易度に関係なく、基本は "彼らをやり過ごす" ことが出来れば、仕事の90%は成功したと言えるだろう。
雇用主が魔導士を嫌悪していれば、くだらぬ口喧嘩程度のことがきっかけでも、これこのようにクビになるのだから。
そうして、今までにクビにされた履歴を細かく思い返して、余計に気分を落ち込ませて歩いていたら、いつのまにか方向を見失って、森の中にいた。
無闇に歩き回っても良いことはないだろう…と考え、とりあえず動くのをやめ、目についた切り株に座っている。
「こういう場所って、レイスみたいな、実体のない変なものが出やすいんだよなぁ…」
そう呟いてから、思わずブルブルと頭を振る。
「いかん、いかん! 弱気こそがヤツらを呼ぶんだ!」
己を鼓舞しようとしたクロスの耳に、ヒトの声が聞こえた。
こんな場所で? と言う疑問と、考えた途端に "出た" のか? と言う恐怖が同時に脳裏を掠めたが、それらを払拭する生気が漲った喊声が、再び聞こえる。
クロスは、声のする方へ急いだ。
商隊のリーダーを務めている小太りの男は、じろりと視線をクロスに向け、これみよがしのため息を吐き、実に面倒くさそうな顔をした。
これは要するに、解雇通知だ。
そしてクロスは、数日前にようやくの思いでありついた護衛の仕事を、あっさりとお払い箱にされた。
「ああ、またか…」
もう、ため息も出ない。
いつものことだが、自己肯定感がダダ下がる。
魔導士としての技量は、誰にも引けは取らないし、それに関しては絶対の自信がある。
但し、それ以外のことに関しては、誰にも引けを取ってばかりだ。
「どうすっかな…」
クロスは、一人で森の中の切り株に座り込んでいた。
商隊の護衛の仕事は、冒険者組合の斡旋だが、解雇の権限は商隊にある。
出先でクビを言い渡されるのは、クロスに取っては "いつものこと" であった。
魔力を持たない、いわゆる持たざる者達は、魔導士を嫌う。
もっとも彼らにしてみれば、 "魔法" などという、得体のしれないモノを使う魔導士は、薄気味悪い嫌悪の対象なのだから、仕方がないのかもしれないが。
仕事の難易度に関係なく、基本は "彼らをやり過ごす" ことが出来れば、仕事の90%は成功したと言えるだろう。
雇用主が魔導士を嫌悪していれば、くだらぬ口喧嘩程度のことがきっかけでも、これこのようにクビになるのだから。
そうして、今までにクビにされた履歴を細かく思い返して、余計に気分を落ち込ませて歩いていたら、いつのまにか方向を見失って、森の中にいた。
無闇に歩き回っても良いことはないだろう…と考え、とりあえず動くのをやめ、目についた切り株に座っている。
「こういう場所って、レイスみたいな、実体のない変なものが出やすいんだよなぁ…」
そう呟いてから、思わずブルブルと頭を振る。
「いかん、いかん! 弱気こそがヤツらを呼ぶんだ!」
己を鼓舞しようとしたクロスの耳に、ヒトの声が聞こえた。
こんな場所で? と言う疑問と、考えた途端に "出た" のか? と言う恐怖が同時に脳裏を掠めたが、それらを払拭する生気が漲った喊声が、再び聞こえる。
クロスは、声のする方へ急いだ。
10
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる