ワーカホリックな彼の秘密

RU

文字の大きさ
上 下
79 / 107

第78話

しおりを挟む
「じゃあ、お先に失礼しま~す」
「ああ、お疲れ」

 カバンを提げた青山と広尾が扉に向かうのを、柊一はいつもと同じようにディスプレイに顔を向けたままで振り返りもしない。

「チーフも早く帰って下さいね。今日はそれほど、仕事残ってないでしょ?」
「ああ、うん」

 お決まりのカラ返事をされて、青山は肩を竦めて見せたが。
 それでも、今日はさほど絡む様子もなく引き上げていった。

「あれ? 神巫はまだ帰らないのか?」
「……いえ、俺は今日チーフと一緒に帰りたいんで」
「なんだそりゃ?」
「せっかくの週末ですし、それに以前に約束したゴチソウの材料が手に入ったんで、今夜は特にお招きしたいナ~とか」
「ご馳走?」
「ええ、俺の手作り料理。食べて貰える約束ですよね?」
「ああ、うん。そんな約束したっけか?」
「今日はそんなに遅くまで仕事しないでしょう? 少々遅くなった所で、明日は休みだからゆっくり出来ますよね?」
「…それはそうだが………」
「俺、ちゃんとチーフに言われた通りに多聞サンに御礼も言いましたから、そっちの約束もお願いしたいかと」

 尻込みをする柊一に、神巫は最後の切り札を出した。
 半ば意識はディスプレイに集中したままでナマクラな答えを返していた柊一は、いきなり飛び出してきた不穏な台詞に噎せている。

「なっ…………いつ?」
「数日前です。……多聞サンに確認されても良いですよ」
「ったく、本気かよ」

 呆れたような顔をして、柊一は神巫に振り返った。
 ニイッと笑った神巫に対して、出てきたのは溜息だけである。

「なんか、思いっきり集中力削がれた」
「じゃあ、終わりにしましょうよ。どうせ、そんなに追い込まなきゃならない仕事は無いんでしょう?」
「オマエなぁ。追い込む必要は無いかもしれないが、いつ新田サンにハッパかけられるか判らないんだぞ? そっちの進行具合はどうなんだよ?」
「資料が手元に戻ったお陰で、順調です」
「そりゃ、良かった」

 もう一度深く溜息を吐いてから、柊一は選択画面からシャットダウンを選ぶ。

「じゃあ、神巫のご馳走ってのをご相伴させてもらうかな」
「はい、喜んで」

 ニコニコと立ち上がった神巫は、自分のマシンも早々にシャットダウンしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...