メビウスのトンネル

RU

文字の大きさ
上 下
1 / 25

第1話

しおりを挟む
名前:halcaハルカ
職業:ミュージシャン

──なんて書くと、やたらにカッコイイ印象を与えるが。

 実際はミュージシャンなんて職業の人間は、そんじょそこらに掃いて捨てるほどいる。
 ファン以外の人間でも、顔と名前を知っているような「売れっ子ミュージシャン」なら特別な存在になるが、残念ながら俺にそんな知名度は無い。
 テクには定評があるし、自分でも自信がある。
 俺は人一倍の努力で自分のテクを磨き、ギターの仕事だけで食い扶持を稼いでいるのだから、十把一絡げのミュージシャンの中ではマシな位置にいると思う。
 しかし特別なミュージシャンになるために必要なのは、技術よりもひらめきであり、努力よりも才能なのだ。
 テクは努力で身につける事が出来るが、イイ音を作るには努力じゃどうしようもないセンスが必要で、どれほどの野望を持ってしても、現実はそんなに甘くない。
 肝心の才能を持ち合わせていない俺は、どんなに努力をしても結局しがないギター弾きでしかなく、日々営業に精を出して日銭を稼ぐしかないのだ。



 知り合いのプロモーターが主催した音楽イベントに、東雲柊一しののめしゅういちを呼んだ。
 東雲柊一と言えば、今の音楽業界では押しも押されぬ人気商品である。
 同じ人気商品でも、大手プロダクションから出てきたアイドル系とか、バラエティ番組でお茶の間に顔売りまくってて実は歌よりトークの方が得意、なんて類の商品とは違う。
 路上ライブと動画投稿で口コミを集め、音楽配信サイトで爆発的にブレイクした、正真正銘のヴォーカリストだ。
 口さがない連中は「一発屋で終わる」なんて散々叩いていたが、デビュー3年目のサード・アルバムも順調に売り上げを伸ばしていて、底冷えしきっている音楽業界の救世主的な立場になりつつある目玉商品、それが東雲柊一だ。
 プロモーターとのコネでイベントにちゃっかりもぐりこんだ俺は、目玉商品の打ち上げの席まで顔を出す事に成功した。
 打ち上げなんて、個人のツアーなら酒とメシと気のあったメンツを揃えてパアッと機嫌良く済ませてしまえばいいが、こうした大がかりなイベントとなると、イベントそのものに有名無名を問わず音楽関係者が会する。
 となれば、無名の輩は有名な人物に顔を売る絶好のチャンスとなるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

食欲と快楽に流される僕が毎夜幼馴染くんによしよし甘やかされる

BL
 食べ物やインキュバスの誘惑に釣られるお馬鹿がなんやかんや学園の事件に巻き込まれながら結局優しい幼馴染によしよし甘やかされる話。 □食い意地お馬鹿主人公受け、溺愛甘やかし幼馴染攻め(メイン) □一途健気不良受け、執着先輩攻め(脇カプ) pixivにも投稿しています。

孤狼のSubは王に愛され跪く

ゆなな
BL
旧題:あなたのものにはなりたくない Dom/Subユニバース設定のお話です。 氷の美貌を持つ暗殺者であり情報屋でもあるシンだが実は他人に支配されることに悦びを覚える性を持つSubであった。その性衝動を抑えるために特殊な強い抑制剤を服用していたため周囲にはSubであるということをうまく隠せていたが、地下組織『アビス』のボス、レオンはDomの中でもとびきり強い力を持つ男であったためシンはSubであることがばれないよう特に慎重に行動していた。自分を拾い、育ててくれた如月の病気の治療のため金が必要なシンは、いつも高額の仕事を依頼してくるレオンとは縁を切れずにいた。ある日任務に手こずり抑制剤の効き目が切れた状態でレオンに会わなくてはならなくなったシン。以前から美しく気高いシンを狙っていたレオンにSubであるということがバレてしまった。レオンがそれを見逃す筈はなく、シンはベッドに引きずり込まれ圧倒的に支配されながら抱かれる快楽を教え込まれてしまう───

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...