ワーカホリックな彼の秘密

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第36話

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「ふうむ………」

 中師は訝しむような顔で柊一を見つめてから、目線をおもむろにカルテの方に戻す。

「恋人でも出来たのかな?」
「まさかっ!」

 弾かれたように顔を上げたものの、咄嗟に頬が火照ってくるのを感じて柊一は狼狽えた。

「キミは本当に解りやすい子だねェ……」
「俺はもう三十路も過ぎてます! 子供扱いは止めて下さいッ!」
「三十だろうが四十だろうが、子供は子供さ。……さて、諦めて白状しなさい。じゃないと、医学的検査で嘘がないかどうかを調べる事になるよ?」

 目を細めて笑った中師の言葉が、実は半分以上本気である事はすぐに解った。
 別に中師が偏執狂的な医師…と言う訳ではないが、しかしある意味で柊一の身体を慮る場合には柊一の意思などそっちのけで治療行為に及ぶ危険人物である事を知っているからだ。

「でもきっと、関係ないですよ?」
「どうかな? それは私が判断する事で、キミはありのままを話してくれればいい」
「そうですか? ………でも、恋人が出来たとか…そう言ったイロっぽい話じゃないですよ?」
「構わないよ、別に興味本位でキミのゴシップが聞きたいワケじゃないからね」

 目を細めて笑う中師を、柊一はほんの少しだけ訝しむように見つめたが、それもつかの間で溜息と共に口を開く。

「つまり………その、…………事故なんですけどね。……いつもの……発作を起こした時に丁度職場の同僚が居合わせて………………まぁ、性的な接触をしてしまったと言うか………」
「またよほど根を詰めて残業でもしていたんだろう? 今まで…キミが言う所の『事故』が起きなかったのが不思議なくらいだったからねぇ」
「そう言われちゃうと、元も子もないじゃないですか」
「それはともかく、それから?」
「それから………とは?」
「たった1度そんな事があったぐらいの事で、明らかに数字に表れるほどキミの身体に影響があった……とは思えないからね」
「つまり…………?」
「1度………なのかな?」

 中師の問いに、柊一は思わず顔を赤らめる。

「主治医として、聞いておくべき事じゃないかな?」
「………確かに………1度ってワケじゃないですけど………」
「ふむ。……では不特定多数の相手と?」
「誰がそんな事を言ったんですかっ! 神巫とだけですよっ!」
「その『事故』の相手は、カンナギ君と言うのか」
「別に………そんな、誰だって良いじゃないですかっ!」
「キミが誰とどのような付き合いをしているか? について言及しているワケじゃないよ。ただ、キミが最初に恋人がどうのと言ったから、そのつもりで聞いていただけなんだがね」
「いちいち揚げ足を取らないで下さいッ!」

 少し怒ったような様子で顔を赤らめている柊一の様子を見やり、中師は愛しげに目を細めた。
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