ワーカホリックな彼の秘密

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第55話

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「多聞がまだプロットを出してきてない。……だが、時期的にそろそろ俺のところに企画書の下書きが回ってくる頃だ。……オマエ、この魚を逃がすつもりか?」
「………アンタ、まさか多聞のプロット持ち逃げするつもりかよ?」
「転職先でそのままコケるのなんて、冗談じゃないぜ? オマエはまた同じように副業に精を出せばいいかもしれんが、俺はそんな器用な真似は出来ないンでなぁ。保険の一つも用意して当たり前だろう」

 てっきり柊一は開き直っただけなのだと思っていた白王華は、自分の予想以上に柊一が豹変していた事にひたすら驚いた。

「俺はアンタはあの会社に未練たらたらなのかと思ってたぜ?」
「仕事なんてのは、場所が変わった所でやりように過ぎないさ。だが、オマエがあんまり俺を安く見積もるようなら、話は変わってくるぞ」
「ふふん、いきなり対等に話そうたってそうはいかないぜ? アンタは俺のコマになる……そうだろう?」
「さぁな。………そんなコトを言って、オマエ本当に俺を楽しませるコトが出来るのか?」

 チラリとこちらを見やった柊一は、今までの無表情からは想像も出来ないような妖艶な笑みを見せる。
 その表情に、白王華はゾクリとなった。

「……な……んだよ。そんなコト、直ぐにも証明してやれるぜ?」
「バッカ。今日は行かないって言っただろ」
「じゃあ、いつならいいって言うんだよ」

 もどかしさに苛立つ白王華に、柊一はそうっと身を乗り出して口唇を耳元に寄せてくる。

「お楽しみは、後の方がいいに決まってる」

 間近でニイッと笑った後、姿勢を戻すと再び柊一は元の無表情に戻っていた。

「多聞の企画が上がってきたら、内容によっては即座に動けるが、場合によってはまだかかるかもしれない。あまり俺のところに頻繁に連絡を寄越すな。会うのもダメだ。オマエが執拗に電話してくるから、俺がまるでヘッドハンティングに応じるみたいなウワサが社内に流れちまって、えらい迷惑だ」
「ウワサが本当になるんだろ?」
「多聞が企画書を出し渋っているのも、その所為だったらどうするんだ? しばらくはおとなしくしてろ」
「いいだろう。そういう条件なら俺も待つ甲斐があるからな」
「……ここまでやって、オマエがヘタレだったら割が合わないぞ?」
「それこそ、お楽しみで期待してろよ。それにしても意外だな。………アンタ、最初に会った時はもっとウブかと思ってたのに。遊び人なのか?」
「他人の倍楽しめる身体してるのに、楽しまないでどうするんだよ?」

 うっすらと笑みを浮かべた口唇を、薄い舌が誘うようにペロリと舐めていく。
 白王華はゾクゾクするような期待感に、思わず頬の筋肉が緩みそうだった。

「企画書が上がってきたら、連絡する。それまでは、黙って待ってろ」

 それだけ言うと、柊一は席を立って店を出て行ってしまった。
 その後ろ姿に、白王華は妄想をたくましくする。
 反抗的で、自分に従属される柊一を想像していた時は、嗜虐心でワクワクもしたが。
 今は、妖艶な愛人として自分に奉仕する柊一を思い浮かべ、ゾクゾクしている。
 柊一を引き抜かれる事で、あの会社がどれほど混乱に陥るか?
 そして柊一を連れている事で、業界のあらゆる会社が己の前に跪くか?
 いざとなったら1晩だけ、柊一をオモチャにして。
 どこぞの3流ゲーム製作会社に、適当な値段で売ってしまっても良いと思っていたが。
 これはどうやら、予想以上に美味い汁が吸えそうだとほくそ笑む。
 そして残された伝票を手に、白王華もまた席を立った。
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