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第98話
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あの晩、本当に多聞と何があったのかは、アルコールに酩酊していた柊一には思い出せない。
となると、もしも神巫に不審を抱かれて問いつめられたとしても、柊一には返事が出来ないのだ。
これもまた、この一件に触れたくない理由になっている。
神巫の指先が、下着の中に滑り込んでくる感触に、柊一は身を引くように後退ったが。
背もたれ代わりのベッドの縁に追い詰められただけで、逆に神巫の指先を動きやすくしただけだった。
「柊一サンにしては、ずいぶん積極的ですね?」
「バカッ………ちが………っ!」
否定をしようと口を開くと、すかさず神巫は絡めた指先に力を込めてくる。
思わず声を上げそうになって、柊一は慌てて口唇を噛んだ。
「また、強情はって………。それでいっつも最後に泣いてるのに、全然学習しないんだから」
くすくす笑いながら、神巫は柊一の衣服を早々に取り払い、しなやかな身体をベッドに横たえさせる。
「は…やく……済ませろっ!」
「イヤで~す。柊一サンだって焦らされた方が好きでしょ?」
軽口を叩きながら、神巫は柊一の膝の裏側に手を回して足を開かせた。
「か……なぎっ!」
「そんなに焦らなくてちゃんとあげますって。俺だって、柊一サンと早く一つになりたいし」
熱い舌を押し当てられて、柊一は嬌声混じりの悲鳴を上げる。
結局いつだって、どんなに我を張っても最後には快楽の波にさらわれてしまう。
その時にもし、あらぬ事を口走ったら? と思うと、気が気ではないのだが。
しかし、どう抗ったところで逃れる事などできよう筈もない。
今も既に、落ち着いて何かを考える事など到底出来ない状態に追い込まれいる。
体内に穿たれた熱い楔に、柊一は堪えきれず声を上げて神巫にしがみつく。
「柊一サン、いっつもそうやって素直なら、スッゴク可愛いのに……」
耳朶を甘く噛まれ、素肌を指先で愛撫されて、柊一はあられもない声を上げながら腰を突き出す行為を止められなかった。
ふと、誰かに触れられたような気がして、柊一は目を開いた。
汚れた身体を、神巫がタオルで丁寧に拭ってくれている。
「あ、起こしちゃいました? 柊一サンって眠りが浅いですよね」
「何時だ……?」
「そろそろ、2時になります。コレ片付けたら、俺ももう寝ますから」
さっさと手際良く後片付けを済ませ、神巫は柊一の隣に潜り込んでくる。
「柊一サンって、ホントに不思議なニオイがしますね。なんか、バニラエッセンスつーかハチミツつーか、とにかく甘い匂い。俺がカブトムシだったら、今頃柊一サンに噛み付いてます」
「吸い付いてくるなら同じだろうが…」
「じゃあきっと、俺の先祖はカブトムシだったんですよ」
アハハと笑う神巫の様子に、柊一は少し怪訝な顔をした
「なぁ、ホントにオマエ大丈夫か?」
「なにがです?」
「仕事、行き詰まってるんじゃないのか?」
「なぁんだ。またそんなコト考えてたんですか? 俺はてっきり、柊一サンが妊娠でもしたのかと思った」」
予想外の神巫の返事に、柊一は言葉に詰まる。
「あ、でも、その場合の返事も大丈夫ですよ。俺、バッチリ認知しますから」
嬉しそうに脳天気な事を言う神巫に呆れ返って、柊一は黙って掛布を頭から被ると神巫に背を向けた。
「あれ? 柊一サン、どうしたんですか? ココは柊一サンが俺の愛に感動する所でしょ?」
「月経もないのに、妊娠するワケねェだろ」
「ええ~? それは酷いなぁ。俺、柊一サンとの間に子供出来たらスゴク嬉しいのに~」
「子供が欲しいなら、ちゃんとオンナと付き合え」
「話ちゃんと聞いて下さいよ~。俺は柊一サンと俺の子供が欲しいんですよ~」
「もう、寝ろ」
「ちぇ~。柊一サンのいけず~」
ぶうぶう文句を言いながら、神巫はそれでもおとなしくベッドサイドの明かりを消す。
無理に明るく振る舞っているように見えたが、今の受け答えの感じからはさほどの深刻さは感じられない。
