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第12話

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「ああ、うん。それならテレビで見たから、知ってるって。…あのな、何度も言わせんなよ…、この部屋空調が全然ないし、まともな家具もないから長居したくねェんだってば」

 多聞からの電話を受けながら、柊一は被っている毛布を身体に巻き付け直した。

「だぁから、それはもうイイっての! 俺の服をオマエが焼却しちまったコトを責めてるんじゃなくて、この部屋にいるのが大変だって話で。椅子もねェし、床は冷たいし…」

 いくら室内にいるとはいえ、山の中であるこの場所は夜になるとかなり冷え込んでくる。
 服を焼却されてしまった柊一は、とりあえずあり合わせのバスローブを羽織り、上から毛布を巻き付けていた。
 まともな暖房器具のある部屋にいても、その格好をしていないと厳しいと感じる時さえあるのに、この家の中で唯一電話機がある部屋は、その暖房器具すらないのだ。
 多聞の話を聞きたくない訳ではないが、まともに腰を掛ける場所すらないこの部屋に長居をしろと言われるのはかなり酷な話だった。
 日に一度掛かってくる電話が、必要だと柊一も思う。
 テレビが伝えてくれる情報には、嘘や誇張も混じっていて、正確に状況を把握するには、その場に居る人間からの情報が必須だ。
 だがここ数日の多聞からの連絡は、泣き言にばかり偏りがちだった。

「なんか進展があるまで、連絡しなくていいって言ってる…」

 言いかけて、柊一はふと喋るのを止めた。
 階下で、物音がしたような気がしたからだ。
 しかし、そちらに神経を集中する前に、柊一に遮られる事の無くなった多聞が一気に喋りだしてしまい、階下の様子を伺う事も出来ない。

「ちょ…ちょっと待てって…あぁ? なに?」

 まくし立てる多聞の話をおざなりに聞き流そうとした柊一だったが、そこで語り始められた話の内容にそれが出来なくなる。

「俺の車が、見つかったって? 北沢サンと、オマエとで、こっちに確認に来たのか?」

 内容が泣き言ではなく、多少なりとも事態の進展を伝えるものになってきたので、柊一はすっかり階下の不審な物音の事を忘れてしまった。

「で、警察の方でも俺の車だって認めたんだな? …そりゃ、メンバーが一人死んだかもしれねェって時に無理に事務所に引き留めたりはしねェだろ。じゃあ、オマエ今夜すぐそっち出るの? うん、じゃあな」

 道理で妙にはしゃいだ感じの声だと思ったと、柊一は受話器を置きながら小さな溜息をついた。
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