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第95話
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ロッカールームから出てエレベーターを待っていると、後ろから誰かの足音が近づいてくる。
「あら、おはよう神巫クン」
「あ、市ヶ谷サン、おはようございます」
「調子どう?」
「ええ、まぁまぁです」
答えた神巫を、市ヶ谷は思案げに眺めた。
「どーしたの? 神巫クンらしからぬ、低いテンションじゃない?」
「別に、ナニってワケじゃないッスけど……。市ヶ谷サンは、今回のコレどー思ってます?」
「どうって……面白いんじゃない? 東雲チーフの仕事を見るのは、すごく勉強になるし」
「…そうですよね。市ヶ谷サンは俺と入れ替わるんですモンね」
「ん~? それはモンダイ発言ですぞ? 神巫クンだって多聞チーフから学び取るコトはたっぷりあるでしょう?」
「そりゃ、そーなンすケド……」
「ああ、そうか! 神巫クン、ウチのチーフと仕事するのがストレスなんだ?」
「えっ? いやっ、別にそんなコトは……」
「隠すコト無いわよ~。青山クンに聞いたけど、チーフが神巫クンに食ってかかったコトがあるんですって? ま~、確かにウチのチーフはちょっと扱いづらいタイプのヒトだけど、コツさえ飲み込めば仕事するのにさほどイヤなヒトじゃないわよ。ちゃんと仕事は出来るし、セクハラとかもしないしね」
「セクハラ上司だったとしても、俺はセクハラされませんから」
「そりゃそうかもしれなけど、でもセクハラするようなヒトは、パワハラだってするわよ~?」
「ずいぶんキッパリ断定しますね?」
「ダテに中途採用じゃないってコトね。簡単に言うなら、亀の甲ってヤツよ。大体今回の企画、私はとばっちりでメインディッシュは神巫クンなのよ?」
「なんすか、とばっちりって? 今、市ヶ谷サンは勉強になるから面白いって言ったじゃないッスか?」
「やーねぇ、人間安穏としているのが1番ラクに決まってるでしょ~? でも状況とは常に流転しているんだから、過去にしがみついて時間を無駄にするよりも、今をどこまで楽しめるか? じゃないの」
「市ヶ谷サン、悟りを開いた坊さんみたいですよ?」
「ちょっと違うわね。別に解脱したいワケじゃないモン。ってゆーか、ワカモノがしょぼくれた顔してちゃダメよ~? そんなんじゃ、みんなの期待に応えられないぞ!」
「期待…って言われても……ねェ………」
「確かに多聞チーフってクセがあるから、理想の上司…とは言いかねるけど。でも、神巫クンがこの先この業界で長くやっていくつもりがあるなら、これは千載一遇のチャンスなワケでしょう? 盗むべき所はしっかり盗んでおかないと」
「言うは易し…ですよ」
「そんな及び腰だからダメなんじゃないの? もちょっと強気で行きなさいよ。どんな時にも笑顔を忘れないのが、神巫クンのトレードマークでしょ?」
「はぁ…」
「じゃあね。ガンバレ、我が社のホープ」
エレベーターを降りた所で、市ヶ谷は颯爽と製作室に向かって行ってしまった。
「あら、おはよう神巫クン」
「あ、市ヶ谷サン、おはようございます」
「調子どう?」
「ええ、まぁまぁです」
答えた神巫を、市ヶ谷は思案げに眺めた。
「どーしたの? 神巫クンらしからぬ、低いテンションじゃない?」
「別に、ナニってワケじゃないッスけど……。市ヶ谷サンは、今回のコレどー思ってます?」
「どうって……面白いんじゃない? 東雲チーフの仕事を見るのは、すごく勉強になるし」
「…そうですよね。市ヶ谷サンは俺と入れ替わるんですモンね」
「ん~? それはモンダイ発言ですぞ? 神巫クンだって多聞チーフから学び取るコトはたっぷりあるでしょう?」
「そりゃ、そーなンすケド……」
「ああ、そうか! 神巫クン、ウチのチーフと仕事するのがストレスなんだ?」
「えっ? いやっ、別にそんなコトは……」
「隠すコト無いわよ~。青山クンに聞いたけど、チーフが神巫クンに食ってかかったコトがあるんですって? ま~、確かにウチのチーフはちょっと扱いづらいタイプのヒトだけど、コツさえ飲み込めば仕事するのにさほどイヤなヒトじゃないわよ。ちゃんと仕事は出来るし、セクハラとかもしないしね」
「セクハラ上司だったとしても、俺はセクハラされませんから」
「そりゃそうかもしれなけど、でもセクハラするようなヒトは、パワハラだってするわよ~?」
「ずいぶんキッパリ断定しますね?」
「ダテに中途採用じゃないってコトね。簡単に言うなら、亀の甲ってヤツよ。大体今回の企画、私はとばっちりでメインディッシュは神巫クンなのよ?」
「なんすか、とばっちりって? 今、市ヶ谷サンは勉強になるから面白いって言ったじゃないッスか?」
「やーねぇ、人間安穏としているのが1番ラクに決まってるでしょ~? でも状況とは常に流転しているんだから、過去にしがみついて時間を無駄にするよりも、今をどこまで楽しめるか? じゃないの」
「市ヶ谷サン、悟りを開いた坊さんみたいですよ?」
「ちょっと違うわね。別に解脱したいワケじゃないモン。ってゆーか、ワカモノがしょぼくれた顔してちゃダメよ~? そんなんじゃ、みんなの期待に応えられないぞ!」
「期待…って言われても……ねェ………」
「確かに多聞チーフってクセがあるから、理想の上司…とは言いかねるけど。でも、神巫クンがこの先この業界で長くやっていくつもりがあるなら、これは千載一遇のチャンスなワケでしょう? 盗むべき所はしっかり盗んでおかないと」
「言うは易し…ですよ」
「そんな及び腰だからダメなんじゃないの? もちょっと強気で行きなさいよ。どんな時にも笑顔を忘れないのが、神巫クンのトレードマークでしょ?」
「はぁ…」
「じゃあね。ガンバレ、我が社のホープ」
エレベーターを降りた所で、市ヶ谷は颯爽と製作室に向かって行ってしまった。
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