少し気にはなったが、しかし問いつめた所で答えないだろう事も容易に想像が付いて。
柊一はもうその話題に触れずに、静かに目を閉じた。
となると、もしも神巫に不審を抱かれて問いつめられたとしても、柊一には返事が出来ないのだ。
これもまた、この一件に触れたくない理由になっている。
神巫の指先が、下着の中に滑り込んでくる感触に、柊一は身を引くように後退ったが。
背もたれ代わりのベッドの縁に追い詰められただけで、逆に神巫の指先を動きやすくしただけだった。
「柊一サンにしては、ずいぶん積極的ですね?」
「バカッ………ちが………っ!」
否定をしようと口を開くと、すかさず神巫は絡めた指先に力を込めてくる。
思わず声を上げそうになって、柊一は慌てて口唇を噛んだ。
「また、強情はって………。それでいっつも最後に泣いてるのに、全然学習しないんだから」
くすくす笑いながら、神巫は柊一の衣服を早々に取り払い、しなやかな身体をベッドに横たえさせる。
「は…やく……済ませろっ!」
「イヤで~す。柊一サンだって焦らされた方が好きでしょ?」
軽口を叩きながら、神巫は柊一の膝の裏側に手を回して足を開かせた。
「か……なぎっ!」
「そんなに焦らなくてちゃんとあげますって。俺だって、柊一サンと早く一つになりたいし」
熱い舌を押し当てられて、柊一は嬌声混じりの悲鳴を上げる。
結局いつだって、どんなに我を張っても最後には快楽の波にさらわれてしまう。
その時にもし、あらぬ事を口走ったら? と思うと、気が気ではないのだが。
しかし、どう抗ったところで逃れる事などできよう筈もない。
今も既に、落ち着いて何かを考える事など到底出来ない状態に追い込まれいる。
体内に穿たれた熱い楔に、柊一は堪えきれず声を上げて神巫にしがみつく。
「柊一サン、いっつもそうやって素直なら、スッゴク可愛いのに……」
耳朶を甘く噛まれ、素肌を指先で愛撫されて、柊一はあられもない声を上げながら腰を突き出す行為を止められなかった。
ふと、誰かに触れられたような気がして、柊一は目を開いた。
汚れた身体を、神巫がタオルで丁寧に拭ってくれている。
「あ、起こしちゃいました? 柊一サンって眠りが浅いですよね」
「何時だ……?」
「そろそろ、2時になります。コレ片付けたら、俺ももう寝ますから」
さっさと手際良く後片付けを済ませ、神巫は柊一の隣に潜り込んでくる。
「柊一サンって、ホントに不思議なニオイがしますね。なんか、バニラエッセンスつーかハチミツつーか、とにかく甘い匂い。俺がカブトムシだったら、今頃柊一サンに噛み付いてます」
「吸い付いてくるなら同じだろうが…」
「じゃあきっと、俺の先祖はカブトムシだったんですよ」
アハハと笑う神巫の様子に、柊一は少し怪訝な顔をした
「なぁ、ホントにオマエ大丈夫か?」
「なにがです?」
「仕事、行き詰まってるんじゃないのか?」
「なぁんだ。またそんなコト考えてたんですか? 俺はてっきり、柊一サンが妊娠でもしたのかと思った」」
予想外の神巫の返事に、柊一は言葉に詰まる。
「あ、でも、その場合の返事も大丈夫ですよ。俺、バッチリ認知しますから」
嬉しそうに脳天気な事を言う神巫に呆れ返って、柊一は黙って掛布を頭から被ると神巫に背を向けた。
「あれ? 柊一サン、どうしたんですか? ココは柊一サンが俺の愛に感動する所でしょ?」
「月経もないのに、妊娠するワケねェだろ」
「ええ~? それは酷いなぁ。俺、柊一サンとの間に子供出来たらスゴク嬉しいのに~」
「子供が欲しいなら、ちゃんとオンナと付き合え」
「話ちゃんと聞いて下さいよ~。俺は柊一サンと俺の子供が欲しいんですよ~」
「もう、寝ろ」
「ちぇ~。柊一サンのいけず~」
ぶうぶう文句を言いながら、神巫はそれでもおとなしくベッドサイドの明かりを消す。
無理に明るく振る舞っているように見えたが、今の受け答えの感じからはさほどの深刻さは感じられない。
少し気にはなったが、しかし問いつめた所で答えないだろう事も容易に想像が付いて。
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