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第101話
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市ヶ谷の言う「超! あま~いヒント」を前に、神巫は相変わらず苦戦していた。
遊ぶ…と言われても、それが何の事なのかさっぱり理解出来ないので、ヒントを理解する為のヒントが必要な状態だったのだ。
買ってきた缶コーヒーをもてあそびながら廊下を歩いていた神巫は、深夜の製作室に明かりがついている事に気付いた。
市ヶ谷か、柊一辺りが残業をしているのだろうか?
「そーいえば、メールの返信はくれるけど、アレ以来ロクにデートもしてないんだよな~」
ぶつぶつと一人ごちて。
それならばいっそ、残業の気晴らしにちょこっと柊一の顔でも拝ませて貰おうかと思い立ち、神巫は企画室に戻らずに製作室の扉に手を掛けた。
が、そこでふと、イタズラ心を起こす。
そうっと中に入って、柊一をおどろかしてみるのも面白いかもしれない。
ふとそんな事を思い立って、神巫はいつものように即座に扉を開けず、慎重に気配を消して扉を開けた。
室内にはマシンのモーターと一緒に、聴き慣れない音楽が流れている。
どうやらいつもはつけっぱなしのラジオを止めて、パソコンに内蔵されているメディアプレーヤーを使っているらしい。
そんな事を柊一がするのは酷く珍しいな…と思いながら、神巫は室内の様子を見る為に中を覗き込んだ。
「?」
てっきり、ほぼ正面にある窓際のいつもの席で、柊一が黙々とディスプレイを見つめながら仕事をしている物だと思いこんでいたが。
そこで作業をしていたのは、柊一ではなかった。
それどころか、製作室の人間ですらなかった。
扉に1番近いマシンに向かっていたその人物は、他でもない多聞だったのだ。
びっくりして、思わず扉を閉めようかと思ったが。
同時に、一体何をしているのかが気になって、神巫は先程よりもますま注意深く気配を殺し、多聞の様子を窺う。
多聞は、少し行儀が悪い恰好で斜めに傾いで椅子に腰掛け、片手でマウスを操作しながら、ジイッと画面を見入っている。
ディスプレイの角度と、多聞の姿勢に邪魔をされて、何をしているのか良く判らなかったが。
しばらくジイッとその様子を見ていて、神巫はハッとなった。
室内に流れている音楽を、てっきりメディアプレーヤーを使って既存のオムニバスでも聴いていると決めつけていたが。
そのメロディラインには聞き覚えがあった。
それは、神巫がプログラムを作っている、多聞との共同パズルゲーム用に準備している音楽だったのだ。
そしてその事に気付いた瞬間、神巫は多聞が何をしているのかを理解した。
多聞は、そこで神巫の作ったゲームをプレイしているのだ。
神巫は扉をそっと閉めて、気配を殺しつつも慌てて企画室に戻った。
「ちぇ、なんだよ。こっそりあそこでやる程、ハマッてんのかよ?」
ブツブツと呟きながら、神巫はそこで帰宅する為の身支度を調えた。
先程までは、もう少し仕事を詰めていくつもりだったが、多聞のあんな姿を見た後ではそんな気分になれるはずもない。
散々「再校」の判を付いた書類を突き返しておきながら、自分はそのゲームにハマッている…なんて。
そう考えると、猛烈に腹が立ってくる。
乱暴に椅子を蹴って、神巫は早々に企画室を後にした。
遊ぶ…と言われても、それが何の事なのかさっぱり理解出来ないので、ヒントを理解する為のヒントが必要な状態だったのだ。
買ってきた缶コーヒーをもてあそびながら廊下を歩いていた神巫は、深夜の製作室に明かりがついている事に気付いた。
市ヶ谷か、柊一辺りが残業をしているのだろうか?
「そーいえば、メールの返信はくれるけど、アレ以来ロクにデートもしてないんだよな~」
ぶつぶつと一人ごちて。
それならばいっそ、残業の気晴らしにちょこっと柊一の顔でも拝ませて貰おうかと思い立ち、神巫は企画室に戻らずに製作室の扉に手を掛けた。
が、そこでふと、イタズラ心を起こす。
そうっと中に入って、柊一をおどろかしてみるのも面白いかもしれない。
ふとそんな事を思い立って、神巫はいつものように即座に扉を開けず、慎重に気配を消して扉を開けた。
室内にはマシンのモーターと一緒に、聴き慣れない音楽が流れている。
どうやらいつもはつけっぱなしのラジオを止めて、パソコンに内蔵されているメディアプレーヤーを使っているらしい。
そんな事を柊一がするのは酷く珍しいな…と思いながら、神巫は室内の様子を見る為に中を覗き込んだ。
「?」
てっきり、ほぼ正面にある窓際のいつもの席で、柊一が黙々とディスプレイを見つめながら仕事をしている物だと思いこんでいたが。
そこで作業をしていたのは、柊一ではなかった。
それどころか、製作室の人間ですらなかった。
扉に1番近いマシンに向かっていたその人物は、他でもない多聞だったのだ。
びっくりして、思わず扉を閉めようかと思ったが。
同時に、一体何をしているのかが気になって、神巫は先程よりもますま注意深く気配を殺し、多聞の様子を窺う。
多聞は、少し行儀が悪い恰好で斜めに傾いで椅子に腰掛け、片手でマウスを操作しながら、ジイッと画面を見入っている。
ディスプレイの角度と、多聞の姿勢に邪魔をされて、何をしているのか良く判らなかったが。
しばらくジイッとその様子を見ていて、神巫はハッとなった。
室内に流れている音楽を、てっきりメディアプレーヤーを使って既存のオムニバスでも聴いていると決めつけていたが。
そのメロディラインには聞き覚えがあった。
それは、神巫がプログラムを作っている、多聞との共同パズルゲーム用に準備している音楽だったのだ。
そしてその事に気付いた瞬間、神巫は多聞が何をしているのかを理解した。
多聞は、そこで神巫の作ったゲームをプレイしているのだ。
神巫は扉をそっと閉めて、気配を殺しつつも慌てて企画室に戻った。
「ちぇ、なんだよ。こっそりあそこでやる程、ハマッてんのかよ?」
ブツブツと呟きながら、神巫はそこで帰宅する為の身支度を調えた。
先程までは、もう少し仕事を詰めていくつもりだったが、多聞のあんな姿を見た後ではそんな気分になれるはずもない。
散々「再校」の判を付いた書類を突き返しておきながら、自分はそのゲームにハマッている…なんて。
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