ワーカホリックな彼の秘密

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第91話

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 山のような書類を持った青山が、製作室の扉の前でフラフラしている。

「ちゅーす、青山サン。なにしてるんスか?」
「見りゃー分かるでしょ! 書類の山の所為で手が動かないの。重いから早く中に入って手から放したいンだけど、ドアが開かないのっ!」

 目を三角にして怒る青山に、神巫は慌てて扉を開けた。

「あ~! 全く気の利かない後輩だよ!」
「スミマセンね~。ところでこの山のような書類、なんスか?」
「コレは、気の利かない後輩クンに渡すモノ」
「は? なんの為に?」
「知らないよ、渡せってシノさんに言われたから、資料室から持ってきたんだから! つーかシノさんも、自分で持ってこさせりゃいいのに!」
「仕方ないだろう、居なかったんだから」

 開けっ放しの扉から、青山同様に山のような書類を抱えた柊一が部屋に入ってくる。

「あ、おはようございます」
「おはよう。早々だが、神巫は今日この書類全部に目を通してくれ。他の仕事は、全部しなくて良いから」
「は?」

 全く状況が見えずにハテナマークを並べている神巫を、青山が強引に席に座らせた。

「は~い、遠慮しないで座ってクダサ~イ。こちらに袖机を配置して、どんどん書類を並べますからね~」
「ちょ、青山サン、そんなカッコで袖机置かれたら、雪隠詰めになっちゃいますよ!」
「おや、ハルカ三等兵、そんな言葉よく知ってたね」
「そんなの褒め言葉になりませんよ! つーか、これじゃ便所にも行けないじゃないですか!」
「おい、タケシ。そこそこでカンベンしてやれよ」
「ちょっと、チーフも笑ってないでなんとかしてくださいってばっ!」
「アレ~? 朝からみんな楽しそうだね、どうしたの?」
「おはよう、ヒロ。ハルカ三等兵がなんと多聞サンのご指名を受けて、新作のパズルゲームのチーフプログラマーに任命されたから、ちょっと嫉妬して虐めてるところ~」
「へえ~、あの多聞サンにご指名! そりゃ、赤飯モノだなぁ!」

 青山の台詞に、神巫はビックリして思わず柊一に振り返った。

「この間のロールプレイングのサブゲーム、覚えてるか?」
「え? あ、はい。……でも、あれはチーフがプログラミングしてますよね?」
「基本のプログラムに、オマエも関与してるだろ?」
「は? ………あ、もしかしてあの時の?」
「レンのプロットに、オマエがアニメのパターンつけただろう? ロープレのサブゲームで好評だったから、独立タイトルの製作が決まったんだ。そうしたらアイツ、オマエのプログラミングパターンの方が、俺よりパズルゲームに向いているとか言ってな。その資料は、過去のデータを含めてパズルゲームに必要そうなのを俺が見繕って持ってきた」
「すんごい、大抜擢だよね~。俺なんて、シノさんから仕事回された事はあっても、多聞サンから直にご指名なんてされたコト無いよ~?」
「俺だってもちろん無いって。スゲーなハルカ、今度の飲みで奢ってくれ」
「な、メチャクチャ言わないで下さいよ!」

 多聞が自分をメインプログラマーに指定してきたという、それだけでも充分に神巫をパニックに陥れているのに。
 目の前に山積みにされた山のような書類にも、目眩を感じる。
 あげくに先輩諸氏から激励のイジメまでされては、たまったものではない。

「でも、俺、これでも今いくつか仕事持ってるんですよ?」
「ああ、解ってる。それは全部、タケシとフミアキに割り振って引き継いで貰え。大丈夫だよな? タケシ」
「チーフが大丈夫って言うなら、大丈夫でしょ?」
「引っかかる言い方するなぁ」
「やっかんでるんです」

 答えた青山は、答えた内容とは裏腹にニヤリと笑っている。
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