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第一部:アレックス
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数日後、ロイは珍しくモンテカルロのオフィスにいた。
モンテカルロの前にはマコーミックが立って仕事の報告をしている。
マコーミックは、太りきったモンテカルロとは対照的に痩せこけた、カマキリを思わせる背の高い男だ。
組織の中ではナンバー2と、高い地位の幹部ではあるが、裏で糸を引いて相手を陥れるようなマコーミックのやり方は、派手好きのモンテカルロには今一つ評価が低い。
今日も、先日から話を進めている取引で、相手を警戒しては日程を伸ばしているマコーミックに苛立ち、モンテカルロが催促をしているようだった。
「それで、結局上手くいかなかったんだな」
「上手くいってない訳じゃありません。急いては事をし損じるというじゃないですか。焦って飛びついては、相手に安くみられてしまうでしょう?」
「オマエのやり方じゃあ、いつまでだっても品物が手許にこないじゃないかっ! もういい、この一件は別の奴に回す」
「ボスッ!」
「ウルサイッ! 全く、オマエには失望したぞ。まかせておけば安心と言ったのはどこのどいつだ」
「決して損はさせませんっ。このまま任せておいて…」
「もう良い、黙れ。オマエの後がまが決まるまでおとなしくしてろ」
モンテカルロは、葉巻をとると大きく吸い込み、煙を吐いた。
顔に煙をかけられ、マコーミックは顔をしかめる。
部屋の隅で、ロイが小さく笑った。
「ロイ、なんか言いたそうだな。何だ?」
「ボスは新人が嫌いだけど、一人面白い男がいるから、どうかと思って」
モンテカルロに促されて、ロイは口を開いた。
ロイがアレックスに言った言葉に偽りはなく、ロイはモンテカルロを嫌っていて本当は協力などしたくなかったが、アレックスは出世を望んでいた。
同じように出世を望んでロイに近付いてきた人間は、星の数ほどもいる。
けれど、こんな風に面倒をみてやろうと思ったのは、アレックスが初めてだった。
だからアレックスを推薦する為のタイミングを計る為に、いたくもないこの部屋に日参している自分に驚きすら感じていた。
それはともかく、早く用事を済ませてここから出ていきたかったのも手伝って、ロイはいつになく素直に言葉を返した。
「誰だ?」
「ヴァレンタイン。…と言っても、判んないかな?」
ロイは薄く笑う。
モンテカルロは、問うような視線をマコーミックに投げかけた。
「…この間のパーティーに来ていた奴じゃないですか…? しかしどこの馬の骨とも…」
モンテカルロの目線が、再びロイに向けられる。
「使えるのか?」
「ボス」
遮るようにマコーミックが口を開いたが、モンテカルロはそれを取り合わなかった。
「ロイ、そいつは使いモノになりそうなのか?」
「さあね。そいつは見てのお楽しみ」
「なるほど…、でもオマエは、そいつを勧めるんだな」
モンテカルロは指で机を叩いた。口元には意味深な笑みが浮かんでいる。
「そういうコトに…なるね」
「良かろう。この件はそいつに任せてみよう」
モンテカルロが決断を下すと、ロイは軽く頷いて部屋を出ていった。
モンテカルロの前にはマコーミックが立って仕事の報告をしている。
マコーミックは、太りきったモンテカルロとは対照的に痩せこけた、カマキリを思わせる背の高い男だ。
組織の中ではナンバー2と、高い地位の幹部ではあるが、裏で糸を引いて相手を陥れるようなマコーミックのやり方は、派手好きのモンテカルロには今一つ評価が低い。
今日も、先日から話を進めている取引で、相手を警戒しては日程を伸ばしているマコーミックに苛立ち、モンテカルロが催促をしているようだった。
「それで、結局上手くいかなかったんだな」
「上手くいってない訳じゃありません。急いては事をし損じるというじゃないですか。焦って飛びついては、相手に安くみられてしまうでしょう?」
「オマエのやり方じゃあ、いつまでだっても品物が手許にこないじゃないかっ! もういい、この一件は別の奴に回す」
「ボスッ!」
「ウルサイッ! 全く、オマエには失望したぞ。まかせておけば安心と言ったのはどこのどいつだ」
「決して損はさせませんっ。このまま任せておいて…」
「もう良い、黙れ。オマエの後がまが決まるまでおとなしくしてろ」
モンテカルロは、葉巻をとると大きく吸い込み、煙を吐いた。
顔に煙をかけられ、マコーミックは顔をしかめる。
部屋の隅で、ロイが小さく笑った。
「ロイ、なんか言いたそうだな。何だ?」
「ボスは新人が嫌いだけど、一人面白い男がいるから、どうかと思って」
モンテカルロに促されて、ロイは口を開いた。
ロイがアレックスに言った言葉に偽りはなく、ロイはモンテカルロを嫌っていて本当は協力などしたくなかったが、アレックスは出世を望んでいた。
同じように出世を望んでロイに近付いてきた人間は、星の数ほどもいる。
けれど、こんな風に面倒をみてやろうと思ったのは、アレックスが初めてだった。
だからアレックスを推薦する為のタイミングを計る為に、いたくもないこの部屋に日参している自分に驚きすら感じていた。
それはともかく、早く用事を済ませてここから出ていきたかったのも手伝って、ロイはいつになく素直に言葉を返した。
「誰だ?」
「ヴァレンタイン。…と言っても、判んないかな?」
ロイは薄く笑う。
モンテカルロは、問うような視線をマコーミックに投げかけた。
「…この間のパーティーに来ていた奴じゃないですか…? しかしどこの馬の骨とも…」
モンテカルロの目線が、再びロイに向けられる。
「使えるのか?」
「ボス」
遮るようにマコーミックが口を開いたが、モンテカルロはそれを取り合わなかった。
「ロイ、そいつは使いモノになりそうなのか?」
「さあね。そいつは見てのお楽しみ」
「なるほど…、でもオマエは、そいつを勧めるんだな」
モンテカルロは指で机を叩いた。口元には意味深な笑みが浮かんでいる。
「そういうコトに…なるね」
「良かろう。この件はそいつに任せてみよう」
モンテカルロが決断を下すと、ロイは軽く頷いて部屋を出ていった。
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